今週ニュー良く大学のルービニ教授はFTに「ギリシアは秩序あるデフォルトの手続きを開始し、ユーロを離脱するべきだ」という論文を寄稿した。これに対しFTの経済コメンテーター・マーチン・ウルフ氏はWhy breaking up is so hard to doという記事で「ギリシアのユーロ離脱は極めて困難だ」と反論を行なっている。
ウルフ氏の論拠は次のようなものだ。
・ギリシアがユーロから離脱するという話が発覚すると、ギリシアの総ての債務に対する取付けが起きる。ギリシア政府は直ちに銀行を閉鎖することはなくても、銀行からの預金引き出しに制限を設けることになるだろう。また資本統制を行なう必要がでるだろう。
・国内債務についてはユーロから新通貨に切り替えることが可能だが、対外債務についてはそのようなことはできない。
・多くの企業は破綻する。UBSのレポートによると、離脱初年度の経済的コストはGDPの40~50%に達する。
・もしギリシアがユーロから離脱することになると、イタリア、スペインを含む問題含みの国で通貨リスクはより現実的なものとなる。これらの国の政府や企業は資金調達が困難になり、欧州中銀は無制限の貸出を強いられることになる。
またウルフ氏はドイツのような強い国がユーロから離脱することも極めて困難だと論じる。もしドイツがユーロから離脱すると、ドイツへの大量の資金流入が起きるとともに、新マルクはユーロより強いので、ドイツの銀行が保有する海外資産は大きく減価し、ドイツの輸出企業は競争力を大きく失う。UBSのレポートはもしドイツが離脱すると初年度経済的損失はGDPの20~25%になると推定している。
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ギリシアのユーロ離脱については異なる意見を持つルービニ氏とウルフ氏だが、ギリシアの巨大な経常赤字と経済停滞を救うためには「実質的な平価切下げ」が必要だという点では一致している。しかしウルフ氏のエッセーには、ユーロから離脱することなく、いかに平価切り下げ効果を出すか?という具体策は出ていなかった。ユーロ離脱は非常に困難なことは分かったが、じゃどうすれば良いの?というのもまた困難な問題である。