甥を空港まで送って行った。
滞在中に、甥は3回も財布や携帯電話を車の中に忘れたことがあった。座っているときに、ポケットから滑り落ちてしまうのだ。
1度はカヤックでサンドバーに行った時で、財布と携帯電話をおいたまま何時間も公共の駐車場に停めていて、よくまあ車上荒らしに会わなかったことよ。
身支度をしている甥に、言った。
「財布と携帯電話は絶対にポケットにいれたらダメだよ。
うっかり財布や携帯電話をなくしたら、ここは日本じゃないんだから誰も届けてはくれないんだからね。面倒でもバックパックの中に入れておく。これ約束だよ」
姉によると、同じことを姉も何度も言っているのだという。
「親以外の人が言えば、聞くかもしれないからどんどん言って!」
空港までの道中は、とりとめのない話をして、空港に着き、スーツケースを降ろした。
「ありがとうございました」
甥がぺこりと頭を下げた。
「またおいで」
「はい、絶対来ます」
そしてハグして、別れた。
一人になって走り始めたら、勝手に涙が出てきた。
肩の荷がおりたと思ってたのに、なんだかやけに寂しくなった。
うるさいことを言い過ぎたか。期待過剰ではなかったか。心がチクリと痛む。
まあ、これは甥には言わずにおこう。
泣きながら運転していたら、どこでどう間違ったか家とは全然違う方面に向かっていた。
どう見ても、あらぬ方向に向かってフリーウェイをバンバン走っていく。
これはどこかで降りて、反対側のフリーウェイに乗らねばと思いつつも、どこで降りたらいいものやら迷っているうちにどんどん先に進んでいく。
どうせどこだかわからないなら、どこで降りても同じだと思い、降りられそうなところで降り、なんとか反対車線のフリーウェイに乗って、延々遠回りをして家に帰って来た。
まあ、これは夫には言わずにおこう。
雨と泥で濡れそぼけた犬を見るような目で見られるに決まっている。
狭い島でよかった。どんなに遠くに行っても、2時間あれば家に戻れる。
鬼の目ならぬ、叔母の目にも涙の話。
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