Carmel reilly 「With angels beside us」より
Ben 42
3年前、僕は夢にまでみた素晴らしい仕事に就いた。
その前の仕事がとてもストレスが多く、僕は酒を飲みすぎていた。それはもう癖のようなもので、緊張したりストレスがたまると酒を飲まずにそれを紛らわすことができなくなっていた。
新しい仕事が明日から始まる、という日の夜8時、僕は緊張をほぐすために2,3杯飲むつもりで地元のバーに行った。
案の定というか2時間後、僕はまだそのバーにいて、さらに飲み続けていた。僕はその場にいた人たちに、僕がどんな素晴らしい仕事を得たかを自慢し、彼らが祝杯といっておごってくれるのを楽しんでいた。
もう1杯頼もうとしていると、男性がやってきて僕の隣に座った。
彼は僕の就職を祝う言葉を述べ、いつから始まるのかと尋ねた。
僕が明日からだと言うと、彼は僕の手から酒のグラスを取り上げ、もう家に帰ったほうがいいと言った。
もしほかのだれかが同じことをしたとしたら、僕は言い返して口論になっていただろうけど、彼には何か有無を言わせない威厳があった。
彼は、家まで一緒に歩いて帰ろうと言い、僕は渋々了承した。
僕は酒のグラスを置いて、彼に続いて店を出た。
歩きながら彼は言った。
新しい仕事の初日というのは、人生においても最も大事な日のひとつなのだから、それを二日酔いで潰してしまうつもりかい、と。
これは説教だったが、その時の僕には誰かの説教が必要だった。
彼は続けて言った。
明日、たくさんの同僚や上司たちの前で自己紹介をすることになったとき、二日酔いだったとしたらどうなるか考えてごらん。
僕は、きっと手が震えて冷や汗をかき、青ざめてしまうだろうと認めないわけにいかなかった。
彼は、それがわかっているなら今すぐ家に入って、できるだけたくさん水を飲むんだね、と言った。
この時点で、僕たちは家の外にいた。
僕は彼と握手をし、お礼を言って、彼のいうとおりにたくさん水を飲み、アスピリンと、トーストを1枚焼いて食べ、ベッドに入った。
翌朝、目が覚めた時、ちょっと頭がふらつく感じがしたが、思ったよりは大丈夫だった。
あれ以上飲んでいたら、完全にひどい二日酔いになっていたと思う。
そして僕はその日、あの親切という以上の見知らぬ男性が’言ったことが、まさに現実になったと知る。
会社につくと、僕が働くオフィスを見せられたあと、熱いコーヒーをもらい、すぐに会議に呼び出された。
行ってみると、そこには会社の主だった人々が勢ぞろいしていた。
初日にその大事な会議に出席するということを、僕に前もって知らせるのを忘れていたという。
僕はその上司たちの前で、立って、自己紹介をするように促された。
そりゃあもう緊張しまくったけど、なんとかうまくできた。
それからも仕事は順調にいっているし、酒の量もぐっと減った。
大事な初日を二日酔いで台無しにしなくて済んで、僕は本当にラッキーだったと思う。
あの時、見知らぬ男性が話した通りのことが初日に起きたというのは、単なる偶然であろうか。
地元のバーでは、ほぼ全員が顔見知りといっていいのに、あれ以来、あの男性を見かけたことはない。
僕は、彼が通りすがりの親切な人というよりも、天使だったと思いたい。
感謝してもしきれないことを、彼はしてくれたのだ。