教員という職業柄か、私は人の顔をおぼえるのが得意である。
目で読み込んだ画像は脳に送られ、自動的に名前を検索しはじめる。20代の頃は、フルネームが漢字でヒットし、600人ほどの生徒をおぼえる記憶容量があった。
「どうやったら、そんなにおぼえられるの?」と驚く先生もいたが、特別な努力は必要ない。ただ見るだけで記憶できたから、できない人のほうが不思議だった。
30代になると、検索に時間がかかるようになった。顔を見て、パッと名前に結びつくことがあれば、なかなか思い出せないこともある。
たとえば、池袋のデパートで見かけた女性がそうだった。ピンクのスーツがよく似合う、丸顔のふっくらしたその女性を、たしかにどこかで見たことがある。しかし、名前が出てこない。
誰だっけ? 誰だっけ?
必死で頭の引き出しを探しても、ヒットする名前はなく、むなしく「結果なし」と表示されてしまう……。
これは、結構、心の負担だ。わかりそうでわからないものは、大変もどかしくてじれったい。何日もの間、ときおり思い出しては「誰だっけ」を繰り返していた。
だから、解決したときの喜びはひとしおである。
あっ、○○眼科の先生だ!!
ある日、答えが唐突にひらめいた。3回ほど通った眼科の女医さんだったのだ。
自慢の記憶力に、陰りを感じた一幕だった。
40代になると、脳の減価償却がさらに進む。若い頃は、卒業生が遊びに来ても、「○年卒の誰々」と答えられた。しかし、最近では、卒業生のファイルは新入生のファイルに置き換えられ、上書き保存されるようだ。卒業年度はおろか、名前もまず思い出せない。
昔の同僚も、卒業生の女の子と駅でバッタリ会ったとき、名前がわからず困ったと言っていた。
「先生、お久しぶりです!」
「あ、ああ、久しぶりだね。元気だった?」
ひとまず無難に答えたものの、彼の頭の中では「誰? 誰?」と疑問がこだましていた。だが、記憶の引き出しを、片っ端からひっくり返して探しても、答えは得られない。まさか、「お前誰だっけ?」などと聞くわけにもいかないから、彼は焦った。
そこで、彼は手がかりになる質問を思いついた。
「担任の先生、誰だったっけ?」
担任がわかればクラスが特定できる。そこから生徒名が浮かぶだろうと考えたのだが、返ってきたのは卒業生の悲鳴じみた声だった。
「ひどいよ!! 先生のクラスだったんじゃない!!」
もし、私が卒業生の名前を失念してしまったら……。
「大事な思い出は、鍵をかけてしまってあるから、今すぐには出てこないわ、ゴメンね」
とでも言っておくか。
記憶が衰えた分、言い訳ばかりが上達する。
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
目で読み込んだ画像は脳に送られ、自動的に名前を検索しはじめる。20代の頃は、フルネームが漢字でヒットし、600人ほどの生徒をおぼえる記憶容量があった。
「どうやったら、そんなにおぼえられるの?」と驚く先生もいたが、特別な努力は必要ない。ただ見るだけで記憶できたから、できない人のほうが不思議だった。
30代になると、検索に時間がかかるようになった。顔を見て、パッと名前に結びつくことがあれば、なかなか思い出せないこともある。
たとえば、池袋のデパートで見かけた女性がそうだった。ピンクのスーツがよく似合う、丸顔のふっくらしたその女性を、たしかにどこかで見たことがある。しかし、名前が出てこない。
誰だっけ? 誰だっけ?
必死で頭の引き出しを探しても、ヒットする名前はなく、むなしく「結果なし」と表示されてしまう……。
これは、結構、心の負担だ。わかりそうでわからないものは、大変もどかしくてじれったい。何日もの間、ときおり思い出しては「誰だっけ」を繰り返していた。
だから、解決したときの喜びはひとしおである。
あっ、○○眼科の先生だ!!
ある日、答えが唐突にひらめいた。3回ほど通った眼科の女医さんだったのだ。
自慢の記憶力に、陰りを感じた一幕だった。
40代になると、脳の減価償却がさらに進む。若い頃は、卒業生が遊びに来ても、「○年卒の誰々」と答えられた。しかし、最近では、卒業生のファイルは新入生のファイルに置き換えられ、上書き保存されるようだ。卒業年度はおろか、名前もまず思い出せない。
昔の同僚も、卒業生の女の子と駅でバッタリ会ったとき、名前がわからず困ったと言っていた。
「先生、お久しぶりです!」
「あ、ああ、久しぶりだね。元気だった?」
ひとまず無難に答えたものの、彼の頭の中では「誰? 誰?」と疑問がこだましていた。だが、記憶の引き出しを、片っ端からひっくり返して探しても、答えは得られない。まさか、「お前誰だっけ?」などと聞くわけにもいかないから、彼は焦った。
そこで、彼は手がかりになる質問を思いついた。
「担任の先生、誰だったっけ?」
担任がわかればクラスが特定できる。そこから生徒名が浮かぶだろうと考えたのだが、返ってきたのは卒業生の悲鳴じみた声だった。
「ひどいよ!! 先生のクラスだったんじゃない!!」
もし、私が卒業生の名前を失念してしまったら……。
「大事な思い出は、鍵をかけてしまってあるから、今すぐには出てこないわ、ゴメンね」
とでも言っておくか。
記憶が衰えた分、言い訳ばかりが上達する。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
脳味噌の減価償却。
たぶん自分はま~ったくもって思い出せないとおもうな。
はなから記憶力には自信のない自分。顔と名前が一致しないことは日常茶飯事。20代のころからそれだから、アラ4の現在は・・・いわずもがな。
ああ、脳の外部メモリーってできないもんかなあ
40代が恐ろしい
考えてみたら、毎年何十人~何百人と接するわけだから仕方ないか。
自分の脳は記憶容量が
ずいぶん小さいみたいで
人の名を記憶するのは苦手だな
店の従業員の名前さえ出ない時があって
ボケの名簿入りです(笑)
まあ、しょうしみんさんもですか!
ホント、USBでもあればいいのに。
「誰だっけ」と思ったときに挿し込めば、「ああ○○さん!」なーんてね(笑)
メモなどの補助媒体を使っても、なくしちゃったりするし…。
33歳を過ぎると老化を感じる人が多いみたいですよ。
私の場合、30代では感じず、40代に突入してから一気にきました!
ギャップの大きさに自分が戸惑い気味…。
妹の夫は、高校時代に教わった先生をほとんど覚えていないよ。
「思い出せるのはクラブ顧問の先生くらい」だって。
私も、中学・高校ならともかく、小学校は思い出せない。
最初からおぼえていなかったみたい(笑)
それにしても。
普通、担任した生徒は忘れないと思うんだけど。
激しい(笑)
うーん、それはマズイのでは?
ど忘れのレベルなんでしょうけれど、「毎日会ってるのに」と相手はショックを受けそうな…。
同僚でも、他の先生の名前を忘れた人がいました。
私が教えてあげたら「ああそうそう」と言ったあと、「本人に言わないでね」と口止めされました(笑)
知られたくなかったんだ~!
店のお客様が俺の顔を覚えててCSなんかで声を掛けてくださいます「あれぇ~この前、美味しかったよ」などと言われるとまだ記憶が甦って来たり?するのでまだマシ!
本業の方の話しで社長が「この前の〇〇さん宅の現場終わったから点検して来てくれ!」……????
ハテ!どこやったっけ?と聞こうものなら雷が落ちる(^^ゞ
その場しのぎの返事して後退りする!速攻で同僚に聞いて現場に向かったりする事は日常茶飯事(爆)……
素晴らしい記憶回路をお持ちだったから、トシとともに・・・ってなっちゃうんですよ。
私なんて、今も昔もかわらず、人の顔と名前を一致させるのが苦手ですから、トシを意識せずにすんでます(笑)
それにしても、私、よく教員やってたなぁ(汗)
ま、そのとき目の前にいる生徒たちはなんとか覚えたけどさ・・・。
きっと、そのときそのときで一所懸命なんだな、私って。
・・・って事にしておいて下さい(爆)
二足のわらじストはツラいですね(笑)
多分、陽水さんの中では、お蕎麦屋さんがメインになっているのではないかしら。
そちらのお客様は忘れないもの。
瓦職人のほうは……。
同僚に「ウソ教えちゃお~」とイタズラされたらおしまいですね(笑)
私だったらやるかも。
まあ、気をつけてくださいな。
教員とひとくくりにしても、それぞれ個性の違いが際立ちますよね。
意外と、人の名前を覚えられない教員は多いです。
生徒どころか、教員の名前も間違えている(笑)
私が間違えられる側だったら、きっとイヤだと思う……。
まあ、いろいろ勉強になりますよ。