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山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

オリンパスの撤退も「消費者選択減少」の流れの一環か?

2020年06月28日 | 社会・経済

コロナウイルス感染拡大は、社会や経済のトレンドを変えつつある。

例えば過去数十年にわたり、企業は商品の細分化を図ることで消費者の細かなニーズをくみ取ろうとしてきた。

だがコロナウイルス感染拡大はこのトレンドを変えつつある。WSJはWhy the American consumer has fewer choices-maybe for good「なぜアメリカの消費者は購入商品の選択肢が少なくなったのかーおそらく永久に」という記事で、今米国の消費市場に起きている現象を説明していた。

たとえばIGAというスーパーマーケットでは数カ月前には40種類もあったトイレットペーパーを4種類に絞っている。

商品の種類を絞った直接の原因は、3月に起きたパニック的な買い漁りだった。店舗の棚から商品が消え、スーパーマーケットは商品の補充に苦労し、アイテム数を減らすことにしたのだ。

商品の種類を減らす動きは各方面ででている。Outbackというステーキハウスはメニューの約4割を削った。調査会社ニールセンによると6月13日までの4週間の間にスーパーマーケットは平均7.3%商品数を減らしている。

これは過去に商品数を増やし過ぎた反動でもあるだろう。1975年に米国のスーパーマーケットは平均約9千点の商品を販売していたが、現在では3倍以上の3.3万点の商品を販売している。

日本の小売業・飲食業でも同じようなことは起きているのではないか?と思うが寡聞にして具体的な記事は目にしていない。

ただ先週耳目を集めたオリンパスのカメラ事業からの撤退(投資ファンドへの売却)もこの流れと軌を一にしていると私は判断している。過去数10年にわたってメーカーは、商品の多様化を行うことで消費者の購買意欲を刺激してきた。

それは少量多品種の販売を招き、膨大な部品数の調達・管理が必要になった。だがコロナウイルス感染拡大は、選択的消費財について消費需要の減退と部品の供給難を招いた。

カメラについていうとスマートフォンとの競合も大きい。スマートフォンは一台で電話・メールやSNSの通信・ウエッブサイトの検索など通信機能・支払い決済・静止画や動画の撮影機能など実に多くの役割を果たす。

小型録音機などこれまでにスマートフォンに殺された商品は多いのではないか?と私は考えている。そして今回はオリンパスのカメラがその犠牲者に加わった。

そもそもカメラにしても車にしても日本はメーカーが多く、かつ各々のメーカーが似たような商品を出しているので、非常に商品点数の多い国になっている。はっきり言って消費者の選択能力を超えているのではないだろうか?

そんな中で起こったコロナウイルス感染拡大問題。総じて消費力は低下し、選択的消費財(贅沢品と考えて概ね正しい)市場は縮小するはずだ。

注意深く観察しているとレストランや飲み屋でもメニュー数が減っていくかもしれない。いや3密防止で客席数が減っているのだから、メニューやサービスのレベルを減らさないと採算が取れないはずだ、と思う。

商品数で消費者の眼を奪う時代は終わり、本当に消費者が欲しがるものを絞り込んで提供しないと生き残ることができない時代が到来した、と思う。

最後にオリンパスのカメラの愛好家として一言オリンパスを擁護しよう。オリンパスがマイクロフォーサーズという小型で取り回しが良くかつフルサイズに較べると手ごろな値段で一眼カメラを提供してきたことに感謝したい。軽くて防塵防滴性能が高いカメラは山登りの頼りになるパートナーだったことを付け加えておきたい。

 

 

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