沸騰で10分消毒していますが、15分ね。先生方も85度で10分とか80度で15分とか言っていたので、侮っていたかも。
https://nazology.net/archives/56832
これまでは、実験後に不要となった新型コロナウイルスを破棄する場合、60℃で30分間の加熱を行い、ウイルスを不活性化して(殺して)きました。
この手順はエボラ出血熱ウイルスなど、病原ウイルスに対する一般的な手法として世界で広く取り入れられています。
しかし今回、フランスの研究者によって新型コロナウイルスの詳細な不活性化実験が行われたところ、条件によっては既存の方法(60℃で1時間)ではウイルスが生存したままであり、完全に死滅させる為には沸点に近い温度が必要であることが示唆されました。
今回の実験結果が事実であるならば、中途半端な温度で消毒したマスクを再利用することは、極めて危険な行為となります。
しかし、ウイルスはどうやって高温を生き延びるのでしょうか?
研究内容はエクスマルセイユ大学のボリス・パストリノ氏らによってまとめられ、4月11日にプレプリントサーバーである「bioRxiv」に掲載されました。
多くのウイルスは、60℃で1時間加熱処理することで不活性化できます。
これは、生物の体を構成するタンパク質のほとんどが60℃付近で変性し、生物学的な機能を失うからです。
そのため、新型コロナウイルスの破棄にも、これまでは60℃で1時間の処理が行われてきました。
しかし、ノロウイルスなど一部のウイルスやボツリヌス菌は、不活性化に100℃近い温度が必要であることが知られています。
そこで研究チームは、慣例によって何気なく定められていたウイルス取り扱い法が、新型コロナウイルスにきちんと効くかどうかを確かめることにしました。
実験にあたって研究チームはまず、新型コロナウイルスをアフリカミドリザルの腎臓細胞に感染・増殖させました。
新型コロナウイルスは犬や猫にも感染することが知られており、同じ霊長類のサルならば容易だと判断したからです。
結果は予想通り、アフリカミドリザルの腎臓で感染・増殖を開始しました。
汚染環境で生き残る新型コロナウイルス
ウイルスが一定数まで増加したのを確認すると、次に研究チームは温度や消毒時間、消毒環境など様々な条件下でウイルスの不活性化を試みました。
結果、衛生的な実験環境では既存の60℃で1時間の消毒で死滅しました。
しかし「使用後の糸ようじ」のような生物学的な汚染が加えられたサンプルでは、60℃で1時間の消毒ではウイルスは生存したままであることが確認されました。
汚染された環境には微生物の塊や植物繊維が存在し、これらの隙間の中では温度が十分に高くならなかったと考えられます。
そのため、ウイルスを完全に死滅させるためには、沸点に近い92℃で、最低でも15分間の消毒が必要だというのです。
これは非常にショッキングなデータです。
というのも、生物学の実験室では、使用済みの要らなくなったウイルスや細胞のサンプルは一つの廃液として、まぜられて(汚染されて)処理されることがあるからです。
研究結果が事実ならば、現在新型コロナウイルスを研究している多くの研究者が、非常に危険な状態に置かれている可能性があります。
またウイルスが付着したマスクを再利用する場合にも、中途半端な温度ではなく、繊維の中まで届くような長時間の煮沸消毒が必要となるかもしれません。
現実の環境に生きているウイルスは常に汚染環境にある
今回の研究結果は、汚染が存在しない理想的な環境を前提としていては、ウイルスの正確な挙動がつかめないことを示唆しています。
空気中を漂っている新型コロナウイルスも、人間の喉や気道という生物学的にクリーンではない場所から、咳やくしゃみにより、唾液と有機物が混合したクリーンではないエアロゾルにのって、再び人間の喉や気道に感染します。
現実世界では生物汚染のない環境のほうがむしろ異質であり、既存のクリーンな状態を前提にしたマニュアルによる処理では、防疫をあっけなく突破される可能性があります。略