金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ドラマ「半沢直樹」、20年前ならある程度真実かも・・・

2013年09月23日 | テレビ番組

昨日(9月22日)終了したドラマ「半沢直樹」。「ウソっぽい、ウソっぽい」と思いながら、私も最終回を見てしまいました。これはドラマであり、ドラマの元になった小説の話なので、ウソっぽいと文句をいうのは大人気(おとなげ)ありませんが。最終回で一番ウソっぽいな、と思ったのは「取締役会で頭取を行司役として大和田常務と一介の次長の半沢が対決する」という構図です。現在のまともな銀行であれば、仮にこのような疑惑が頭取に知らされると、内部監査部や監査役が事前に動いて取締役に商法や会社の定款に違反があったかどうか入念に調べるでしょう。

また法律で取締役会議事録を作成することが義務付けられていますし、その議事録は金融庁検査でチェックされる非常に重要な書類です。つまり本当に取締役会であのような「対決」があれば「一部始終記録され、次回金融庁検査に提出される」ものですから、背任罪の恐れのある大和田常務を降格処分程度で済ますことはできないと考えるべきでしょう。

もっともブログのタイトルに書いたように「20年前ならある程度真実かも・・・」と書きましたように、企業の内部統制や法令遵守がユルユルだった20年前であれば、ある程度起こり得た話ではないか?という気もしています。もっともその頃の取締役会の実態がどうであったか?ということについは知るすべもありませんが。

あと銀行員のOBとして気になったのは「出向」の扱いですね。ドラマを見ていると「権力抗争に負けたり、あるいは業績が悪いと簡単に出向」になってしまう。恐らく「出向されている」銀行員の方の中には、ドラマのおかげで肩身の狭い思いをされている方がいるのではないかと少し気になります。銀行員の出向には色々な背景や目的がありますが、決してドラマに出てくるような「ムチ」のようなものばかりではないでしょう。銀行で培った経験を色々な出向先で活用し、社会の発展に貢献しようと考えている方も多くいると思います。

話はドラマから離れますが、「出向」というのは本来戻ってくる可能性があるから「出向」なので、戻ってこないのであれば「転籍」です。(転籍含みの「転籍出向」などという言葉もありますが)

格好良くそして少し無責任なことをいうと、同世代の人たちが出向する時期になると、出向ではなく転籍、更にいえば「会社(この場合銀行)に世話にならずに自分で新しい会社を探して転職する」というのが良いな、と思っていました。もっともこれは今いる会社が「割増退職金」を出すなど、ある程度のセーフティネットを提供することとセットで考える話でしょうが。

「出向先から戻りたいから、銀行に対して言いたいことも言えない」という人生はフラストレーションがたまります。もっともフラストレーションを抱える人が多いので半沢直樹の「倍返し」「百倍返し」に溜飲を下げた人が多かったのでしょう。

小説やドラマの役割が人々にカタルシスを提供することにあるとすれば、ドラマ「半沢直樹」は大成功でした。ここはウソっぽいなどというのは、無用の話かもしれません。

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消費税引き上げ関連ニュース雑感

2013年09月23日 | 社会・経済

来年4月からの消費税引き上げ(5%→8%)についてはほぼ決定的で、発表のタイミングは10月1日というのが大方の予想だ。私はかねてから消費税引き上げは財政健全化のためにmustであると主張してきたし、安倍内閣がこのタイミングで引き上げを発表すると判断していたので何のsurpriseもない。消費税引き上げに合わせて、法人税を引き下げるというのも、ほぼ予想していたシナリオの範囲だ。

法人税の引き下げは恐らく復興法人税の1年前倒し廃止という形をとるだろう。自民党の石破幹事長が「2012年の法人税の上振れが7,700億円で13年度はそれ以上。上振れ分で復興法人税の廃止をかばーできる」と述べているので、ほぼきまりではないだろうか?

一方一部には「消費税を引き上げる一方で法人税を引き下げるのでは消費者に説明ができない」という政治家の声がでている。そんな寝ぼけたことをいう政治屋さんにはマクロ経済学を勉強しなおして、キチンと選挙民に説明できるようになって欲しいと思う。国会もお休み中で勉強する時間はあるはずだから。

一方ちょっとしたサプライズは、住民税非課税世帯2400万世帯に一人当たり1万円支給するという政府案。食料品などに軽減税率を導入するまでのつなぎとして補助金を支給するという訳だ。1万円を増税幅3%で割ると33.3万円。つまり軽減税率が導入されるまでの食糧費を33万円と政府は計算したのだろう。

ところでどういう人が住民税非課税対象なのかというと、色々条件があるが、一例をあげると「パートやアルバイトの人で前年度収入が100万円未満の人」や「65歳以上の人の年金収入のみの人で年金収入が155万円以下の人」などだ。その数2400万人つまり国民の約2割の人が税金を払っていない(所得税の最低課税所得はもう少し高いので通常所得税も払っていないだろう)。

国民の2割が直接税を支払っていないというと、ずい分非課税者が多いな、という気がするが、実はアメリカでは5割の人が連邦税を払っていない。アメリカでは所得階層トップ20%の人が53%の所得を得て、67%の所得税を払っている。所得格差の問題は別とすれば、徴税コストの観点からは、所得を高額所得者に集中させてそこから税金を取るという方法が効率的である。

日本ではクロヨンという言葉があった。これは給与所得者の所得は9割捕捉されるが、自営業者では6割、農林水産業では4割という意味だ。これまた税務署が徴税コストや効率の点から給与所得者をターゲットにしたのである。

働き方の多様化や高齢化でサラリーマンを所得税の主な担い手とすることは難しいし、所得税に大きく依存することも難しくなっている。だから消費税の引き上げが求められている。

ところで非課税世帯に給付金を支給するような消費税引き上げ対策に私は基本的には反対である。何故ならこのような方法は「どこで線を引くか」で限界を跨ぐ人々の間で不公平感を招くからだ。つまりほんの僅かでも住民税を払うほどの所得を得たため1万円がもらえない人とほんの僅かので差で住民税を払わず1万円をもらった人の間の公平感の問題である。

生活必要物資である食料品には消費税非課税という対応が本筋なのである。

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