271828の滑り台Log

271828は自然対数の底に由来。時々ギリシャ・ブラジル♪

等角螺旋が対数螺旋と呼ばれるのは(その3)

2009-05-02 07:59:57 | 数学
私が対数螺旋(等角螺旋)にこだわる理由の一つはこの曲線を使って滑り台を設計・施工した経験があるからです。今は前橋市に合併された旧宮城村の宮城総合運動公園にある「たけのこタワー」に設置されている滑走長33mのグリッサンドがそれです。

トラス構造のタワーを巻き込むように作られた滑り台の線形は対数螺旋+クロソイド+直線です。この構想を捻り出したのは、佐々木重夫著『初等微分幾何学』(1970年初版、廣川書店)の68ページにある以下の演習問題に気がついたからです。

「問2.頂角2αの直円錐 x=u cos v,y=u sin v,z=u cot α 上で母線と定角βで交わる曲線を求めよ。この曲線を円錐の軸に垂直な平面への正射影は対数渦線であることを示せ(図 14・8)」

3次元空間の曲面は二つのパラメータu,vを使ってx=f(u,v),y=g(u,v),z=h(u,v)で表すことが出来ますが、この曲面に乗っかっている曲線は一つのパラメータtを使って、u=u(t),v=v(t)で定義するのです。10年前の私はごちゃごちゃした計算を数式処理ソフトDerive(旧版)を使って解き、エクセルで確認したことが記録に残っています。

タワーの外側に仮想的な大きな直円錐(高さ23.403m、底円の半径6.271m、頂点の角度30度)を考え、この曲面上に対数螺旋を乗せて、螺旋の出口に曲率のぴったり合ったクロソイドを接続するのです。図から分かるように、滑走するに従って曲率は次第に小さくなり(曲率半径はどんどん大きくなり)ますから、速度が大きくなるこの滑り台には好適な曲線だと判断したのです。
この曲線は一般的には動径の角度をパラメータとして定義されますが、滑り台で使う場合はもう一手間が必要で、この空間曲線の弧長を求め、この弧長で空間曲線を再定義する必要がありました。
こうして1スパン=2mのユニットのデータを作り、材料のデータ(DXF)を吐き出してレーザー加工機で切断するのです。滑り台ユニットの組み立てはいつもの溶接治具で行いました。

完成した年の冬に撮影したのが以下の動画です。


ブログを通じていつもお世話になっているSUBALさんにこの滑り台の図面(PDF)を送ったら、大変興味を持って頂き、記事にして下さいました。

図からわかるように11スパン目までは対数螺旋で、2スパンのクロソイドが接続され、最後は直線になっています。

タワーに近い場所では柱を林立させることが出来ないのでパイプを曲げて、この上に滑り台を乗せています。このパイプの設計・製作も手間でしたが、施工は更に大変な作業でした。




こうして見ると私の問題意識は等角螺旋→対数螺旋に向かったようです。

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2 コメント

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私には (さち。)
2009-05-02 23:33:47
建築に関しての知識が何もないので、コメント出来る様な立場ではないのですが、いつも面白い形の物が載ってるな~という感覚で見させてもらってます。
返信する
かたち (271828)
2009-05-03 20:51:59
さちさん こんばんは

もの作りは物質にかたちを与えること。自分で考えたものがかたちになって行くのはとてもわくわくする仕事です。
こんな硬い記事にコメントを頂けるだけでも嬉しく思います。ありがとうございます。
返信する

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