昨日(9月22日)終了したドラマ「半沢直樹」。「ウソっぽい、ウソっぽい」と思いながら、私も最終回を見てしまいました。これはドラマであり、ドラマの元になった小説の話なので、ウソっぽいと文句をいうのは大人気(おとなげ)ありませんが。最終回で一番ウソっぽいな、と思ったのは「取締役会で頭取を行司役として大和田常務と一介の次長の半沢が対決する」という構図です。現在のまともな銀行であれば、仮にこのような疑惑が頭取に知らされると、内部監査部や監査役が事前に動いて取締役に商法や会社の定款に違反があったかどうか入念に調べるでしょう。
また法律で取締役会議事録を作成することが義務付けられていますし、その議事録は金融庁検査でチェックされる非常に重要な書類です。つまり本当に取締役会であのような「対決」があれば「一部始終記録され、次回金融庁検査に提出される」ものですから、背任罪の恐れのある大和田常務を降格処分程度で済ますことはできないと考えるべきでしょう。
もっともブログのタイトルに書いたように「20年前ならある程度真実かも・・・」と書きましたように、企業の内部統制や法令遵守がユルユルだった20年前であれば、ある程度起こり得た話ではないか?という気もしています。もっともその頃の取締役会の実態がどうであったか?ということについは知るすべもありませんが。
あと銀行員のOBとして気になったのは「出向」の扱いですね。ドラマを見ていると「権力抗争に負けたり、あるいは業績が悪いと簡単に出向」になってしまう。恐らく「出向されている」銀行員の方の中には、ドラマのおかげで肩身の狭い思いをされている方がいるのではないかと少し気になります。銀行員の出向には色々な背景や目的がありますが、決してドラマに出てくるような「ムチ」のようなものばかりではないでしょう。銀行で培った経験を色々な出向先で活用し、社会の発展に貢献しようと考えている方も多くいると思います。
話はドラマから離れますが、「出向」というのは本来戻ってくる可能性があるから「出向」なので、戻ってこないのであれば「転籍」です。(転籍含みの「転籍出向」などという言葉もありますが)
格好良くそして少し無責任なことをいうと、同世代の人たちが出向する時期になると、出向ではなく転籍、更にいえば「会社(この場合銀行)に世話にならずに自分で新しい会社を探して転職する」というのが良いな、と思っていました。もっともこれは今いる会社が「割増退職金」を出すなど、ある程度のセーフティネットを提供することとセットで考える話でしょうが。
「出向先から戻りたいから、銀行に対して言いたいことも言えない」という人生はフラストレーションがたまります。もっともフラストレーションを抱える人が多いので半沢直樹の「倍返し」「百倍返し」に溜飲を下げた人が多かったのでしょう。
小説やドラマの役割が人々にカタルシスを提供することにあるとすれば、ドラマ「半沢直樹」は大成功でした。ここはウソっぽいなどというのは、無用の話かもしれません。