私の山登りの一つのテーマは分水嶺を歩くことである。
もっとも山仲間の間でも分水嶺が話題になることは少ない。この前の土曜日(9月23日)から月曜日(9月25日)にかけて、谷川連峰の平標山から谷川岳まで主稜線を縦走したが、仲間にはこれが日本を代表する分水嶺だという意識はあまりなかったようだ。
日本を代表する分水嶺は日本海と太平洋を分けるものだ。写真は万太郎山から谷川岳を見たもので、左側(北側)の谷の水は日本海に流れ、右側(南側)の水は太平洋に流れる。
本州の分水嶺は津軽半島の竜飛岬から始まり、延々と南下し尾瀬を経由して、利根川源流で北上し、巻機山を経由して谷川岳につながっていく。谷川岳からは連峰最高峰の仙ノ倉山を越えて、平標山から三国峠へと続いていく。
分水嶺上の峰々総てに登山道がある訳ではない。尾瀬の至仏山から平が岳に至る部分などは積雪期でないと藪が深く歩けたものではない。
日本の分水嶺を踏破するなどというのは、夢物語のようなものだ。
とはいうものの歩き易い部分もある。谷川岳から平標山などはその代表格だろう。甲武信岳から金峰山にいたる奥秩父の主稜線も比較的歩き易い分水嶺だ。
分水嶺の右と左で顕著に様相が変わるとは限らない。谷川岳主稜線はシンメトリックな尾根で左右とも同じように切れていて、日本海側・太平洋側の違いが出ているとは思われない。
川端康成の小説では「トンネルを抜けるとそこは雪国」なのだが、山の上は冬になると一様に雪国で、大きな樹木の生育を許さない厳しい地形と気象が支配する世界だ。
それでも私は分水嶺を意識して山旅をしたいと思っている。山登りは何かテーマがあると楽しいからだ。