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群馬の田舎から情報発信!

『隠蔽捜査』(今野 敏)

2009-04-16 20:23:00 | 読書日記
 竜崎伸也は、警察官僚である。現在は警察庁長官官房でマスコミ対策を担っている。その朴念仁ぶりに、周囲は“変人”という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決してゆく。

 警察組織を中心とした捜査小説かと思い読み始めましたが、全く違いました。捜査小説というより、一人の男・仕事人(ビジネスマンとも言える)の生き方・生き様を描いた作品です。

 「知っているか?おまえは、俺たちがやるべきことを必ず役割とか役目と言う。決して仕事とは言わないんだ」

 「おまえにとって、警察の仕事はただの仕事じゃないんだ。きっと天に与えられた役割か何かだと思っているんだろう。」
 「そんな大げさなもんじゃないさ。ただ、金を稼ぐだめの手段でないことはたしかが。大切な使命を帯びている、官僚ってのはそういうものだろう。」

 強烈なエリート意識と使命感。
 鼻もちならない人間であるが、国家の土台を支える人間としては、これだけの使命感ある人間が必要なのかもしれない。

 その個性を包み込んで、活かしきる度量が組織にあるかどうかが重要であるが・・・。

 広くビジネスマンに読んでもらいたい作品です。

『川は静かに流れ』(ジョン・ハート)

2009-04-16 20:09:25 | 読書日記
 「僕という人間を形作った出来事はすべてその川の近くで起こった。川が見える場所で母を失い、川のほとりで恋に落ちた。父に家から追い出された日の、川のにおいすら覚えている」殺人の濡れ衣を着せられ故郷を追われたアダム。苦境に陥った親友のために数年ぶりに川辺の町に戻ったが、待ち受けていたのは自分を勘当した父、不機嫌な昔の恋人、そして新たなる殺人事件だった。

 アメリカの田舎の風景が、目に浮かぶ、ゆっくりとした語り口。
 ミステリー色もあるが、家族の絆について、じんわりと描いた作品です。

 生まれ育った狭い空間。そこで起こった悲劇。故郷を一時的に離れながらも、いつも心にある風景。
 
 一度故郷を離れると、より故郷の素晴らしさが分かるのかもしれません。そして家族の素晴らしさも・・・。

 田舎では時の流れが都会よりゆっくりしているように見える。しかし、それでも時は流れているのである。
 人間なんてちっぽけなものと思わせるような大きなうなりの中でも、確実に時は流れている。

 人の心も常に動いている。そんな中だからこそ、いつでも帰ることができる家族がいるということ。その素晴らしさを改めて感じさせてくれました。