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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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米国の自然失業率は6-6.75%とIMFは推定

2010年08月27日 | 社会・経済

エコノミスト誌によると、IMFは金融危機前の米国の自然失業率(長期的にみて一定の水準で存在する失業者の割合)は5%ではなく、6~6.75%だったのではないか?という推定を発表している。もしそうだとすると「米国は失業率を改善するためには、金融緩和や財政政策だけではなく、もっと複合的な戦略を取るべきではないか?」というのがエコノミスト誌の主張だ。

エコノミスト誌によると失業者の約45%は6ヶ月以上失業状態が続いている。共和党は政府の景気刺激策が失敗だから失業率が高止まりしていると主張し、民主党は経済成長のために更なる刺激策が必要と主張している。

米国経済は稼働能力以下のレベルで動いているので、需給ギャップにより失業率が高止まりしていることはほとんど疑う余地がない。しかしエコノミスト誌はその他の他の要因にも目を向けるべきだと述べる。

それは住宅市場と金融市場の崩壊で、労働力の需要と供給をマッチングさせる労働市場が非効率的になっているという点だ。住宅価格が上昇を続けていた時は、職を失った人は自宅を処分して、遠隔地で新しい仕事を探すことができた。しかし住宅価格が下落し、住宅を処分してもローンを返済できないので多くの人がこのような行動を取ることができない。

また建設と工業分野で失業している人の技術水準は低中位で恐らく今事業主が求めている人材とマッチしないのだろうと同誌は述べる。失業保険の延長は必要だが同時に新しい職を探すインセンティブを減少させるという問題を持つ。そして失業期間が長くなればなる程、雇用され難くなると指摘している。

この点についてPewResearch社の調査も同様の結果を示している。同調査によると、リセッション中に職を失い、新たに職を見つけた人の内全体では44%の人が新しい職の方が良いといい、30%はほぼ同様、24%は悪くなったと述べている。失業期間別に見ると失業期間が6ヶ月未満の人では54%は新しい職の方が良いといい、16%だけが悪くなったと述べている。しかし6ヶ月以上失業していた人の回答は36%が新しい職が良くなったといい、29%が悪くなったと述べている。つまり失業期間が長くなる程、雇用条件が悪くなっていることが分かる。

もし米国の労働市場が以前よりも非効率になっているとすれば、自然失業率は高いはずだというのが冒頭の主張だ。

労働市場の効率性改善についてエコノミスト誌は2つの示唆を行っている。一つは「ネガティブエクイティ」になっている住宅ローン債務者に対する破産法の改正などを含む救済策の検討だ。

もう一つは労働者の再教育と彼等の求職意欲を高める仕組みの見直し・点検である。

☆  ☆  ☆

長期失業者の就職が難しくなるということは日本も同じだ。だが特に私が日本の雇用問題で今問題だと考えていることは新卒者の2割が就職できないということだ。就職が大変だから学生は就職活動に奔走し、その結果学業がおろそかになり、国際的にみて競争力のある人材が育たない。また運良く就職することができた若者はそこに安住しようとして活力を失う・・・・これが今の構図だろう。

これに対する対策はないのだろうか?

一つ私が思いつくことは「新卒時の総ての採用は見習い雇用(有期雇用)とし、一定期間経過後、本採用(つまり期間の定めのない雇用)とする」という提案だ。

日本の労働基準法の元で、一度社員として採用(つまり期間の定めのない雇用)を行うと解雇することは極めて困難である。従って企業は採用計画や個別の人材選びに非常に慎重になる。

しかしもし最初の雇用を有期雇用(労基法は3年まで認める)としてその間はprovisonal(暫定的)な雇用契約とし、企業・従業員双方に期限における契約終了を認めるということにすると、企業はもう少し採用に踏み込めるのではないだろうか?また就職した学生もそこで活力を失うことなく、本採用に向けて頑張るからチャレンジ精神が持続するのではないだろうか?

こうすると就職する方も「志望するところに就職できないなら就職浪人する」的行動を取る割合が減るのではないだろうか?「第1、第2希望でないけれど取り敢えず働いてみる」ということからスタートして、そこの水が合えば長く働いても良いし、合わなければ転職機会を求める・・・

平たくいうと相当期間のお付き合いをしてから結婚するかどうかを決めるという仕組みだ。オランダは失業率が低い国だが、就職時にはほぼprovisonl期間を設けると聞いたことがある。ただしprovisonal期間が低失業率にどれほど寄与しているかは知らない。

コメント (2)
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