日常生活の中で、ふとしたときに触れるちょっとしたしこり。入浴中に体を洗っていて気づく人が多いようです。場所として多いのは、首筋や足の付け根。大きさは1~2cmのものが圧倒的に多いようです。乳がんのセルフチェック法としても「しこり」の有無の確認が勧められていますが、首筋や足の付け根にできるしこりの多くは、リンパ節が腫れているだけのものがほとんど。
「リンパ節」とは血液とともに全身を巡っているリンパ液の関所のようなところ。リンパ節そのものは全身にあるのですが、体表に近い部分にあるのが首筋や足の付け根なのです。
リンパ節が腫れても、通常は大きさも小さくほとんど触れませんが、これらの体表に近い部位のリンパ節が腫れると、首を傾けたり仰向けになったりしたときなどに触れやすくなります。また、わきの下や顎の下側など、少し奥まったところのリンパ節の腫れに気づくケースもあるようで、「しこり=癌?」と心配される方も少なくありません。 リンパ節は、もちろん癌との関連で腫れることもあります。しかし確率的には高いものではありません。
リンパ節の腫れの場合にまず考えられるのは、体内で起こっている炎症に対する私たちの体の正常な反応ということです。
リンパ液は、体内に菌が入ってきたときに免疫反応でこれらをやっつけるような働きをします。その結果炎症がおこります。
リンパ節はそのための司令塔的な役割も担いますが、活動しているときに腫れるので体表から触れるようになります。
風邪などでノドの粘膜が腫れているときには首筋のリンパ節が腫れますし、虫歯や歯周病で口の中に炎症があるときには顎の下のリンパ節が腫れることがあります。また、足に怪我や炎症があるときには足の付け根のリンパ節が腫れることがあります。
リンパ節が腫れている場合には、私たちは「大きさの変化」と「硬さ」と「可動性」に着目して、悪性か心配ないものかを見分けます。
ただの炎症反応で腫れている場合は、炎症のピークを過ぎれば必ず小さくなっていきます。硬さは、比較的弾力性のある硬さで、外から触るとぐりぐり動くことが多いです。
逆に、大きさがだんだん大きくなっていく、弾力があまりない硬さである、そして外から触ってもあまり動かないという場合には、炎症以外の原因で腫れている場合もあり、その原因の一つとして癌も挙げられます。
また、同じ炎症でも、炎症の原因が癌にともなって起こる細菌感染などの場合もあることは、可能性としては考えておかなくてはなりません。
このように、リンパ節の腫れに気づいた場合でも基本的には心配することはありません。しかし、大きさが変わらない場合や硬さが気になるときには自己判断をせずに、一度医師の診察を受けることをお勧めします。