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『代行返上』(幸田真音)

2007-10-15 20:23:18 | 読書日記
 経済は日々動いていているので、経済小説に普遍性を持たせるのは難しい。今が旬の話題でも、一年後には結果が見えていたりして、面白味が無くなってしまうものもある。

 この小説が書かれたのは2003年。年金の未納問題が起きていた頃である。しかし、ここで提起されている問題は、現在でも大きな問題としてクローズアップされているものがある。例えば、社会保険庁のデータが紛失してしまい、支給漏れが発生してしまう問題など。それだけに、幸田氏の問題意識の鋭さ、先を見越す力が現われた作品だと思います。

 年金というと、支給を受ける仕組みも複雑で個人では難しいが、年金資金の運用までいくととても理解できない。果たして、日本に年金の全体像を正確に理解している人が何人くらいいるのだろうか。あまりにも複雑怪奇な制度を作ってしまったために、一般の人は漠然とした不安を抱え、極端な選挙の投票行動にまででてしまうのではないでしょうか。

 「代行返上」というテーマでこの作品は書かれているが、その事象だけにとらわれず、現在の年金制度の問題点をも分かりやすく提起してくれています。

 年金資金の運用場面や外資の行動などは、先に読んだ「ハゲタカ」の方が詳しく、臨場感がありますが、「年金」という取っ付きにくい題材を楽しく学ばせてくれるという珍しさは、一読の価値があります。