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ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

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生活様式と獲得形質の遺伝

2023年09月07日 | 健康法

〔更新履歴:追記2023-9-8〕

 

 進化は、生物種と地球環境(生息環境)との相互作用で成り立つ。生息環境の中で生活様式が成り立つと考えることとなるが、環境要因と生活様式との切り分けはそれほど自明ではない。
 生活様式の中でも生体に力学作用を与えるものが重要との立場を採るが、普段の生活では余り意識されないものも多い。特に、物理的環境要因が関係するものは、力学的、電磁気学的あるいは熱力学的な作用を生体に及ぼし得るが、ヒトが制御できない要因(気圧、重力、自然放射線量など)と制御できる要因(生活場の気温、日光・紫外線量など)との二つに大別できるだろう。ヒトが制御できない要因は、暗黙の生活様式となり易い。例えば:


1.- 生活場は1気圧前後である、
2.- 生活場には地球引力(重力)が働いている、
3.- 生活場には風が吹く、

 

などである。

 

 上記1.について力学的にみれば、動物は1気圧の力学作用で押しつぶされないように1気圧に釣り合う力で内側から膨らみつづけている、ということになる。なので、動物をロケットで宇宙に連れて行って宇宙空間に放り出せば、ゼロ気圧なので膨らみ過ぎて破裂してしまうであろう。
 気圧の変化は力学作用の変化を招くこととなるが、このような調節が苦手で不快な症状が出る人が結構いるらしく(いわゆる気象病を患う人々)、次のような情報サイトがあり繁盛しているようだ:

頭痛ーる
https://zutool.jp/
低気圧頭痛・不調の原因や症状とは? -気象病の基礎知識
https://zutool.jp/column/basic/tenkitu_symptom

低気圧頭痛・不調の原因とは?
 低気圧頭痛・不調の主な原因としては気圧の変化が関係しています。気圧の変化感じ取るのが耳の奥にある内耳(ないじ)になります。・・・この内耳のセンサーが敏感だと、わずかな気圧の変化でも脳に対して過剰に伝わってしまいます。
その結果、頭痛、めまい、肩こり、ぜん息、うつ病といった様々な不調に繋がるのです。

 

 2.について力学的にみれば、普段運動しない人でも、ある程度身体活動をしている、ということになる。寝ている時は格別、座ったり立ったりしている時は、骨格のバランスを上手くとりながら筋肉(抗重力筋)で調整して重力に釣り合う力で骨格を支えていることになる。
 骨や筋肉の成長を司るものは、力学的な負荷であり、ヒトをロケットで宇宙空間に連れて行って長期滞在させると、残念ながら無敵ングにはなれずに骨そしょう症や筋力低下に悩むこととなる。

 

 3.については、動物にとっては野外では目や肺に風で舞ったゴミが入ったりするので、それに対する備えが必要ということになるが、植物にとっては死活問題となっているようだ。
 1991年に米国で、人工的な生態系を作り上げ自給自足の生活をすることを目的として、巨大な温室(バイオスフィア2)に科学者8人が2年間の予定で閉じこもる実験をしたことがある(月面に宇宙基地を作り長期滞在するための地上での予備実験なのであろう)。生態系の柱は樹木だろうということで、温室内にも多くの樹木が植えられた。最初は順調に育っていたが、実験が終わらないうちにその多くは枯れてしまった。理由は、ニクラス・ブレンボー氏の著作「寿命ハック」によれば:


「風は木にとっては手ごわい敵の一つだが、実のところ、必要不可欠なものである。絶え間なく吹く風に耐えることによって木はたくましく強く育っていく。風が吹かない場所では木は弱くなり、やがて自らの重さを支えられなくなって倒れる。」(同書78頁)


 風が吹かないと木が枯れる。ヒトが無重力空間に長期滞在すると大きな問題が生じるということが分かっていた筈なので、思考実験で思いつきそうなものだが、ムーンサルト(後方二回宙返り一回ひねり)ほどではないだろうがちょっとした捻りが必要で当時は世界一流の頭脳でも思い至らなかったのであろう。
 樹木は、生活場の風の強さ応じて遺伝因子により幹や枝の太さを制御しいてるのだろう(未だ人智が及ばない所にある、遺伝因子の自動制御の一例。ヒトの骨の強度の制御パターンに類似していそう)。樹木の種類によって制御パターンに違いがあると思われるが、そのことがある生活場所での樹木の植生に大きく影響しているのかもしれない。

 

 さて、生活様式が遺伝因子に影響を与える例があるのだろうか。


 この疑問に答えるために、先ず遺伝学の歴史についてみておこう。明らかに段階的な発展を遂げていると思われる:

1- 先メンデル遺伝論〔遺伝という現象は、いにしえより認識されていたのだろうけど、その機構については手探りの状況〕
2- メンデル遺伝論〔劣性遺伝などを解明〕
3- ゲノム遺伝論(DNA配列遺伝論、ワトソン・クリック遺伝論)〔ゲノムを解析できれば遺伝の謎が解けるという都市伝説に至った模様〕
4- エピゲノム遺伝論(エピゲノム制御を含む遺伝論、DNA発現制御遺伝論)〔ゲノムは生命体にとって、いわばご先祖様伝来の指令が書かれた古文書(DNA配列)だが、古文書自体よりも古文書を読み取る装置(エピゲノム制御)の方が複雑で高度なものであることが判明〕

 

 ゲノム遺伝論では、いわばDNA配列原理主義の立場なので、生殖時にDNA配列が決まりそれが遺伝系すべてを制御しているとし考えるので(例外は、突然変異によるがん化など)、生後に行われる生活様式を考慮の対象として取り入れにくい。

 

追記:ヒトのゲノムは塩基数にして約30億個ほど。ゲノムのいちばん多い動物は肺魚(1100個億)、次が両生類で哺乳類に比べ15-30倍の数のゲノムを持つ。ゲノム数は進化の度合いと関係しておらず、むしろ肺呼吸に慣れない時代にかなり膨張した模様。


 他方、現在主流のエピゲノム制御を含む遺伝論によれば、生活様式と遺伝因子とが密接に関係するとの立場であり、生活様式を考慮の対象に入れるのは当然のこととなっいる。

 このような関係はラマルクの進化法則のうち「獲得形質遺伝の法則」と言われているものだが、今ではその実例がいろいろあるけど、例えば、折茂英生氏 「エピジェネティクスと栄養」(2010年) https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/006040193.pdf の左欄下段から、戦時中のオランダの飢餓の事例(母親の生活様式(低栄養。流通が滞ったという社会的要因によるもの)による影響が子孫に伝承):

 

 第二次世界大戦末期の1944 年~1945 年の冬季,ドイツ占領下のオランダで発生した飢餓(Dutch Hunger Winter)時に妊娠していた女性から生まれた子供たちに,成人後に生活習慣病を発症するリスクの増加がみられた.最近彼らの子の世代,すなわち飢餓時に妊娠していた女性の孫の世代(F2)まで,生活習慣病の発症リスクが高いことが示された。

 

追記:エピゲノムの解説がなかったでござる:

エピゲノムの制御を受けた転写の方程式-エピゲノム異常の影響を反応素過程ごとに理解する- 2020年11月26日
 https://www.riken.jp/press/2020/20201126_1/
抜粋>補足説明
  1. エピゲノム
    細胞内の全DNAの塩基配列として記録された遺伝情報の総体を指す「ゲノム」に対し、DNAやヒストンの化学修飾などによって細胞の個性を記憶する情報の総体を「エピゲノム」と呼ぶ。<
(研究成果報告からの抜粋だけど、報告自体を眺めるとエピゲノム遺伝論での探究点に触れることができるかもしれない。ちなみにエピゲノム制御の結果、ヒトのゲノムのうち読み取られる部分(遺伝子)は約21-24千ヶ所ほど)

 

 他方、進化学について眺めてみると、ダーウィン的な進化の考え方が主流と思われる。これは、ゲノム遺伝学と相性がよいし、突然変異をベースとした概念なのでかなり緻密な枠組みを組み上げて確率過程の現象ととらえて数理進化学的な方向にも進んでいるところ。
 なので、その信奉者は何故かエピゲノム遺伝論を毛嫌いする傾向がみられる。おそらく、ラマルク的な進化の考え方、特に獲得形質遺伝の法則への強い反発なのだろう(数理進化学のようなものをやっていた専門家が、今更、生物種の生活様式を観察することが重要と言われても、方向転換できないのかもしれない)。

 エピゲノム遺伝論の時代においては、親世代の生活様式が重要であり、本ブログでは獲得形質遺伝の法則は当たり前田として扱っていこう。この点に関し、とりあえず見つけた雑多な資料を置いておこう:

 

「遺伝」 について
   https://byosei-neuroscience-institute.ncnp.go.jp/bucho/%E3%80%8C%E9%81%BA%E4%BC%9D%E3%80%8D%E3%80%80%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
>(獲得形質というのは、生まれた後で経験などによって得られたその人の性質のことです。 例えば、もともと運動神経の悪い人が猛練習によって野球がうまくなっても、その後生まれたその人の子供が生まれつき野球がうまくなるかというと、そうではありません。 つまり、獲得形質は遺伝しない、というのが生命科学上の常識なのです。)・・・<
>でも、最近では「生みの親より育ての親」という現象が少なからず報告されてきています。 これは、遺伝子そのものに組み込まれた情報ではないけれども、育て方によって、その遺伝子が修飾を受けて、結局育ての親と同じ性質が世代を超えて伝えられていく、という概念です。
 なかなか面白いんですよ、この分野の研究も。。。。
 たとえば、ネズミで観察されているんですが、子供の毛繕いをしたり背中を舐めたりと、きちんと子育てをする親に育てられたネズミは、自分が親になったときにはやはりきちんと子育てをするようになる。 逆に、あまり子育てをしない親に育てられたネズミは、親になってからやはり子育てをしなくなる。
 しかし、子育てに熱心でない親から生まれても、親を交換して子育てに熱心な親の元で育てられれば、将来きちんと子育てをするようになるし、また逆の現象も観察されています。 つまり、生みの親は関係なくて、どのように育てられたのか、ということが、その後のネズミの振る舞いを決定するわけです。しかも、これが何世代も受け継がれるんですよ、あたかも「遺伝」しているかのように。 つまり、生みの親より育ての親、という訳です。・・・

 

獲得形質は遺伝する? -親世代で受けた環境ストレスが子孫の生存力を高める-
 https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2017-01-11
>概要
 生物学では長らく、後天的に獲得した形質は遺伝しないと考えられていました。ところが近年になって、その通説を覆すような事象がいくつか報告されるようになりました。例えば、高カロリー食により肥満になった父ラットから生まれた娘ラットが、通常食で育ったにもかかわらず糖尿病の症状を示すという報告が挙げられます。このように、親が生育した環境によって子供の表現型が変化を受ける可能性が示唆されているものの、それがどのようなメカニズムで生じるのかについてはほとんど明らかではありません。 ・・・

 

後天的に獲得された形質は、次の世代へと遺伝する──「エピジェネティクス」の謎を独科学者らが解明
 https://wired.jp/2017/10/10/epigenetics-mechanism/
>親は子どもの発達を導く遺伝情報を提供する。親のエピジェネティックな情報は、子どもが最初に直面するであろう環境に適応するための、母親からもらえる最初のマニュアルのようなものといえるだろう。そして親世代が後天的に得た形質は、子ども世代、そして孫の世代へと受け継げられていくのだ。

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