適応障害は7月こそ要注意 「誰でも発症する可能性ある」医師が警鐘〈AERA〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
著名人らの「適応障害」報道を横目に、「自分だけは大丈夫」と思っていませんか。実は「今の時期、今の状況」は適応障害がより発症しやすいという。ストレスをためこむとだれでも発症する可能性があります。AERA 2021年7月19日号は「適応障害」特集。 【図】産業医と主治医の違いはこちら
* * * まさか、あのほんわか癒やし系の深キョンが……。
俳優の深田恭子さん(38)が適応障害で休養することを所属事務所ホリプロが発表して約1カ月半。適応障害といえば、皇后雅子さまが皇太子妃時代に公表した病気としても知られる。産業医の池井佑丞さんが言う。 「適応障害は、特定のストレス要因に反応してさまざまな症状が表れ、社会生活に支障が出てくる病気。だれでも発症する可能性があります」
つまり“ほんわか癒やし系”でも、適応障害と無縁ではない。 池井さんは、「今の時期、今の状況」が適応障害をより起こしやすくしていると指摘する。主な理由は三つ。まず、異動、就職、入学など環境の変化が訪れる4月から数カ月が経ち、知らないうちにためていたストレスの影響が出てきやすいタイミングであること。
■コロナの我慢も限界
次に、自律神経の乱れだ。気圧の変化が大きい梅雨や台風シーズンは自律神経のバランスが乱れ、心身の不調が生じやすくなる。
さらに、コロナの影響だ。テレワークで苦手な上司や同僚と会わなくなりストレスが減った人がいる一方で、「親しい人とのコミュニケーションが取れない」「好きな外食や旅行ができなくなった」「仕事や収入が減った」「不安を煽(あお)るような報道を連日目にする」「運動量の激減」など、新たなストレス要因を抱える人が増加。昨年は何とかやり過ごせた人も、相次ぐ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などで、我慢も限界に近づいてきている。先の見えない状況が拍車をかけている。
適応障害の症状は、精神、身体、行動に表れる。精神では、抑うつ気分、不安、怒り、焦り、動悸、意欲・集中力低下、イライラなど、身体では不眠、食欲不振、倦怠感、頭痛、めまい、腹痛など、行動では、朝起きられなくなる、電車に乗れなくなる、暴飲暴食などだ。 「同様の症状を呈するうつ病との大きな違いは、うつ病はストレス要因に関係なく慢性的に症状を呈するのに対し、適応障害は明確なストレス要因が原因で発症する点です」(池井さん=以下同)
そのため、適応障害の治療ではストレス要因から遠ざかることが治療の最重要ポイントになる。薬物治療が中心となるうつ病とは、そこも異なる。 「ただし、きっかけは適応障害でも、抑うつが長引いてうつ病になる人もいます。そうすると薬物治療のウェートが増します。診断時には、どの段階かを見極めなくてはなりません」
■プラス事象もストレス ストレスというと、マイナスの事象が頭に浮かぶが、昇進や「希望先に異動ができた」「念願の企画が通った」といったプラスの事象もストレス要因になる。また、ストレスの度合いと適応障害のなりやすさは相関関係にない。他人から見たらささいなことでも、その人にとっては適応障害を発症するほどのストレスとなり得る。
「ストレスは足し算のような面もあります。状況が違えば適応障害を発症しなかったかもしれませんが、コロナ、運動不足、睡眠不足などがあるところに、何らかのストレス要因がきっかけになって適応障害が発症することもある。『だれでも発症する可能性がある』と先に述べましたが、自分だけは大丈夫と過信しないことです」
ストレスゼロの人はいない。自分にとってのストレスマネジメントを日頃から探求し実践するとともに、もしかして……と思ったら、速やかに適応障害に詳しい医師へ相談する。池井さんによれば、「働いている人の8割が職場でストレスを感じている」という調査結果もあり、仕事上でのストレス要因で適応障害を発症する人がかなり多いという。そのため理想は、まずは産業医への相談。上司への相談後、上司を通して産業医へつながるケースもある。
「適応障害と診断されれば、ストレス要因と距離を取り、休養をしっかり取る。就業が難しい場合、休職する。休職期間の目安として、私は基本的にはまず1カ月としています。ただ、仕事や経済的な事情もあるので、その場合は2週間ごとに体調の回復度を見て、復職を検討します。早期に対応した結果、1~2週間の休職で復職できたケースもあります」
■100%回復が大前提
復職に関しては、主治医と産業医、双方から「可能」の判断をもらうことが大事だ。よくあるのが、「8割方体調が良くなったので、段階的に復職可能」「異動を条件に復職可能」という診断書が出るケース。適応障害に限った話ではないが、復職は体調が100%回復し、休職前の社会生活と同様のリズムで日常生活を送れるようになることが大前提だ。そこから、「元の働き方」「元の職場環境」への復帰を目指す。主治医だけが診ている場合、主治医はどちらかというと「患者の味方」のため、「早く復職したい」という患者の希望に沿って診断書を書きがち。それでは会社の求めているレベルに患者の回復度が達しておらず、適応障害を再発、ひどい場合はうつ病を発症しかねない。
「産業医は患者と会社どちらもがウィンウィンになるよう、復職のタイミングやプロセスを判断します」 発症の背景や症状などによって適正に復職をサポートしていく必要があるため、産業医に相談することが大切だ