Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

『継続力』~恋愛のキメテ~

今年も、講義で『恋愛論』を語っている。
恋愛論は、人間論でもあり、ケア論でもあり、哲学でもある。
(エロスについて真面目に語る哲学者もいる)

恋愛の極意とは何か?
これは僕の根本的な問いであり、
教育や福祉や心理にかかわる実践的な問いの根源である。

「愛する」とはどういうことか?

これについても、このブログでたくさん書いてきた。
愛するということの意味を探るのは、このブログのテーマでもある。

今年の講義をもって、一つ強調したいことができた。それは、

何かを継続して続けている人は、
人を愛する能力も高い、

というシンプルな事実だ。

何でもいい。ピアノでも、テニスでも、野球でも、サッカーでも、
料理でも、趣味でも、何でも。

最低限10年以上。

何かを継続して、ずっと一つのことをやり続けている人は、
人を愛することにも長けている。

もちろん、何かを継続している人すべてが、
愛することに長けているとは思わない。
だけど、例えばプロ野球の選手たちの離婚話ってあまり聞かないし、
何かをし続けている人は、うわついた感じがしない。

愛するということは、いわば「愛し続けること」に等しい。
過去形にならないのが、愛するという行為である。
(「愛した」というのは、文法的にはありえても、本質的にはありえない)

恋愛が不得意な人や、すぐに別れてしまう人は、
実は別のものも長続きしない、という特徴をもっているのではないか?

何でもすぐにとびついては辞めてしまう人は、
恋愛生活においても、同じようにすぐに恋愛を止めてしまう。
普段から継続する力を養っていないと、恋愛においてもすぐに破綻してしまう。

これを、フロムは「集中」と「忍耐」という言葉で表している。

集中するとは、いまここで、全身で現在を生きることである。いま何かをやっているあいだは、次にやることを考えない。いうまでもなく、いちばん集中力を身につけなければならないのは、愛しあっている者たちだ。ふつう、二人はさまざまな方法でたがいから逃げようとするが、そうではなく、しっかりとそばにいることを学ばなければならない。集中力を身につけるための修練は、最初のうちはひじょうにむずかしい。目的を達成できないのではないかという気分になる。いうまでもないことだが、忍耐力が必要となる。何事にも潮時があるということを知らず、やみくもに事を急ごうとすると、集中力も、また愛する能力も、絶対に身につかない。(pp.170-171)

こう言ってしまうと、なんだか大変そうに思うが、
フロムの意見をそのまま信じなくてもいい。
ただ、愛するということは、「長期戦」であることは間違いなく、
そのためには、「固有な能力」が必要だ、ということは理解しておきたい。

恋に落ちることは、誰にでもできるし、
相手がいれば、紙切れ一枚で結婚もできる。

けれど、その相手と長きにわたって愛をはぐくむことは、
誰にでもできるわけではない。
fall in loveは誰にでもできるが、
loveそのものは誰にでもできるわけではない行為なのだ。
fall in loveは本能、感覚に属し、loveは知性や理性に関わる、
と言ってもいいかもしれない。

愛する能力は、人間の自然(本能、本性)ではない。
愛する能力は、学ばなければならないし、修練しなければならない。
フロムは、そういう意味で、愛は技術だ、と言ったのだ。

その技術は、まさに「継続力」と言い表せるのではないか。
僕はそう考えている。

何を続けるかは問題ではなく、続けられているかどうかが重要なのだ。
それは、一人ひとり、自分の胸に手を当てて問えばよい。
「自分は、途中で投げ出さずに、何かを持続して続けているだろうか」、と。

何かを長期的に持続して継続している人間は強い。
何かを始めれば、絶対に嫌なことに遭遇するし、
伸び悩みやスランプや嫌悪やマンネリを経験する。
テンションが下がることもあれば、心底嫌になることもある。

それでも、継続する人は、それを超える。
超えるというか、それを克服する。
そして、その向こう側へと一歩足を踏み入れる。

恋愛も同じだ。
始めるのはとても簡単なことだが、
それを始めれば、すぐに飽きやマンネリやスランプに陥る。
(3ヶ月で恋愛が破綻するケースが多い、というのもこの一例だろう)

そこで、見切りをつけて、ピリオドを打つか、
それともそれでも、ピリオドを打たずにその先に向かうか。
それは、その人の生き方や考え方や捉え方次第だ、ということになる。

恋愛における試練を乗り越えられるかどうかは、
やはりその人の「継続力」次第なのではないだろうか。

人間は、神ではないので、不完全な存在だ。
もちろんよいところもあれば悪いところもある。
それが見えてきたときに、すぐに見切りをつけないで、
もっとつっこんで相手のことを知る努力ができるかどうか。
(もちろん、本当にダメな相手なら話は別だが、
わずか短期間でそれを見抜くことは不可能に近いはず!)

本当に自分に合うパートナーかどうかを見極めるためにも、
早計な判断や思い込みは避けるべきだ。

「継続は力なり」ということわざがあるが、
まさに、恋愛においては、「継続こそ力なり」、だ。

PS
語学の世界、音楽の世界、食の世界、研究の世界を生きてきて、
僕は、本当に「継続」の大切さを実感している。

音楽の世界を愛して、早20年。
バンドは途切れ途切れだけれど、音楽から離れたことはない。
作詞作曲は自分のライフワークそのものになっている。
かつては、たくさんの仲間が音楽をやっていたけれど、
たくさんの人が音楽をするのをやめてしまった。

語学も同じで、始める人は多いが、みんなやめてしまう。
語学は通常10年はやらないとその出発点にも立てないのに・・・
ホント、語学は自分の継続力を鍛えてくれると思う。
壁を越えれば、ものすごい世界が待っているのに・・・
(僕もまだドイツ語歴14年。全然まだまだ!)

ブログもそうかも。
始めるのは簡単だけど、続けるということは本当にたいへん。
毎日書き続ける、って本当に難しいし、しんどい。
でも、続けることで見えてくることはたくさんあるし、
続けることで味わえる感動というのもいっぱいある。
(ブログはまだ5年目。序の口序の口~)

続けることの大切さをホント実感する。。。
(本当は、僕自身は非常に飽きっぽいんだけど、、、)

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