これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

女風呂の諸事情

2018年08月07日 22時41分22秒 | エッセイ
 菅平高原には「ダボスの丘」と呼ばれる場所がある。



 夏場はここでトレーニングをする団体が多く、斜面を走ったり、外周をジョギングしたりして、体力向上を図っているようだ。陸上とおぼしきチームが、他の選手を背負いながら丘を駆け上がる練習にはたまげた。



「暑い」
 合宿中であるわが高校のサッカー部も参戦したのだが、ほとんど日陰がなくて参った。5人の女子マネージャーも、引率でついてきただけの私も、走っていないのに汗だくである。
「先生も塩分チャージどうぞ」
「ありがとう」
 


 気の利くマネージャーからタブレットをもらった。ラムネみたいで美味しい。
 汗が首や額を流れると、早くお風呂に入りたくなる。しかし、部屋にはトイレも風呂もなく、大浴場に行くしかない。
「うーん。女同士とはいえ、生徒と一緒に入るのはイヤだなぁ」
 私よりも生徒の方が嫌がるかもしれない。何しろ、内科検診ですら拒否反応を示す子がいるのだから。なるべく、時間をずらす工夫をした方がよさそうだ。
 初日は、クーラーボックスなどを運ぶ軽トラックに乗せてもらったので、マネージャーたちより早く宿に着いた。ササッと風呂場にすべり込み、うまく時間差をつけられたのだが、2日目はそう上手くはいかない。 練習中にケガをした選手を病院に連れて行き、宿に戻ったときにはすでにマネージャー2人が入浴中だった。
「あ、先生。先に入ってまーす」
 うわっと思ったけれど、今さら戻るわけにもいかず、そのまま前進する。
 顔は笑っているけれど、超高速で相手の露出した部分に視線を走らせる、というのが大半の女性である。無遠慮にガン見するのはオバはんで、若い子はあくまでもさりげない風を装うが、やることは同じだ。モアッとした湯気にまぎれた彼女たちの視線を受けつつ、私も若い肌をチラ見した。もっとも、メガネをかけていないので、ボヤけていたが。30歳ほどの年齢差があるのだから、劣化を隠せるはずもなく、分が悪いことこの上なかった。
 うえ~ん。
 お風呂が終わったら夕食だ。
 この日の夕食はこんな感じ~。



 マネージャーたちの隣を通って席に着く。
「あ、先生だ」
「うふふふっ」
 先ほど裸のつき合いをしたマネージャーたちが顔を見合わせ、小さな声を立てて意味ありげに笑う。どんな話をしていたのか、考えるだけでも恐ろしい。
 忘れられないのが最終日。この日の夕食がバーベキューだったことがいけない。
「食事の前に風呂に入っても、ニオイがつくから、食後にした方がいいっすよ~」
 主顧問の男性と話していて、「それもそうだな」と納得した。そして、生徒たちもそう思っていたらしい。
 食後に大浴場に行ったら、今度はマネージャー5人が勢ぞろいだった。スペシャルすぎる!
「ああっ、せんせいっ!」
「わああああっ」
 廊下まで響く叫び声で歓迎され、浴室内は大騒ぎとなった。もう知らん!
 私も含め6人で湯船に浸かると、上級生の2人が歌を歌い始めた。相当、ゴキゲンらしい。こちらは泣きたい気分だというのに、いい気なものだ。白くて弾力性のある背中が羨ましいと思う反面、娘のようにも見えてきた。まあ、こんな経験があってもいいか。
 翌日、帰りのバスの中で、主顧問の男性に愚痴を言う。
「昨日は生徒たちと一緒にお風呂に入って、気まずかったですよ」
「そうですか? 僕も一緒に入りましたよ。男は単に、いるな、くらいの感覚ですけどね」
 そんなものなのか。男って気楽でいいな。
 ともあれ、服がないと、距離感が縮まることは確かだ。
 彼女たちとは、今後、仲良くやっていけそうな気がした。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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