https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180610-00010007-nikkeisty-bus_all
ナンシーは時間に厳しい人です。だからこそ、明日のスケジュールをヒロシにもう一度確認したのです。ヒロシは素直にスケジュールを伝えます。それがナンシーの気持ちを逆なでしてしまいました。ヒロシは目を白黒。だって、英語の教科書にはそう書いてあったんだから……
それはこんな会話でした。
Nancy: So, I need to arrive at the office by 10:00?
Hiroshi: That's right. You had better be on time.
Nancy: You don't have to tell me that! I'm always on time!
Hiroshi: Huh…?
ヒロシは期せずしてこのように言ったことになります。
ナンシー:じゃあ、オフィスには10時までに来なくちゃね。
ひろし:その通りです。時間通りに来ないと首ですからね。
ナンシー:私にそんな風に言う必要ないんじゃないの! いつだって私は時間通りよ!
ひろし:はあ?
教科書英語は時として思わぬ誤解を生むことがあります。その典型例のひとつが had better. 皆さんは「~した方がいい(提案)」と習ったと思います。ところが、このhad better、単に何かを助言したり、勧めたりする意味合いとはかなり違います。had better… は「~しなければ、とんでもないこと/問題/危険が起きる」というかなり強い表現ととられる可能性大です。これではいつもpunctual 「時間を守る、時間に正確な」なナンシーを怒らせてしまうのは仕方ないでしょう。
では、どう言えばよかったのでしょう?
Nancy: So, I need to arrive at the office by 10:00?
Hiroshi: That's right. You need to be on time.
Nancy: I know. I'll try to get there a few minutes early.
Hiroshi: Okay, great.
ナンシー:じゃあ、オフィスには10時までに来なくちゃね。
ひろし:その通りです。時間通りに来てくださいね。
ナンシー:分かっているわよ。2,3分前には着くようにするわね。
ひろし:はい、よろしくお願いします。
had betterが一種の脅しのニュアンスがあるのは分かりました。ではどう言えばいいのでしょうか。一番簡単な方法は Maybe you'd better.... です。これは丁寧な提案になります。それ以外でもYou need to be on time. でいいでしょう。need to は「~する必要がある」ですが、単に「時間通りに来てくださいね」と考えればOKです。
had better が若干悪者になっていますが、「そろそろ失礼します」などと言うときの定番表現はI'd better go. 主語が私であれば、had betterを使うことには何の問題もありません。また青白い顔をして明らかに具合の悪そうな人に、「行かないとまずいかもしれないよ」の意味を込めて「医者に行って診てもらった方がいいよ」と言う場合はYou'd better go see the doctor. と言うことができます。
・A: Do you think we should change suppliers? 業者を変えた方がいいと思う?
B: Better not. It will delay production even more. 変えない方がいいよ。生産がもっと遅れるよ。
* better not: = had better not… のこと。 「~しない方がいい」の意味。ここでも「生産が遅延する」というよくない結果を見越しています。
・We'd better not underestimate ABC. They're becoming a strong competitor. ABC社を見くびらないほうがいいよ。彼らは手ごわい競合相手だよ。
* had better not underestimate: 過小評価しない方がいい、見くびると痛い目に遭うことになる
・You should know better than that. あなたならよく分かっているはずですよね。
*直訳すれば「あなたはそれ以上によく知っているべきである」すなわち「よく分かっているはずである」を意味する定番表現となります。
・We sold our company to International Business Machines, better known as IBM. 我々は会社をIBMという名で知られているインターナショナル・ビジネス・マシーンに売却しました。
*better known as: (本名よりも)~という名前でよく知られている、(~の方が)一般的に知られている
・A: Do you think I should complain? 苦情を言った方がいいと思う?
B: I think you'll be better off if you don't say anything. 何も言わなければ、もっといい状況になると思うけど。
*be better off: (~した方が)もっと良い状況になる、幸せになる
・I think we're far better off without George's help. He just gets in the way. ジョージの手助けがない方がずっと気が楽だと思うわ。今だって彼は妨げになっているもの。
*be better off without: ~がいない/ない方がずっとよい、気が楽である get in the way: 邪魔になる、妨げになる
*不実な恋人と付き合っている友人に対して I think you'll be better off without him. なら「彼と別れた方が幸せになると思うわ」になります。
・I'm planning on bringing my better half to the company party. 会社のパーティーには妻を同伴しようと思っているんだ。
*better half: 「配偶者、伴侶、パートナー」の意味ですが、通常は「夫」ではなく「妻」に対して使われます。
・For better or worse, we're going to have to sell the factory. 好むと好まざるとにかかわらず、我々は工場を売却せざるをえないだろう。
* for better or for worse: 好むと好まざるとにかかわらず、よかれあしかれ、良くも悪くも
・A: How's it going? 元気?
B: Couldn't be better. 最高だよ。
*Couldn't be better. 直訳すれば、これ以上よくはならないだろう、すなわち「最高だ」の意味になります。反対に Couldn't be worse. であれば、これ以上悪くはならないだろう、すなわち「最悪だ」の意味になります。
・Against my better judgment, I told Nancy that she could meet with the client by herself. 不本意ながら、ナンシーには自分でクライアントと打ち合わせをしていいと言いました。
* against one's better judgment: 不本意ながら、よくないとは分かっていながら