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三河・大沼城の取手 諸国古城之図に描かれた「取手」を訪ねる

2021-02-22 | 歴史

大沼城は愛知県豊田市大沼町にあります。大沼城は過日のブログでも取り上げて、水源地から城内への導水路がある城郭として紹介しました。同時に諸国古城之図に描かれた、大沼城の中心となる城郭遺構から北東約300mの山上にある諸国古城之図に描かれている「取手」の見学もしましたので紹介します。
 大沼城は戦国期以前に築かれた城で、山下の街道を扼す位置にあり、下図のⅨに居館があったとされます。大沼城の南方には代官屋敷や代官屋敷城がありますが、こちらは戦国期に築かれたとされます。いずれも武田軍の三河侵攻で落城したと伝わります。今回の資料は「愛知の山城ベスト50を歩く」です。
 ※過日のブログ 三河・大沼城 城内への導水路が絵図に載る珍しい山城


大沼城の取手 何本かの街道が交わる大沼地区は重要な地点であった
 大沼城は遺構がしっかり残る中規模の山城ですが、取手は小規模だったようですので、見張台または狼煙場の役割が考えられそうです。


大沼城の取手 Ⅴ郭から尾根筋を北に向かい、途中で北東に折れる 尾根に踏跡はない
 Ⅰ~Ⅸは曲輪で、現在は3本の道があります。Ⅸ郭が屋敷地だったとすれば、中央の道が王手道だった可能性がありそうですね。洞樹院が城主の菩提寺とされますのでⅨ~洞樹院への道と道Bは往時もあったと思われます。Cの道は、現在Ⅴ郭に祀られた祠への参道になっていますので、ヒョットすると後世の道かもしれません。


大沼城の取手 Ⅴ郭に祀られる お犬さま
 Ⅴ郭にはお犬さまが祀られていますが、火事除けで明治の頃に勧請されたようですので、往時は在りませんでした。お犬さまの参道だとすれば参道Cは往時にはなかったかも知れないと思いました。


大沼城の取手 Ⅴ郭 西辺と北辺の逆L字型土塁 南から 瓦は祠に使われていた?

 Ⅴ郭は祠の建立のために改変を受けているように思いますが、西辺と北辺に逆L字型に土塁が一部残っていました。Ⅴ郭には瓦が多数ありましたが、お犬さまの祠の屋根に使われていたものではないかと想像しました。現在の祠はトタン屋根にブロック積みの壁でしたが、明治の創建当時は立派な祠だったのではないでしょうか。


大沼城の取手 尾根筋の道Aを辿ると「取手」が見えてくる
 Ⅴ郭から北尾根が伸びています。尾根道にハッキリした踏跡は見えませんが、尾根道の先に取手が在りました。取手は一段と高くなった地形でした。周辺の山林は植林したままで、間伐が行われていないですね、おかげで?歩きやすい尾根道でした。


大沼城の取手 取手は最高所にあり、石積の平場がある
 最高所には石積で造り出した平場がありました。宗教施設でもあったのかと思わせる雰囲気の場所でした。


大沼城の取手 平場の一角にあるサイレン 現役?
 取手の平場の一角にはサイレン塔が立っていました。見た限りでは、サイレン塔建設のために平場を造ったようではありませんでした。サイレンが現役かどうかを確かめてはいませんが、見学中に鳴りだしたら驚いて飛び上がることでしょうね。
 

大沼城の取手 最高所の平場の一辺には大岩群がある  写真左奥にサイレン塔
 元々あった岩か、平場を造り出すときに移動したのか、はっきりわかりませんでしたが、取手または宗教施設と何らかの関連があるような大岩群でした。


大沼城の取手 大岩の反対側には一段下がって腰曲輪状の地形がある 奥に最高所の平場
 最高所の平場から一段下がった、北風の陰になる位置に腰曲輪状の地形がありました。往時から在ったとすれば、最高所の平場に見張り櫓があり、取手の小屋がこの場所にあったと想像してみましたがどうでしょう。

大沼城は、遺構の残りが良く、導水路や取手などの興味深い遺構もあわせて見学することができる面白い山城で、大満足の見学となりました。