新型コロナの「ファクターX」は結核感染の多さか?(TBS系(JNN)) - Yahoo!ニュース
日本やアジアの新型コロナウイルスの死者数が欧米と比べて少ないとされる要因「ファクターX」について、過去の「結核」のまん延度が関連しているのではないかとの研究内容が発表されました。 帝京大学医学部の井上和男教授らが発表した論文によりますと、1990年の人口10万人あたりの結核の発症者数がデータベースに記載されている90か国について、100万人あたりの新型コロナウイルスによる死亡者数とともにグラフ化したところ、結核の発症者数が多いほど、新型コロナの死亡者数が逆に少なくなっているということです。結核は、日本では1950年まで死因の第1位で、アジア全体では日本以上にまん延していました。 結核は、感染しても発症しないまま体内に潜み続けることが多く、井上教授は、日本の高齢者の多くが若い頃に結核に感染した「潜行性持続感染」状態となっていると指摘。結核への感染によって人体の自然免疫機構が「訓練」され、ほかの病原体に対する防御能力も高まる「訓練免疫」が強化されたために新型コロナの死亡率を低くしているのではないかとの仮説を提唱していて、今回の研究結果は、その仮説を支持するものだとしています。 新型コロナをめぐっては、去年春の感染拡大初期にBCGワクチンを接種している地域で感染が少なく、BCGによる「訓練免疫」が関係しているのではとの仮説が出されていましたが、その後、否定的な研究も発表されていました。井上教授は、BCGの影響よりは結核そのものの感染の影響の方が大きいのではないかと話しています。 今回の研究内容は去年4月から今年4月までのデータで分析していますが、アジアで感染が拡大した6月のデータで分析しても、この傾向は変わっていないということです。井上教授は、ワクチン開発も重要だが、「訓練免疫」を含む自然免疫の解明を進めることも求められると話しています。