https://news.yahoo.co.jp/articles/b37d37e520e6025c42cb2b59777caa34ff199bc2
痛風や腎臓病の原因として“悪玉”のイメージが強い尿酸に、高齢女性の肺機能を維持する働きがある。熊本大大学院生命科学研究部遺伝子機能応用学研究室の首藤剛准教授(43)と、薬物治療学研究室の猿渡淳二教授(44)らの研究グループが、こんな研究成果をまとめ、国際学術誌に掲載した。
尿酸は食事や生体に含まれる「プリン体」と呼ばれる物質の最終代謝産物。水に溶けにくく、血中の濃度が上昇すると尿酸結晶ができ、痛風や腎臓病を引き起こす。一方で、組織に障害をもたらす酸化ストレスを弱める抗酸化物質としての側面もある。尿酸は肺の組織に多く存在するが、その働きは不明だった。
首藤准教授らは、加齢や病気に伴う肺機能の低下に尿酸がどう作用するかに着目。マウスを使った実験で、肺気腫、または慢性閉塞性肺疾患を持つメスのマウスの尿酸値を上昇させると、肺気腫の進行や呼吸機能の低下が抑えられることを突き止めた。しかし、オスのマウスでは変化がないか、むしろ悪化する場合もあった。
さらに猿渡教授らは、50歳以上の人間ドック受診者のデータを疫学解析。尿酸値が高い女性や、尿酸値を上げる遺伝子を持つ女性は、呼吸機能が高く保たれていることが分かり、尿酸が肺に対して保護的に働いていると証明した。
首藤准教授らは、肺の細胞を用いた実験で、女性ホルモンが尿酸の抗酸化作用を消失させることも明らかにした。「肺を保護する効果がある女性ホルモンが閉経で減少し、代わりに尿酸が肺の保護機能を発揮している可能性が示唆される」と首藤准教授。猿渡教授は「男女差に考慮した肺疾患の治療法開発などへの応用が期待できる」と期待している。