金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

道徳劇ではユーロ危機は救えず

2011年09月28日 | 国際・政治

ニューヨーク・タイムズは昨日(9月27日)行なわれたドイツのメルケル首相とギリシャのパパンドレウ首相の会合を一種の「道徳劇」morality playのようなものだと評価した。道徳劇というのは15,6世紀のヨーロッパで宗教に基く道徳観で民衆を教化するために演じられた劇のことである。

パパンドレウ首相は懐疑的なドイツ国民に対し、ギリシャ政府は公的支出を削減し赤字削減目標を達成するべく努力を続ける意思を示した。

欧州金融安定ファシリティ拡大に関する各国の議会承認がうまく運ぶと10月中頃には、新しいファシリティが発足する見込みだ。だがタイムズは「大多数のアナリストは6千億ユーロのファシリティでは、金融危機を押さえ込むにはまったく不十分だ。なぜならイタリアやスペインの問題に対処する手段がないからだ」と述べる。

またタイムズはユーロ諸国間で問題の分析が著しく異なる点も指摘する。ドイツ、オランダその他繁栄している北部諸国は問題の本質をギリシャ等南欧諸国の規律の欠如と浪費で債務と財政赤字を積み上げたことにあると見ている。

だがタイムズは「財政緊縮ではなく経済成長が鍵だ」と主張する。総ての人がギリシャのような国は赤字を削減する必要があるという点では合意する。しかし総ての人が同時にしかもまとまりのない形で支出削減に向かうと欧州全体で激しい経済の収縮が起きる可能性がある。

パリ政治学院のFitoussi教授は「総てが緊縮財政を取るとどこに成長エンジンがあるのだ?」と疑問を呈する。

同教授によると足元のフランスの成長率はほぼゼロで2012年には0.8%に上向くと見込まれるが、もし総ての欧州諸国が緊縮プログラムに追随するとフランスはリセッションに落ち込み、経済は1%収縮すると懸念を述べている。

倹約と財政規律を求める道徳劇ではユーロ危機は救えないが、ドイツの保守派は「北による南の債務引受」に強く反発している。この溝がもう少し埋まらない限り市場は再び欧州の指導者達に冷や水を浴びせそうだ。

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アマゾンの電子本、とりあえずPCで試してみた

2011年09月28日 | デジタル・インターネット

ガジェット(目新しい電子機器等)好きの人なら、今日(9月28日)アマゾンが発表する予定の「タブレット端末」に注目しているだろう。アマゾンは「タブレット端末」を発表するとは言っていないが、アナリスト達の予想はもっぱら、iPadに対抗するタブレット端末が発表されるというものだ。

アマゾンは電子書籍を読むディバイスKindleを安く販売することで、競合先より売上を伸ばしてきた。アマゾンは新しい端末の名前やスペックを一切公表していないが、IT系ニュースサイトによると、新しい端末は7インチのフルカラータッチスクリーンで、OSはアンドロイドを採用し、価格は250ドルで、KIndleの名前で販売されるという。

私もアマゾンのキンドルに興味はあったが、購入はしていない。だがフルカラーのタブロイド端末のKindleが安く販売されるとなると購入を検討したくなった。

そこでまずKindleを使わずに、自宅のPCでアマゾンの電子本を読むことから始めてみた。無料のアプリケーションをインストールすると、PCでアマゾンの電子本を購入することができるのだ。アプリケーションはこちら。http://www.amazon.com/gp/feature.html/?ie=UTF8&docId=1000426311

なお電子本の購入(ダウンロード)は非常に簡単だった。

PC経由で購入した電子本もKindleで読むことができる(はずだ)ので、将来カラーKindleを購入しても無駄にはならないだろう。

それよりも自宅のPCで英語の本を読む・・・・ということがそれ程あるかどうかの方が問題。日本語の本については「想隆社」http://soryu-sha.jp/bunko/がKindleで読める本を販売しているが、書籍数はまだそれ程多くないようだ。「想隆社」のHPには永井家風の「すみだ川」が出ていたが、永井荷風はPCで読むより文庫本を寝転がって読む方が良さそうだ。

そんなことを考えながらタブレットKindleの発表を楽しみにしている。

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欧州債務危機、少し前進だが問題山積み

2011年09月28日 | 国際・政治

欧州の債務危機に対して、関係各国が対策を強化するという観測が高まり、欧州の株価は急反発している。

9月27日にギリシャのパパンドレウ首相はベルリンを訪問してドイツのメルケル首相と会談した。会談の少し前にギリシャ議会は非常に不人気な不動産税の導入を承認した。これは550万人の自宅保有者に8百ユーロから1,500ユーロの課税を行なうもので、20億ユーロから27億ユーロの税収が見込まれる。

だがギリシャは向こう数週間の間に3万人の公務員を待機ポジションに置き賃金を減らすとともに、ポジションの見直しを行なうというような議論を呼ぶ緊縮法案を立法する必要に迫られている。

ドイツでは今週木曜日に国会が欧州金融安定ファシリティを強化する法案を可決することが確実視されている。メルケル首相は与党・キリスト教民主同盟の集会で「何故安定化プログラムが必要かというと、我々がギリシャの債務を引き受けることを望んでいるからではない。そうしなければユーロが不安定になるからだ」と法案への賛成を求めているが、与党内では反対が多い。野党の社会民主党と緑の党が法案に賛成しているので、法案可決は確実視されるが、自党内の棄権・反対が多いとメルケル政権の基盤は弱体化する。

ニューヨーク・タイムズによると、スロベニア政府は金融安定ファシリティに対する保証割合を増やす法案を可決した。フィンランド政府は国内の強い反対にも係わらずいやいやながらも本日法案を可決する見込みだ。

同紙によると日本の安住財務大臣は「欧州の指導者達が市場を落ち着かせる合理的なプランを打ち出すことができるなら、日本政府はギリシャ救済のために負担を担う可能性がある」と示唆した。

個人的にはGDP比率でみると、ギリシャ以上に債務負担が大きい日本にそんなゆとりがあるのか?という気はするが、ユーロ安に歯止めをかけることが日本の輸出産業のメリットになるとすればそのような発言もでるのだろうか?

欧州金融安定基金の強化に向けて国会の承認を取り付け始めた欧州諸国だが、本当に足並みは揃っているのだろうか?

市場関係者の間では市場を安心させるには、金融安定ファシリティの規模を2-3倍に引き上げる必要があるという意見が強いが、ドイツのショイブレ財務相は「金融安定ファシリティの基金を拡大することは、ドイツ等高格付国の格下を招くリスクがある」として、基金拡大に反対している。

欧州の債務危機問題、少し前進だが問題山積みである。

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