夜、テレビをみていたら、猫が2匹で走り回っている気配がする。
うちの3匹の猫は、チーズケーキのボーイとガールが10歳、コーちゃんが3歳。
追いかけっこをしたりレスリングで遊ぶのは、ボーイとコーちゃんで、ガールは「猫と遊ぶなんてまっぴら」というタイプ。
階段を駆け上がったり下りたりしていると思ったら、ボーイが何かを手で弾きながらこちらに走ってきた。
我が家ではサッカーボールと呼んでいるオモチャがあり、食べ終えたおせんべいの小さな袋を三角に折ったものが、弾くと床の上でよく滑ってボールのようになる。
それで遊んでいるのだな、と思ってふと見ると、おもちゃが黒い。
その黒いものは猫に弾き飛ばされて部屋の角まで滑っていった。
黒いサッカーボールなんて作ったかいな?
その次の瞬間、私はそれが何かわかってしまった。
近づかずともわかる。
それは せせらぎ であった。
(注)Gのつく虫のことを、名前を書きたくないので、伊坂幸太郎氏の小説より拝借して せせらぎ と呼んでいる。
昇天したせせらぎが、ひっくり返っている。
大きさは中の下ぐらい。
すかさず夫を呼ぶ。
素手で取ろうとする夫に、ペーパータオルを投げつける。
せせらぎもコオロギも同じだという認識の人と暮らすのは、油断ならぬ。
「猫パンチでやっつけたの、偉かったねえ」
おもちゃを取り上げられて不満顔の猫に、夫が話しかけている。
私は心臓バクバクさせながら、それを見ていた。