伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

プライドの社会学

2013-05-19 19:11:07 | 人文・社会科学系
 社会学者である著者によるプライドをキーワードにした社会学的考察ないしは雑談的エッセイを編集した本。
 「はじめに」で「本書はプライドに関する社会学的考察を試みるものである」(10ページ)と述べ、自己、家族、地域、階級、容姿、学歴、教養、宗教、職業、国家の10章構成となっていますが、論理の連なりはなく、話の流れとしても、各章の最後に次の章への導入的(というよりは接続をつけるだけの)1節が置かれているだけで、章内の各節がまったくバラバラでつながりがなく、各節も最初からプライドをテーマにしているものもあるけれども最後に取って付けたようにプライドに結びつけたものもあり、読んだ感じとしては短編集とさえ感じにくく、エッセイ集のイメージです。そのことについて著者は「おわりに」で「極端に言えば本書が、六十のまとまりのない話から構成されている」「もはや開き直ってわたしはこう言いたい。何もパブロフの犬のように、学問的な記述=首尾一貫した体系的な記述と決めてかかることはない、と」と述べています(232~233ページ)。「極端に言えば」というよりもふつうに読めば、だと思いますし、それで勝負したいなら「終わりに」じゃなくて「はじめに」でそう宣言しておいて欲しいなと、読者としては思います。そういう試みを好ましく思う読者もいるでしょうけれど、「学」の名を前提に読み始めて、そのイメージに反する論理展開がぶつ切れの散漫な文章を、最後まで読み続けるのは、私にはけっこうな苦痛でした。
 それぞれの考察ないしエッセイ自体は、特殊な学問用語が使われず映画や小説を題材にしたものが多く親しみやすい工夫がなされていると感じられます。そういう意味で、タイトルをもっと柔らかくして、これはプライドをくくりにしたエッセイ集だと最初に書いていれば、もっと素直に読めたかなと思います。


奥井智之 筑摩書房 2013年4月15日発行
コメント
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