ニューヨーク・タイムズは昨日(9月27日)行なわれたドイツのメルケル首相とギリシャのパパンドレウ首相の会合を一種の「道徳劇」morality playのようなものだと評価した。道徳劇というのは15,6世紀のヨーロッパで宗教に基く道徳観で民衆を教化するために演じられた劇のことである。
パパンドレウ首相は懐疑的なドイツ国民に対し、ギリシャ政府は公的支出を削減し赤字削減目標を達成するべく努力を続ける意思を示した。
欧州金融安定ファシリティ拡大に関する各国の議会承認がうまく運ぶと10月中頃には、新しいファシリティが発足する見込みだ。だがタイムズは「大多数のアナリストは6千億ユーロのファシリティでは、金融危機を押さえ込むにはまったく不十分だ。なぜならイタリアやスペインの問題に対処する手段がないからだ」と述べる。
またタイムズはユーロ諸国間で問題の分析が著しく異なる点も指摘する。ドイツ、オランダその他繁栄している北部諸国は問題の本質をギリシャ等南欧諸国の規律の欠如と浪費で債務と財政赤字を積み上げたことにあると見ている。
だがタイムズは「財政緊縮ではなく経済成長が鍵だ」と主張する。総ての人がギリシャのような国は赤字を削減する必要があるという点では合意する。しかし総ての人が同時にしかもまとまりのない形で支出削減に向かうと欧州全体で激しい経済の収縮が起きる可能性がある。
パリ政治学院のFitoussi教授は「総てが緊縮財政を取るとどこに成長エンジンがあるのだ?」と疑問を呈する。
同教授によると足元のフランスの成長率はほぼゼロで2012年には0.8%に上向くと見込まれるが、もし総ての欧州諸国が緊縮プログラムに追随するとフランスはリセッションに落ち込み、経済は1%収縮すると懸念を述べている。
倹約と財政規律を求める道徳劇ではユーロ危機は救えないが、ドイツの保守派は「北による南の債務引受」に強く反発している。この溝がもう少し埋まらない限り市場は再び欧州の指導者達に冷や水を浴びせそうだ。