太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

天使に出会った実話16

2024-07-25 14:33:13 | 天使に出会った実話

Carmel Reilly 「with  angels beside us 」より


Linda   38

2年前、私は夫と子供を残して家を出た。
家に押し込められて子供の世話に明け暮れ、私はとても不幸だった。子供達は可愛かったが、こんな私といても彼らは幸せではないだろうと思った。
もし、私がいなくなったら、夫は自由に誰かもっと夫や子供にふさわしい人を探すだろう。私は年をかさねるにつれて、若干、閉所恐怖症気味になっていった気がする。

ある日、子供達が保育所にいる間に私は荷物をまとめ、夫に

子供達をよろしく、私のことは忘れてちょうだい

という手紙を残して、小さな車に乗り、以前一度だけ行ったことがあった町に向かった。
それほど所持金はなかったが、数日過ごせる場所があれば、仕事と住む場所は探せるのではないかと思った。

最初の夜、興奮と罪悪感が入り交じって、あまり眠れなかった。
とんでもないことをしてしまった、戻る場所はないのだという恐れと、これから新しい人生を切り開きたい気持ち。

翌朝、私はサンドイッチを買って公園のベンチに座り、最後の一口をアヒルにあげていたとき、
ふと隣にいつのまにか男性が座っているのに気づいた。
彼は年をとっていて、白髪で、とても優しい顔立ちをしていた。

彼は私になにが起きたのかを尋ね、それに対して私はなぜか全てを話していた。彼はとても信頼できる感じがしたのは確かだが、私は初めて会った人に秘密を話すような人間ではないのだけど。

彼は私の話を聞き、これからどうするつもりかと聞いた。彼はけして私をジャッジせず、私の行いが間違っているとも言わなかった。
私は話しながら、自分が大きな決断をしたことを、まるで彼に自慢をしているように思えた。

けれど、得意になって話すほどに、私はどんどん自分が愚かに思えてきた。
彼の目に映った自分を見て、私がどんなに自分勝手であるかに気付き、同時に、私がしたことは、子供達の成長した姿を見ることができないということなのだ、ということに今さら気付いた。


最後に彼が言ったことを、鮮明に覚えている。



あなたがどこへ逃げようとも、あなた自身から逃げることはできないのだよ。
そして、決断を変えるのに遅すぎるということはないのだよ。


そう言って彼は私の手を握り、私の目をじっと見つめた。その時、私は彼が天使だとわかった。彼の目には何かがあった、それは古くからの叡知のようなもの。彼が私に触れたとき、私は全てを一瞬にして垣間見たような気がした。うまく説明できないけど。


私は宿に戻り、壁に向かって1時間ほども座っていた。そして自分がしたこと、感じてきたことを何度も何度も繰り返し考えた。
このまま新しい人生を生きることもできる。しかし彼が言ったように、私はそれでも同じ人間であり、生涯後悔とともに生きることになる。

私は荷物をまとめ、家を目指した。
私は恐れにおののいていた。もう遅すぎるのではないか、夫は怒って私を迎えいれないのではないか、それだけのことを私はしてしまったのではないか。今さらどの顔さげて家に帰るというのか。

家の前に車を止め、恐れのために5分ほど出られずにいた。
勇気を振り絞り、家のドアをあけると、夫は床をはいまわって息子と遊んでいるところだった。
私は夫が怒りまくり、なんてバカげたことやってんだ!と怒鳴るとばかり思っていたが、夫は私に駆け寄り、どんなに心配したか、どんなに私を愛しているかと言った。
それは私が一番ほしかったことだった。

一瞬にして全てが好転したというわけではないが、あれは確かに大きな転機だった。
破綻寸前だった私たちの結婚は、互いに歩みより、理解しようと努め、正直になることで改善されていった。

毎日、私は子供達と過ごし、あの時出ていかずによかったと心から思う。
あんなことをした私でも、子供達にとっては大事な母なのだ。
今でも私は最高に愚かな決断をし、そして最高に正しい決断をしたと思っている。







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