酸化ストレスによる障害について生体のバランス論の観点から眺めるという、免疫学に関する安保説の話は、前回の記事で一旦終わりにして、ちょっと別の観点から、●の健康影響を眺めてみよう。
以前の記事で、放射線被曝は、電離による直接損傷と酸化ストレスによる障害を招き、その影響は主として後者のものであるということをみた(詳細は、電離の直接障害と酸化ストレス障害)。酸化ストレスは、主に活性酸素によるものであった。一般に、●の健康影響はよく分からないとされているので、このブログの目的の一つは、ある症例が何故起きているのかということを眺めることにあるのだけど、この観点からすると、この酸化ストレス障害の話をキーワードにして、何か理解を広げていけないだろうか、ということが思いつく。
このような考え方に基づく見解を、某掲示板の緊急自然災害板から発掘すると、
933 : 914(東京都) : 2011/11/23(水) 00:57:12.14 ID:oF70UWLN [1/2回発言]
[中略]
怪しい症状が出てきた際、それが放射線の被爆の影響かどうかを判断する際に参考にする情報は、
自分の場合、まず、
(1) 過去の経験から学ぶ、次に、
(2) 栄養分の欠乏症を探してみる、あとは
(3) 放射線治療の副作用をあたる、暇なら
(4) がん化学療法(抗がん剤)の副作用をあたる、という感じだろうか。
(1)は当然の話で、原爆被爆者、スリーマイル、チェルノブリとある訳だし。
チェルノブイリ関係では、やはりヤコブロフ・ネステレンコ報告が充実しているだろう。
ただ、同報告も、人の生き死に繋がりにくいものについては情報が少ない(例えば、鼻血)、また、
皮膚症状については、余り病名が出てこないので具体的によくわからんというものもある。
(2)については、対策が簡単かもしれないので、押さえておいた方がよいだろうという趣旨。
栄養分の不足がおきる理由は、>>815参照。不足しやすいのは、ビタミン類、ミネラル類あたりだろうか。
ビタミンが足りないと大変! ttp://www.health.ne.jp/library/5000/w5000123.html
もっと知りたい!ミネラルの役割 ttp://www.health.ne.jp/library/3000/w3000809.html
(3)については、医療行為とはいえ、放射線被爆な訳だから、関係があるかもしれない。
かなりの高線量の場合なので注意が必要だけど、大規模集団での低線量被爆の場合(感受性の幅が広い)、
低線量だが内部被爆ありの場合に、似たようなことが起きるかどうかは分かっていない訳で、参考にはなろう。
(4)については、酸化ストレス繋がりによるもので、関係があるかもしれない。
抗がん剤の副作用については、抗がん剤やそれが生体内で分解される際にできる物質(代謝生産物)が
活性酸素を産生し、生体内で酸化ストレスが増大することが原因の1つといわれている。
がん治療時の副作用緩和に健康食品が役立つメカニズム 2006年2月 4日
ttp://www.de-pain.net/?p=417 [リンクはココ。小松靖弘氏(医学博士)の公式サイトの記事から]
>「抗がん剤を投与したり放射線を照射したりすると、患者さんの体の中には大量の活性酸素が発生します。
>この活性酸素が体内のさまざまな場所で悪さをすることが、副作用の一因にもなっているのでは
>と考えられます」
>「特に、抗がん剤が体内で代謝されるときには大量の活性酸素が発生すると考えられますし、
>放射線治療などによる細胞破壊で炎症反応が起こった部位でも、活性酸素が大量に発生します。
>また、抗がん剤治療によってがん細胞が壊れると、細胞の中の酵素が外に出て、まわりの正常な組織を
>攻撃して、それを修復するために体内の白血球が集まって炎症反応が起こるので、ここでも大量の
>活性酸素が発生します。これが、体のあちこちに障害を起こす原因の一つとなると考えられるのです。」
(なお、放射線治療や化学療法の際に、抗酸化物質の摂取が良いか悪いかは、決着が付いてない
ようなので、念のため)
上記の記事で「シスプラチン」という制がん剤の例が出てくるけど、これも活性酸素を生成し、
そのことが制がん作用の主体だろうとも考えられている。
制癌・発癌と活性酸素 ttp://www.e-clinician.net/vol37/no388/pdf/living-body_388.pdf (pdfファイル) [エーザイ(製薬会社)のサイト内の資料から]
>金属キレート構造を介して活性酸素を出すものにブレコマイシンやシスプラチンがあり、・・・
>この中には制癌作用は必ずしも活性酸素と結びついていないといわれる化合物も含まれるが、
>総じてその制癌作用の主体は、放射線の場合と同じく、ヒドロキシル・ラジカルによるDNA障害にある
>と考えられる。(5ページ目上段)
上記の引用中、 「(1)過去の経験から学ぶ」は、今更言うまでもなく多くの人がしているだろうが、「(3)放射線治療の副作用をあたる」と「(4)がん化学療法(抗がん剤)の副作用をあたる」の部分が上述の思いつきを具体化したものにあたると思われる。(なお、「(2)栄養分の欠乏症を探してみる」は、ちょっと今回の記事とは関係がないだろう。)
以上の話を更に一般化すれば、
(A)生体内の酸化ストレスを増加させ障害を招き得るもので、かつ、
(B)多くの科学的知見が蓄積されているもの
があれば、●の影響を理解する上で役立つかもしれない、ということが考えつくだろう。
結局、このような二つの条件に合致するものとしては、上述の医療上の副作用(放射線療法のもの、化学療法のもの)、酸化ストレス障害が主体の疾患、あるいは酸化ストレス障害が主体の化学物質(何らかの毒物など)などが思いあたる。
以上の一般論の枠組みを踏まえ、先ずは放射線療法の副作用との関係について、次回以降ちょっと眺めてみよう。
(つづく)
〔関係記事〕
・電離の直接障害と酸化ストレス障害 2012/5/9 (既出)
・酸化ストレス(活性酸素)による生体の障害 2012/5/11