寒さにめっぽう強いタイプは存在する。5人に1人が「耐寒能力」を持っているという研究結果
https://karapaia.com/archives/52299517.html
だが世の中には寒さにめっぽう強いタイプの人が存在する。氷点下でも薄着で外を歩いている人をみかけたことがあるだろう。
スウェーデンとリトアニアの共同研究によると、5人に1人は「耐寒能力」を持っているそうで、それは遺伝子の突然変異によるものだそうだ。
筋肉の瞬発力と引き換えに耐寒能力が身につく
人間の筋肉は2種類あり、速筋繊維と遅筋繊維に分かれている。速筋は瞬発力を生み出す筋肉で、て遅筋繊維は持久力に優れた筋肉だ。
ACTN3遺伝子によって作り出される「αアクチニン3タンパク質」は、速筋の新陳代謝を司り、より素早い収縮をサポートする。このためにαアクチニン3がある人は、パワーやスピードといった瞬発力が大切になるスポーツで有利とされている。
ところが世界には15億人ほど、約5人に1人がこのタンパク質を作り出せない。それと引き換えに手に入れたのが変異遺伝子だ。
本人が自覚しているかどうかは別にして、この突然変異遺伝子には面白い能力がある。寒さにめっぽう強くなるという耐寒能力だ。
スウェーデンのカロリンスカ研究所とリトアニア体育大学のグループが行なったのは、18~40歳の健康な男性42名に冷水の中でじっと座ってもらうという実験だ。その目的は体温を35.5度まで下げること。なんだか、聞いているこちらまで寒くなってくるような実験だ。
体が芯まで冷え切ったところで、彼らの筋肉の電気活動を測定。さらに筋肉のサンプルも採取し、そこに含まれているタンパク質と筋繊維の構成を調べた。
その結果、αアクチニン3タンパク質がない参加者では7割近くが体温を35.5度以上に保てたのに対し、ある人で体温を保てたのは3割でしかなかったという。
つまりαアクチニン3タンパク質を持っていない人は寒さに強いということだ。
寒さ耐性だけでなく持久力も抜群
もう1つ明らかになったのは、αアクチニン3を持たない人は、「遅筋」の割合が大きいということだ。
遅筋はパワーやスピードでは劣るが、持久力が抜群で、マラソンやウォーキングといった有酸素運動で真価を発揮する。
αアクチニン3がないおかげで遅筋が多い人たちは、冷水の中で遅筋を軽く収縮させて熱を発生させていた。ところが速筋の割合が大きな人たちは、体がガタガタと震えてしまうのだ。
耐寒遺伝子のメリットとデメリット
耐寒遺伝子は、おそらく大昔に私たちの祖先が寒い地域へ移住し始めた頃に登場したのだろう。そのおかげで彼らは寒さに耐えることができた。
だが今日ではそれがデメリットになる可能性もある。祖先たちの時代とは違い、技術が発達したおかげで、寒い地域でも暖かく過ごすことができ、また食料が不足することもない。そのために耐寒遺伝子は重要性が低下している。
するとそのメリットだったはずの優れたエネルギー効率が、かえって邪魔になる。肥満や糖尿病といった代謝異常を引き起こしやすくなるからだ。
こうした知見を応用することで、初期人類の移住の経緯や現代の病気について、いっそう理解を深めることができるだろうと研究グループは述べている。