放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、「ヒツジスト」山田氏が、またしても吉田羊愛を語る。
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吉田羊をCMキャラクターにする企業が激増している。
今年1月、人気子役の鈴木梨央の“母役”として「ポカリ、飲まなきゃ」と言っていた大塚製薬「ポカリスエット」のCMに「母親役なんて珍しい」と思っていたら、トヨタホームではもっと大きい子供がいる母親役。
平山浩行に駆け寄る花王「ハミングFine」のCMは、当初、大人のカップルのデートを想像していたが、実は夫婦で、二人の間には子供がいる設定だった。
そうかと思えば、「ザ・吉田羊」が見られるJX日鉱日石エネルギーの「ENEOS」では、「私にだって知らないことぐらいあるわよ」とエネゴリくんに愚痴るニュースキャスター役。エスビー食品「ゴールデンカレー」もナレーターの人気DJ・坂上みきとの相乗効果でキャリアウーマン然としての登場だ。
そんな独身OLの夜の楽しみを描いているのはロッテ「ショコランタン」。部下役の瑛太について、荒川良々と共に語るのは住友生命相互保険会社「生活保険1UP」で、遠藤憲一と共演するダイハツ「MOVE」や、高橋克実とのサンヨー食品「サッポロ一番グリーンプレミア0」は、素敵な大人のカップルやパートナーという設定だ。
そして花王ソフィーナ「AUBE」。大人女子が読むファッション誌のカバーやグラビアを飾ることも多い吉田羊にとっては、来るべくして来た化粧品のCMである。
地元九州は宮崎(吉田は福岡出身)の雲海酒造1本になっていたCMは、今年新たに10社を加えたことになる。
6年前からヒツジストである私でさえ、「ちょっと出過ぎなんじゃないか」と心配になるほど企業から引っ張りだこの吉田羊。なぜ、彼女がこうもモテモテなのか考えてみた。
大きな転機となったのは、やはりSMAPの木村拓哉主演のドラマ『HERO』(フジテレビ系)出演が大きいだろう。メインキャストの半数以上が前シリーズにも出ていたなか、杉本哲太や濱田岳ら個性派俳優と共に新たなキャストとして抜擢された吉田羊。
演じることが大好きで、台本に書いてないことでも演出家や監督と相談して“隠れ設定”を考える女優・吉田は、元カレ役の杉本哲太のことを「礼子さん(吉田の役名)は、どうして好きだったのだろうか」と考え込むようなクソ真面目なところがある。
そうかと思えば、主演の木村拓哉と共に、「カット」がかかるまで、アドリブ合戦をくりひろげた。この『HERO』の演技が認められ、「東京ドラマアウォード2015」で「個人賞」の「助演女優賞」を受賞した吉田羊は、授賞式で「木村拓哉さんに心をこめて感謝したい」とコメントしている。
以前インタビューしたとき、木村くんに対して「お芝居が好きな座長さんで本当に良かった」と言っていた吉田羊。初共演ということで、天下の木村拓哉と演じることに不安や戸惑いがあったことは確かだろう。だが、件のアドリブ延長戦で、打てば響く俳優・木村拓哉がわかり、吉田も思う存分やった結果が、演技での初受賞となる「東京ドラマアウォード2015」の「助演女優賞」に繋がったというワケだ。
真面目な人だけれど、真面目な女優にありがちな面倒くささもなければ、苦労人だけあって「私は女優よ」と、ふんぞり返るタイプでももちろんない。
つきあいもよく、『HERO』チームでは、小日向文世や八嶋智人らと度々飲みに行っては演技論につきあった。
すっかりおなじみとなった女性マネジャーと二人三脚でここまで登り詰めてきた吉田が、ドラマ『HERO』初回のタイトルバックをそれぞれの自宅で見ながら電話で号泣しあった話もまた有名だ。
そうかと思えば、ビートたけし、明石家さんま、笑福亭鶴瓶ら、お笑いの大御所たちから「笑いがわかる女優」として認められているし、もっともバラエティ力に長けているTBSの安住紳一郎アナがMCをつとめる『ぴったんこカンカン』は、準レギュラーといったポジションである。
年齢不詳だが、多くの人がだいたいの年齢を知っているため、地道にコツコツとキャリアを積み上げていまがあることは周知の事実。だが、相手が先輩であろうと年下であろうと、「自分がいちばん新人」という態度で、偉ぶるところが全くない。
つまり、どんな現場でも気さくであるのに、実際、会うと、目も眩むばかりの超美人。特に横顔の美しさに定評があり、衣食住すべてにおいてマメな女性と私は見ている。
たとえばファッションについて、彼女の私服は独特で、生地や小物一つとっても、探し回った末に見つけたモノにさらに工夫をして身につけるのだ。
洋服はたくさんもっていてもズボラな人はオシャレ人間とは言えないが、吉田の場合は、その逆で、全アイテムを愛し、丹精込めて着こなしているように思う。ベストジーニスト賞のときの装いも、納得のスタイルだった。
美味しくて安い食べ物や店をとことんリサーチして、たとえ遠くてもこれまたマメに足を運ぶ。「住」については忙しすぎて引っ越しできずにいるが、ブログ画像を見る限り、女性らしいこだわりの部屋だ。
恐らく彼女は、オファーのあったCMの現場でも、設定や役柄を考えに考え抜いて撮影に臨むのだと思う。そうした評判が広告代理店から広がって、この年代のCM女王になったのだろう。
私にはもうひとつ、次回の「理想の上司ランキング」に吉田羊が入ると予想している(実は2年前から…苦笑)のだが、同ランキング常連の天海祐希の高齢化や篠原涼子に新鮮味がなくなり、ほんの少しではあるがドラマ視聴率に陰りがみえてきたことも、吉田羊にオファーが殺到している理由の一つであろう。
テレビ局のドラマ班スタッフにも本当にファンが多いが、広告代理店や企業の広告担当者、さらにはトップにも愛される吉田羊。年末年始ヴァージョンの新CMも楽しみだ。