伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

西の魔女が死んだ

2008-07-05 21:57:32 | 小説
 不登校の中1少女まいが西の田舎で暮らすイギリス人祖母の元で田舎暮らしをしながら立ち直るハートウォーミング系の青春小説。以前読みましたが、映画化されたので再読しました。
 祖父が死んで1人で山の中で暮らすイギリス人祖母という、少し異界の雰囲気の中で、昔の生きるための自然に対する知識を持つ「魔女」の存在と予知のエピソードを使いながら、まいの心を巧く解きほぐしていくおばあちゃんの知恵と、それに乗せられながらいつかそれに気づくまいの成長のやりとりが読みどころです。魔女は、自分で決める、決めたことを実行する、外からの刺激に動揺しない(心から聞きたいと願った以外の不思議な体験は無視すべき)・・・たぶん同じことを親から言われても聞く耳持たないことでも、このシチュエーションで聞かせてしまうところなんですね。「おばあちゃんはいつもわたしに自分で決めろって言うけれど、わたし、何だかいつもおばあちゃんの思う方向にうまく誘導されているような気がする」という終盤のまいの台詞とあらぬ方向を見つめてとぼけるおばあちゃん。ここが一番巧い気がします。
 イギリス人女性、それも元英語教師に「女の人は家にいて家庭を守るべきだ」という考え方をさせ、結局、母が仕事を辞めて親子3人父親とともに暮らすという解決策に進むあたりが、保守的な価値観を体現していて(まぁ母親の抵抗も描いてはいますが)、ちょっと違和感が残ります。


梨木香歩 小学館 1996年4月20日発行
(最初は楡出版1994年、現在は新潮文庫)
児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、小学館文学賞
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