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「腎臓・歯・骨・心」日本人の間で急増するツラい病苦ワースト4

2020-07-11 | 医療、健康

https://news.yahoo.co.jp/articles/4a79ef4c347f92eeb6cbbefe422da81b17f75685
 日本人がどんな病気に悩まされているかを示す官庁統計には3種類ある(※)。

 ① どんな病気で亡くなるかを示す「人口動態統計」の死因データ
② どんな病気に罹(かか)っているかを示す「患者調査」の患者数(入通院者数)データ
③ どんな症状で悩んでいるかを示す「国民生活基礎調査」の有訴者数データ

 ※原データは、それぞれ、①死亡届とともに自治体に提出される死亡診断書、②病院がつかんでいる入通院している患者数データ、③個々人が回答した調査票、という違いがあるが、いずれも厚生労働省の統計調査である(図表1参照)。

■「苦しい、痛い、怖い……」みんな病苦に悩んでいる

 各データの病気トップ3は以下の順である。

 ① 【死因】「がん」「心疾患」「脳血管疾患」
死因のトップは「がん」(悪性新生物)であり、日本人の間でこれが最も恐ろしい病気と考えられるに至っているのも、このためである。戦前の死因トップが、新型コロナのような感染症だったことを含め、次項で、死因別の病気の推移について、もう少し詳しく見てみることにする。

 ② 【患者数】「高血圧」「歯周病」「糖尿病」
何の病気に罹っている人が多いかについては、罹っていても医者に診てもらわない人の数までは含まれていないが、病院に入通院している患者数から把握されている。患者数トップは「高血圧」である。血圧は高齢になるとほぼ決まって高くなる傾向を有し、高血圧症の血圧基準は年齢によって変化しないので、高齢者の多くが高血圧で病院に通う結果となる。こうしたことから高齢者が多くなった日本で「高血圧」が患者トップとなっている。

 患者数2位の病気は、やや意外なことに「歯周病」である。この点を含めて、後段で、患者数のランキングと最近の変化についてふれることにする。

 ③ 【有訴者数】「腰痛」「肩こり」「手足の関節の痛み」
有訴者は、具合の悪いところはないかを広く国民から聞いた結果の数字であり、「腰痛」が1位となっている。
「腰痛」は、4足動物から2足動物への進化した人間にとって、まだ不適応なところとして宿命的に残存している体の不調と考えられている。この点を含めて、本連載で、以前、有訴者率の推移から、加齢に伴う「物忘れ」や「耳が遠くなる」などの症状が、最近の高齢者では減ってきている「若返り」状況を分析したので参照されたい(昨年11月「日本の高齢者は20年前より10歳は若返っている」)。
■「鼻がつまる・鼻汁が出る」「せきやたんが出る」「体がだるい」……

 「有訴者数」には病院に行くほどでない心身の不調が含まれ、「患者数」には直接の死因とはならない病気・ケガが多く含まれている。このため、「死因」をはじめとした3つの公式統計で把握されている病気のそれぞれのトップ3は、ひとつとして重複していない。すなわち、捉え方によって「日本人が悩まされている病気」は全く異なっているのである。

 死因や患者数については後段でさらに詳しくふれるので、有訴者数については、ここで4位以下に言及しておくと、第4位~10位は、それぞれ、「鼻がつまる・鼻汁が出る」「せきやたんが出る」「体がだるい」「目のかすみ」「かゆみ」「頭痛」「物を見づらい」である。

 前述の①死因、②患者数、③有訴数のほかに、直接調査された統計データではないが、社会的な損失度から病気の深刻さを測ろうという試みもなされている。こうした指標としては、「死亡」と「障害」という2種類のマイナスを総合した「寿命・健康ロス(DALY値)」が世界保健機関(WHO)によって計算されている。これを④として図表1に紹介した。

 2002年推計によれば、「寿命・健康ロス(DALY値)」の日本人の病気トップ3は、「がん」「脳血管疾患」「うつ病・躁うつ病」だった。

 就業の妨げや病苦といった罹患(りかん)に伴う悪影響の程度を寿命短縮のマイナスに加えるとこれらが日本人にとって最も深刻な病気だと言えるのである。

 なお、この指標の第4位は「認知症」である。上位2位までは死因の3位までとダブっているが、日常生活を送る上でマイナスが大きい精神的な障害が上位に登場する点が目立った特徴である。この指標についても、当記事の最後にさらに詳しいデータを紹介しておこう。

■死因最多、戦前は細菌やウイルスによる感染症

 以上4つの指標のうち、戦前からの長い時系列変化を知ることができるのは、死因データだけである。図表2には、主な死因別の死亡率の推移を戦前から示した。

 戦前の死亡原因としてもっとも深刻だったのは、肺炎、インフルエンザ(流行性感冒と呼ばれた)や胃腸炎、結核といった細菌やウイルスによる感染症であった。肺炎とここではあらわしていない気管支炎を合計すると1899年から1922年まで継続して第1位の死因であった。

 特に1918年から20年まではインフルエンザの世界的な流行(いわゆるスペイン風邪)があり、日本でも高い死亡率を示した。「インフルエンザ」そのものとそれと関連する「肺炎」のこの時期の死亡率の急騰がこれを示している。なお、第2波のほうがパワーアップしたスペイン風邪の経験が新型コロナについても当てはまるのではないかとの懸念もある。

 1930年代から戦後しばらくまでは「結核」が死因第1位となった。結核はかつて国民病とまで言われ、1936年から結核予防国民運動が展開、1937年に保健所法が制定され、10カ年計画で全国に550保健所が建設されることが決められた。

 もともと感染症対策でつくられた保健所が新型コロナ対策でも大きな役割を果たし、海外と比較して感染被害規模が小さい理由の一つとなっていると思われているのも当然だとも言えよう。

 戦後、BCG接種による予防、全国民一律の胸部X線検査による患者発見、さらに抗生物質を用いた化学療法による治療などにより結核事情は一変した。BCG接種が日本の新型コロナ被害が欧米として軽くなっている一因だという説がある。

 もし、そうだとすれば、これも保健所と並んで結核対策の予期せぬプラス効果だといえよう。なお、医療機器のうち画像診断の分野だけは日本の競争力が高いのも結核対策に力を入れていた副産物である。

 このようにわが国においては、「結核」という感染症の蔓延という負の遺産を何とか克服してきた取り組みが、逆に、正の遺産(レガシー)として、今回の新型コロナという感染症に対してプラスに作用した可能性が高いのである。
■最近は「がん」「心疾患」「肺炎」「誤嚥性肺炎」の死亡率が上昇

 高度成長期以降は、医療の発達に衛生環境、栄養状態の改善が加わって、結核をはじめとする感染性疾患が大幅に減少した。その結果、これらに代わって、がん、脳血管疾患、心臓疾患などの疾患が増大してきた。1957年頃から、これらは加齢に伴うものであることから「三大成人病」と称されたが、1996年ごろからは、糖尿病、腎臓病、慢性肝疾患などを含め、生活習慣との間に深い関係があることが明らかになってきたことから新たに「生活習慣病」と称されるようになった。

 近年の死因別死亡率の特徴としては、生活習慣病の中でも「脳血管疾患」の死亡率が低下する中で「がん」と「心疾患」の死亡率が傾向的に上昇している点、高齢者が「肺炎」や、「誤嚥性肺炎」(一般の肺炎とは区別される)で死ぬケースが多くなっている点などが目立っている(もっとも2017年には原死因を重視するルール変更により「肺炎」は急落)。

■患者が特に増えているのは慢性腎臓病、歯周病、骨折、うつ病

 次に、直接的な死因となることが少ない病気も含まれる患者数のデータを見てみよう。

 図表3には、②の「患者調査」によって、入通院している患者数ベースで、どんな病気が多く、またどんな病気が特に増えているかを示した。

 患者数としては「高血圧」が994万人と圧倒的に多く、これに次いで「歯周病」の398万人、「糖尿病」の329万人、「脂質異常症」の221万人が続いている。「脂質異常症」とは血液中の脂質であるコレステロールや中性脂肪の値が異常となる病気であり、「高脂血症」とも呼ばれる。

 患者の男女構成に特徴が見られるものを調べると、「脂質異常症」は7割以上、「骨折」は6割以上が女性である女性が罹りやすい病気であり、これらとは対照的に、「慢性閉塞性肺疾患」は男性比率が7割、「慢性腎臓病」の場合は6割強となっており、これらは男性に多い病気である。

 患者調査は3年ごとの調査である。2014年から最新の2017年にかけての患者数の増減率を見ると、主要な傷病の中で最も増加率が高いのは、透析患者を含む「慢性腎臓病」の32.8%であり、これに「歯周病」の20.2%、「骨折」の16.7%、「うつ病・躁うつ病」の14.3%が続いており、図表で取り上げた病気の中で1割以上増えているのはこの4つだけである。

 反対に、患者数が大きく減っているのは、「ウイルス肝炎」が15.2%減、「慢性閉塞性肺疾患」が15.7%減である。「結核」も1割減である。

 「歯周病」は、患者数とその増加率がともに2位と、最近、特に目立つようになった病気である。「歯周病」は、それ自体、痛みや歯抜けの原因であるとともに、歯垢とともにそこに巣食う歯周病菌が血管に入り込み、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞の要因となることが分かってきた。

 東京四谷の歯科医院長である山口和夫氏によれば「実は、歯周病の人が脳梗塞になるリスクは、歯周病でない人に比べて2.8倍も高いという統計もあります。こうした状況にあることから、脳外科、心臓外科の医師から、手術の前などに徹底した歯垢の除去を依頼されるようになりました」ということだ(『日経ビジネス』2018年9月10日号)。

 患者数が大きく増えている病気には、生活習慣の変化や高齢者の増加によってその病気自体が増えているという側面のほかに、その病気に対する認識の深まりなどからこれまで以上に病院で看てもらうようになったから増えているという側面もあろう。
■精神疾患や難聴なども生活上の「悩ましさ」は大きい

 上述のように、死亡と死亡に至らない疾病の生活・就労上のマイナスの影響を総合化した指標として傷病ごとのDALY値が算出されている(注)。これは、「死が早まることで失われた生命年数と、健康でない状態で生活することにより失われている生命年数を合わせた時間換算の指標」であり、ここでは「寿命・健康ロス」と呼ぶ。健康政策上の財政配分基準などとしても利用される。

 (注)DALY(ダリー、“disability-adjusted life year”)の訳語としては直訳した「障害調整生命年」が通常用いられるが、これでは傷病で失われた年数という趣旨が伝わりにくいので、ここでは「寿命・健康ロス」と呼ぶものとする。

 図表4には、OECDが2002年の値として推計した日本の各傷病のDALY値の構成比をOECD平均と比較する形で示した。

 「がん」は、各部位(肺、胃、大腸・直腸、肝臓)についても掲げたが、全部位では17.8%と傷病の中で最も大きい。「がん」は死因別死亡率でも圧倒的にトップとなっているので、寿命をそれだけ縮めることによる損失が大きいためである。

 OECD全体においては13.2%であるので、これと比較しても大きくなっており、がんは特に日本においては最大の課題であることが明確である。

 脳卒中で寝たきりになったり、リハビリ生活が長引いたりする場合が多いので、健康ロスの大きい「脳血管疾患」のDALY値が「がん」に次いで大きくなっている。死因2位の「心疾患」は、生活上のリスクは「脳血管疾患」より小さいのでDALY値では5位となっている。

■「働けない」病気は経済的ロスをもたらす

 3~4番目には、「うつ病・躁うつ病」とアルツハイマー病など「認知症」が来る。これらの精神疾患は、死因別の統計では上位に登場しないが、健康という側面からは損失の大きな病気であるため、DALY値では上位に位置する。

 精神疾患の健康ロスは当人や周囲の者が働けないことによる経済ロスにつながる。特に勤労世代においては当人が働けないことが大きな負担となる。そうしたことから、当人や周囲の苦痛・心労ばかりでなく経済的な負担の面からも克服が大きな課題となっているのである。ここで紹介したDALY指標ではじめてその深刻さが明らかになる。

 日本の自殺率は先進国中トップクラスであることから、OECD全体と比較しても「自殺」のDALY値のウエートが高くなっている。OECD全体ではむしろ「アルコール乱用」のほうが深刻なのと対照的である。

 さらに、「自殺」に続いて、「難聴」(加齢による聴覚障害)や「関節症」が登場し、「肺がん」や「胃がん」より大きなウエートを占めているのは意外だとも言えよう。それだけ健康ロスが巨大なのだ。

 このように、DALY値から判断すると、死因や患者数では目立たなかったものの、精神疾患や難聴なども、生活上の「悩ましさ」は、実は、非常に大きいことが理解されるのである。

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