Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

『哲研』⇒大学時代の研究会に参加♪

大学時代、『哲研(哲学研究会)』というサークルに入っていた。心理学専門のS教授と心理カウンセラーのM先生を代表に、絶滅寸前のマニアックな学生たちが集まって、細々と続けられた(そして、現在も続けられている)。

S教授は、現在の心理学(アメリカ中心の心理学=因果論的発想)を厳しく批判していて、ディルタイ、ニーチェ、ハイデッガーといったヨーロッパの観念論的発想の重要性を説く先生で、現在77歳にして今なおクリティークの精神をお持ちの教授だ。(*といいつつ、この先生は心理統計・実証研究の第一人者であり、因果論的研究をずっと地道にし続けてこられた方でもある)

『哲研』は、哲学研究ではあるものの、心理学(人間の心の科学)の新たなパースペクティブを模索する集まりでもあった。人間の個々の知覚ではなく、生きる主体としての人間をどのように記述するのか。S-R(刺激-反応)に基づく理論ではなく、世界の認識に基づく理論をどのように構築するのか。われわれ人間の心を、どのように説明するのか、ではなく、どのように理解するのか。そういったあてどない問題をとりとめもなく考える学びの場であった。

また、心理カウンセラーのM先生の存在も大きい。理論に偏った議論ではなく、生の人間にかかわる学問のための議論を!という視点を常に与え続けてくれる(このM先生には、悩める学生時代のKeiはとてもお世話になった)。集まったメンバーも様々。母校出身の現大学院生や同時代の社会人の仲間たち。懐かしい顔ぶれから新しい顔ぶれまで、色んな人たちが集った。

久々に、学生時代の自分に戻れた気がした。そして、自分の原点を見た気がした。大学機関の教員となって4年目に入る。自分の原点は何だったのか。自分が今すべきことは何か。自分は何を主に置かねばならないのか。そういった問題と向かい合う一日となった。

ボクの原点は、やっぱり『ココロ』なのだ。「ま」を付ければ「まごころ」。「み」を付ければ「みこころ」。心理学は、そういう『ココロ』を解明してはくれない。(現行の)教育学も、『ココロ』の問題を、表面上は取り上げつつも、本質のところでは阻害している(ような気がする)。社会福祉学は、さらに重症で、『ココロ』の問題以前のところで右往左往しているように見える。小手先の技術じゃなく、深い洞察による人と人との交わりについては、全く触れようとはしていない。

でも、ボクが本当に知りたいのは、『他者を思いやるココロ』の条件だったり、うわべではない真のやさしさや強さや慈悲のココロのあり様だったりするのだ。人間がその人らしく生きていくための条件と言ってもいい。「KY(空気読め)」といった集団心理はますます強くなりつつある。人間個人はますます阻害されていく。巨大なシステムに飲み込まれていく。搾取されていく。自由から逃走していく。残るのは諦めと脱力感。人間に対する不信感や嫌悪。最も生活の基盤となるはずの「家族」の齟齬や軋轢。身勝手な利己主義。公共の福祉をシカトした私利私欲まみれの産業社会。誰もそんな社会を望んでいないのに、そうならざるを得ない悲しい現実。そんな現実の中で、それでも生きていかなければならない自分自身。

そういう『初期衝動』は、日々の喧騒の中で、なかなか顕在化されなくなってきていた。でも、ボクが研究者になろうと思ったのは、そういう社会の矛盾を少しでもアウフヘーベン(止揚)したいと思ったからだ。青臭い理想であることは十分に分かっているつもりだ。けれど、そういう理想なくして、真の研究などあるわけがない。学生時代に抱いた「問題意識」はしっかり保持していかなければならない。

そんなことを考えさせられた一日でした。自分を見つめなおすいいきっかけになりました。


(哲研が行われた六本木!)

コメント一覧

kei
Mさん!

コメントありがとうございます! こんなつたない文章にコメントをいただき、恐縮です~

久々の哲研、やっぱいいなあ~って思いました。また、MさんやS先生が哲研を続けてくださっていることにも驚き、というか、感動してしまいました。

また是非参加させていただければ、と願っています。
M
初投稿
Mです。ブログに投稿するのは初めてです。
「KY!」と言われるかもしれないなあと恐れつつ、感想を伝えたくて書いています。
『哲研』のお話、すごくエキサイティングに読みました。Keiさんにかかると、哲研というなにげない土は、実は芳醇な土壌であったのだと気づかされます。掘り起こしてくれてありがとう。これって、ひとつの教育学的かかわりのような気がしました。
今後も読ませていただきますね。
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