金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

何故日本が一番不景気なの?

2009年01月23日 | 社会・経済

景気の良し悪しというのは「気」の部分が大きいので、読者の皆さんが「日本の景気が一番悪い」ということに同感されるかどうかは分からない。だが、幾つかのデータは経済成長率の点等で日本の景気が各国の中で一番悪いことを示している。

ファイナンシャル・タイムズは「天気図」の形でアジア諸国の経済成長率の予想を示していた。それによると日本は2009年度マイナス1.7%(08年度はゼロ)これはシンガポールのマイナス2.4%(1.5%)と並んで「雪マーク」、中国は7.4%(9.0%)、香港はマイナス1.8%(2.3%)で「雷マーク」(突然の景気悪化)、韓国は0.6%(3.7%)で「雨マーク」(景気悪化持続懸念)、インドは5.6%(6.7%)だ。

又昨年11月の鉱工業生産の前年比減少具合を見ると、金融危機が深刻な米国や英国が7,8%の減少なのに較べて、日本のそれは倍の15%以上減少している。

世界的な金融危機の影響が比較的少ない日本がどうしてこんなに影響を受けるのか?ということは、日本の工業製品つまり自動車や高級家電商品がアメリカの消費者頼みだったからである。

アメリカの消費者ははるか昔から借金漬けだったというイメージがあるが、借金が増えたのはそれ程昔のことではない。詳しい統計は別の機会に探すとして今読んでいる「予想どおりに不合理」(ダン・アリエリー 早川書房)によると「(アメリカは)25年前は、二桁台の貯蓄率が標準だった。つい1994年まではそれでも貯蓄率は5%近くを保っていた。ところが、2006年にはゼロ以下に落ち、貯蓄率はマイナス1%になった」ということだ。

この10年程の間にアメリカ人は大きな家を買い、高級車を3年程度で買い替え、大型プラズマテレビを揃えてきた。そのおかげで日本は6年間の経済成長を~これもまたもう一つ実感がないが~享受できた。そして今アメリカの消費者は、積み上がったクレジットカードの借金返済に追い立てられ、新しい耐久消費財を買う余力を失っている。

今検索エンジンで"Credit card control"などを検索すると「どうすれば借金を減らせるか?」というアドヴァイスであふれている。中には「クレジットカードを使わないようにするため、銀行の貸金庫に入れておきなさい」というアドヴァイスもあった。

話は横道にそれたが、この消費者の態度急変に慌てて雇用と在庫の調整を急いでいるのが、日本の輸出メーカーとそれらの企業に素材を提供しているメーカー達だ。日本の工業生産の約半分は輸出向けだから、米国の消費収縮の影響は極めて大きい。エコノミスト誌によるとBNPパリバの白石氏は日本の鉱工業生産は回復する前に一旦1987年のレベルまで落ち込むと予想している。

救いがあるとするとエコノミスト誌が「日本では雇用と在庫調整が他の先進国より早く進むため景気の回復が早いかもしれない」と予想している点だ。だが雇用についてエコノミスト誌は、調整過程で失業率は現在の3.9%から5.5%に上昇するかもしれないと見ている。同時に同紙は「景気が回復するとしてもそれが何時でどれ位力強いかは別問題」という。それは政府と日銀がどれだけ景気対策に真剣に取り組むかにかかっているからだ。

エコノミスト誌はJPモルガン証券の菅野氏の「景気対策としては2兆円の給付金の4倍規模の生産性向上の投資が必要」という意見を紹介している。

私が気になっていることは「アメリカ人の消費態度が15年から20年位前の姿勢に戻って~つまり貯蓄(借金の積極的な返済も貯蓄)性向を二桁に高める~、日本製の高級製品を買わなくなる」「ガソリン自動車を買わなくなる」といった構造的な変化が起きる(可能性が高いこと)を日本政府が真剣に理解して、経済政策を立案しているのか?という点である。

うがった見方をすると現在の日本政府が景気回復のイニシアチブを取れないことを知っている企業のトップは、自衛のために早目早目に雇用や在庫の調整を行うので、日本の経済成長が目立って悪化している・・・・・ということが言えるかもしれない。これは全くの私見だが。

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