伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

科学者と戦争

2017-02-10 23:06:16 | 人文・社会科学系
 軍事研究の歴史を概観し、戦後、日本学術会議や大学レベルで「戦争を目的とする科学の研究には絶対に従わない決意の表明」(1950年、日本学術会議第6回総会)など軍事研究を拒否する平和路線を標榜した日本の科学者たちが、近年、軍事利用と民生利用ともに可能な「デュアルユース」を口実に米軍やその傘下の研究所、防衛省などの資金を受けて研究を行い、軍楽共同が進展している様子を報じた本。
 研究者が、研究を続けるために研究費を獲得することが必要で、大学の教授らの仕事のかなりの部分が研究費の獲得(パトロンの発掘)に費やされている/かかっているという実情からは、平和で民主的な研究の予算/研究費をどう確保するかが、科学者が軍事研究を拒否し続ける基礎となります。科技庁の研究予算の多くが原子力研究に注ぎ込まれる中では原子力研究/原子力推進が学会のメインストリームとなり、ソフトエネルギー研究が進まないように。研究費が確保できなくても志を捨てるな(武士は食わねど高楊枝)というのも、わかるけれども、何とかできないものかなぁと思います(懐を潤してくれるパトロンもない/楽に稼げる事件もないのに、貧しい人々が正義を貫けるように頑張れ、と期待を寄せられる/叱咤される身には、他人事に思えなくて…)
 米軍から日本の大学やNPOに2008年から2016年の9年間に8億8000万円の研究費がばらまかれていたことが報じられている(朝日新聞では2017年2月9日朝刊)今、流れを知り考えるのにタイムリーな本だと思います。


池内了 岩波新書 2016年6月21日発行
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