これは、また速さに期待できそうな。
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ランナーが履くスパイクをめぐり、陸上界に新たな革命が起きるかもしれない。長距離では近年、ナイキの「厚底」シューズが席巻している。トップ選手がこぞって愛用し、マラソンの世界記録や日本記録が次々と塗り替えられた。そして、今度は短距離でも革新的なスパイクの開発が着々と進んでおり、試合でも使用され始めた。スポーツメーカーのアシックスが手掛ける「ピンなし」スパイクだ。
〔写真特集〕アスリートのこだわり
通常の陸上スパイクは底面に金属製のピンを数本配置し、ピンで地面を捉えることで推進力を引き出す。一方、新型スパイクはピンの代わりにカーボンファイバー素材をベースとした複雑な立体構造を靴底に取り入れた。「スパイクピンが地面に刺さる感覚がある」という選手の声をきっかけに、2015年夏から開発に着手。何度も検証と研究を繰り返す中で新たな発想が生まれたという。
機能設計を担当する石川達也さん(33)によると、地面を「点」ではなく「線」で捉えられるようにすることで、より効率的に高い推進力を得られると期待でき、軽さも追求できる。石川さんは「ピンをなくすことで20グラムは軽くなる。(片足)100グラムは切りたい」と大幅な軽量化に意欲を示す。
男子100メートルで日本歴代2位の9秒98を持つ桐生祥秀(日本生命)は同社のスパイクを愛用している。桐生は18年5月、この次世代スパイクに強い興味を示して「軽い。アシックスの秘密兵器。履いてみたい」。練習では試作品を着用。担当者に実際に走った感触を伝え、意見交換している。
実は、ピンなしスパイクは既に実際のレースでもデビューしている。5月に横浜市の日産スタジアムで行われた世界リレー大会の男子800メートルリレーでは、米国の2走を務めたブライス・ロビンソンが着用し、金メダルを獲得した。ロビンソンは100メートルの自己ベストが9秒台の実力者。その軽さやグリップ力に好感触を得ており、確かなスピードを生み出すことを国際舞台で証明してみせた。
東京五輪を1年後に控え、日本短距離界はサニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)が9秒97の日本新記録を樹立するなど、空前の盛り上がりを見せている。100メートルのトップ選手の最高速度は時速40キロを超える。100分の1秒を争う繊細な短距離種目において、スパイクは選手のスピードに大きな影響を与え、足元を支える重要な武器となる。
ピンなしスパイクは東京五輪に向けて開発が進められ、細かな改良や調整を重ねている。これまでの常識を覆し、新境地を切り開く挑戦。桐生をはじめ世界の強豪がこのスパイクを身に着けて、新国立競技場のトラックを駆け抜ける可能性もある。略