金融そして時々山

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エンゲージメントという投資指標

2013年10月28日 | 社会・経済

エンゲージメントengagementという言葉は使われる文脈によって意味が異なる。例えばエンゲージリングというと婚約指輪。ここでは大雑把にいうと「会社に対する愛着心」という意味で使う。

ギャラップ調査を見ていると中国人のエンゲージメントの低さに関する記事があった。

エンゲージメントの図る一つのプロキシーとして「あなたの仕事はあなたにとって理想的かどうか」という質問がアジア諸国の従業員になされた統計結果を見ると、1位がフィリピンで86%、2位ラオスが80%、3位マレーシアが79%、以下カンボジア78%、インドネシア73%、タイ72%、シンガポール71%と続き、日本は調査対象13カ国中9位で65%。中国は12番めで57%、韓国は55%だった。概ね東南アジア諸国のエンゲージメントが高く、北アジア諸国のエンゲージメントが低いという調査結果だった。

エンゲージメントそのものに関する調査では、中国のエンゲージな、平たくいうと今の仕事や会社に対する愛着心のある従業員は6%、愛着心のない社員が68%、会社に敵対的な社員が26%だった。エンゲージメントな社員の低さでは中国は世界トップレベルだ。

ギャラップ社のCEOのブログによると中国の勤務環境は軍隊的な「命令・統制」システムと性格付けされ、管理職は部下をエンカレッジする能力の高さで選ばれているわけではない。

会社や仕事に対する愛着心の高い人間は、快活でストレスの少ない生活を送っていることが調査結果で明らかだ。

ギャラップの調査によると、「昨日沢山笑ったか?」という質問に会社に愛着心のある社員の89%がイエス、そうでない社員の81%がイエス、敵対的な社員の68%がイエスと答えた。

「昨日ストレスを感じたか?」という質問に愛着心のある社員は29%がイエス、そうでない社員の39%がイエス、敵対的社員では49%がイエスと答えた。

仕事に満足していない社員や積極的に職場に敵意を持っている社員が多い社会はストレスフルでかつ当然生産性が低い。

中国経済をこれまで牽引してきたのは設備投資と輸出だった。だがこれからは内需を拡大していかないと持続的な経済成長は望めない。内需を拡大するには、巨大な中国の消費人口の動向を的確に把握し、適切な商品を投入したり、中国ブランドに対する信頼感を高め、ブランド・ロイヤリティを向上させる必要がある。これらの仕事は相当「創造的」でエンゲージな社員が多くいないとこなすことはできない。

中国や韓国から日本に対する不協和音が聞こえることが増えているが、愛社精神の高い社員が少なく、会社に敵対的な社員が多いという企業の構造的問題が影響を与えている面がありそうだ。ギャラップの調査によると、中国では会社に敵対的な社員の20%が「昨日怒りをおぼえたか?」という質問に対しイエスと答えたが、愛社精神の高い社員では11%がイエスと答えたのにとどまった。

設備投資・輸出主導時代は効率的な企業の組織形態だった「命令・統制システム」が、内需主導への転換の足かせになっているということは投資の観点からも要注意。フィリッピンなどのエンゲージメントの高さは注目して良いと思う。

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