https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190117-00010009-abema-eurp
2016年の国民投票で決定したイギリスのEU離脱(Brexit=ブレグジット)。3月29日が離脱の期日となっているが、英国議会下院は15日、政府とEUが合意した離脱合意案に歴史的大差でNOを突きつけた。
28か国が加盟しているEU内では、人・物・資本・サービスの移動が原則自由となっているが、離脱後するイギリスとの間には新たなルールづくりが必要だ。そこでイギリス政府はEUと交渉、昨年11月、移行期間を3月から来年12月31日までとし、現在の貿易関係を維持すること、また、少なくとも5兆5千億円にのぼる違約金を支払うことなどが盛り込まれた離脱合意案がとりまとめられた。今回、下院が反発したのは、この合意案だ。略
かつてウィンストン・チャーチル元首相は「We are with Europe, but not of it.(我々は欧州と共にあるが、その一部ではない)」と発言したという。“大陸とは一線を画したい、EU本部の指図は受けたくない“という考えとも通じる発想だ。
細谷教授は「国民投票時、キャメロン首相も使っていた話だが、実はヨーロッパ史の中でイギリスは非常に重要な役割をたくさん担ってきたという点がある。ヒトラーがヨーロッパ大陸を支配した時にはまさにチャーチルが英雄として解放した。ナポレオン戦争でもウェリントン将軍がワーテルローの戦いを勝利に導いた。つまりイギリスは何度もヨーロッパを救ってきたし、ヨーロッパ人としても感謝の気持ちがある」と話す。
「“ヨーロッパに旅行に行く“という言い方をするぐらい、イギリス人にとって、ヨーロッパは“外“だという感覚がある。一般的な感覚として“悪いものは常にヨーロッパから来る“というイメージを抱いていて、ヒトラーによる侵略や共産主義のように、偉大な英雄が外から来た敵を倒すというのが物語としてウケやすい。移民に対しても、それに対してイギリスを守らなければいけない、という感覚がある」。略
その上で、「メイ首相の現行案である離脱、合意なき離脱、そして残留の3択にすると、離脱が2つに分かれてしまうので、離脱派はそれをさせたくない。ここからが大変な問題になる。はっきりと分かっていることがいくつかある。一つは、現行案以外のオルタナティブ・プランのほとんど全てが過半数を取ることはできない。つまり、現行案以外に実現可能な案がないということ。そして、このまま進めば、3月29日には確実にいわゆる“合意なき離脱“という最悪の事態に陥る。ユーロスター、飛行機も全て止まる。薬だけは優先させようという動きが進んでいるが、税関では2、3か月かかることになるので牛乳などは腐る。戦後のイギリスが一度も経験したことのない飢饉が起きる。だから可能性としては離脱時期を後ろ倒しする可能性が高い」と指摘した。