『シンデレラ』の王国が平和ではなく、いつ何時他国に攻められるかわからない状況だったら、物語の展開が変わっただろう。
舞踏会で王子と踊っているシンデレラを見て、警備兵たちはささやきあう。
「おい、あのご令嬢は誰だ」
「知らないな。招待状も持っていなかった」
「怪しいぞ。刺客かもしれん」
屈強な兵士たちがシンデレラを警戒し始めたとき、12時を知らせる鐘が鳴り響いた。
「逃げたぞ、追え!」
脱兎のごとく駆け出したシンデレラを追ったのは王子だけではなかった。
しかし、毎日雑巾がけや水くみなどで鍛えてきたシンデレラは、足が速かった。
「見失ったか……」
遺留品を手がかりに、不審な女の捜索が始まった。王子が見初めた姫、ゆくゆくは王妃というおふれを出せば、相手は油断するに違いない。警備兵は一軒一軒しらみつぶしに、証拠となる小さなガラスの靴を履ける女を探し出した。
「あの靴が履けたら、お后様になれるがね」
シンデレラの義姉たちは大いなる勘違いをし、何とかしてお互いを出し抜いてでもガラスの靴を履こうと企んだ。
「この家に年頃の女はいるか」
ついに、シンデレラの家にも兵隊たちがやってきた。まずは上の義姉から試してみると、ぴったり足が収まった。
「見つかったぞ」
警備兵の明るい声に焦った下の義姉は、手を伸ばして靴をひったくり、自分にも履けることを証明してみせた。こっそり様子を覗いていたシンデレラは、あの夜の追っ手を思い出し、急いで物置に身を隠した。
「なんで二人もいるんだ?! まあよい、どちらも城に来てもらおうじゃないか」
兵隊たちは、他に娘がいないことを確認して出て行った。
城では王子が仰天していた。あの夜、一緒に踊ったおぼえのない娘が二人も現れ、一人は足の指を全部切り落とし、もう一人は踵を削ぎとって血まみれになっている。
「靴が履けりゃあ、お后様だと思ったんじゃが……」
義姉たちは厳しい取調べに驚き、必死で申し開きをした。
王子は、痛みをものともしない女たちの図々しさに心を動かされた。
「あっぱれじゃ! 我を通すためとはいえ、女だてらに身を削るとは!」
義姉たちは、后にはなれなかったが兵として城に迎え入れられ、たくさんの手柄を立てたという。
『初版グリム童話』は衝撃的だったが、とりわけシンデレラの義姉たちは只者ではないと感動した。自分の望みを叶えるためには指や踵を失っても惜しくないと考える潔さ、たくましさ、恥知らずなまでの行動力には頭が下がる。なぜ王子は彼女たちを選ばなかったのか。おっとりしたシンデレラよりも魅力的だと感じるのは私だけだろうか。
乱世こそが彼女たちのフェロモンを倍増する場所なのだ。
全身に返り血と戦火の灰を浴びて、全く新しい灰かぶり姫~シンデレラ~が誕生するだろう。
舞踏会で王子と踊っているシンデレラを見て、警備兵たちはささやきあう。
「おい、あのご令嬢は誰だ」
「知らないな。招待状も持っていなかった」
「怪しいぞ。刺客かもしれん」
屈強な兵士たちがシンデレラを警戒し始めたとき、12時を知らせる鐘が鳴り響いた。
「逃げたぞ、追え!」
脱兎のごとく駆け出したシンデレラを追ったのは王子だけではなかった。
しかし、毎日雑巾がけや水くみなどで鍛えてきたシンデレラは、足が速かった。
「見失ったか……」
遺留品を手がかりに、不審な女の捜索が始まった。王子が見初めた姫、ゆくゆくは王妃というおふれを出せば、相手は油断するに違いない。警備兵は一軒一軒しらみつぶしに、証拠となる小さなガラスの靴を履ける女を探し出した。
「あの靴が履けたら、お后様になれるがね」
シンデレラの義姉たちは大いなる勘違いをし、何とかしてお互いを出し抜いてでもガラスの靴を履こうと企んだ。
「この家に年頃の女はいるか」
ついに、シンデレラの家にも兵隊たちがやってきた。まずは上の義姉から試してみると、ぴったり足が収まった。
「見つかったぞ」
警備兵の明るい声に焦った下の義姉は、手を伸ばして靴をひったくり、自分にも履けることを証明してみせた。こっそり様子を覗いていたシンデレラは、あの夜の追っ手を思い出し、急いで物置に身を隠した。
「なんで二人もいるんだ?! まあよい、どちらも城に来てもらおうじゃないか」
兵隊たちは、他に娘がいないことを確認して出て行った。
城では王子が仰天していた。あの夜、一緒に踊ったおぼえのない娘が二人も現れ、一人は足の指を全部切り落とし、もう一人は踵を削ぎとって血まみれになっている。
「靴が履けりゃあ、お后様だと思ったんじゃが……」
義姉たちは厳しい取調べに驚き、必死で申し開きをした。
王子は、痛みをものともしない女たちの図々しさに心を動かされた。
「あっぱれじゃ! 我を通すためとはいえ、女だてらに身を削るとは!」
義姉たちは、后にはなれなかったが兵として城に迎え入れられ、たくさんの手柄を立てたという。
『初版グリム童話』は衝撃的だったが、とりわけシンデレラの義姉たちは只者ではないと感動した。自分の望みを叶えるためには指や踵を失っても惜しくないと考える潔さ、たくましさ、恥知らずなまでの行動力には頭が下がる。なぜ王子は彼女たちを選ばなかったのか。おっとりしたシンデレラよりも魅力的だと感じるのは私だけだろうか。
乱世こそが彼女たちのフェロモンを倍増する場所なのだ。
全身に返り血と戦火の灰を浴びて、全く新しい灰かぶり姫~シンデレラ~が誕生するだろう。
本読みたくなっちゃった
買おうかなー
これからも更新楽しみにしてまーす
グリム兄弟の育った家庭って……どんなんでしょ~ね? ヘルハウスかな(笑)
拝見させていただいてます♪
先生の言葉はホント面白いですね☆
今後もお邪魔させてもらいます(^・^)/
私が知っているシンデレラにはどこでいつ、変わったのか不思議ですね。
やはり子供への影響を考えてなのでしょうか?
でも、これ面白いですね
『シンデレラ』以外にも、眉をひそめてしまうようなエグい話がありましたね。
ネットでも、『初版グリム童話』で検索すると、R12指定かな~と思うような話が読めます。