これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

バイキングの掟

2015年08月16日 21時16分26秒 | エッセイ
 妹一家から「まぐろ&ビーフフェスタ」というイベントに誘われ、埼玉県の某ホテルに行ってきた。
 このイベントでは、マグロとビーフを中心とした料理がバイキング形式で提供される。料理だけで26種類あり、デザートや飲み物も豊富だ。
「えーと、まずはマグロの造りににぎり、カルパッチョと……」
 パソコンでメニューを見て、夫は前日から何を食べるか計画していた。さすがは食いしん坊。マグロもビーフも好物なので、この日を心待ちにしていたらしい。
 妹一家も、電車とバスを乗り継いで来たという。偏食が激しい甥も、マグロは大好きだから心配ない。ビーフもそこそこ食べるので、彼を基準に選んだイベントであろう。
「今日は車じゃないから飲める!」
 義弟もうれしそうだ。運転手を務めたことがないからわからないが、みんなが美味しそうにグラスを空けているのに、自分だけがジュースを与えられていると不公平感が生まれると思う。やっと同じ土俵に立てたような満足感で、目がキラキラしていた。
「お待たせいたしました。会場の準備が整いましたので、お席へどうぞ」
 会場内で目を惹いたのが、フルーツカービングの作品である。



 ネットの画像で見たことはあるが



 あんな作品や



 こんな作品があって、果物に大輪の花が咲いている。



 繊細で緻密な作業に驚くばかりだ……。



 すごい!
 シャンデリアは花火に見えた。そういえば、真珠湾で打ち上げられた、長岡の花火が話題になっていたっけ。



「じゃあ、お料理を取って来よう」
「イエーイ!」
 左から、マグロのかぶと焼き、にぎり寿司、造り。



 牛肉の鉄板焼き、イタリアンサラダ、冷製コーンスープ。



 向かい側に中学生の姪が座っていた。テーブルには、ジュースと焼き餃子が載っている。
「あれ、今日はマグロとビーフの料理がたくさんあるんだよ。食べないの?」
「うーん」
 姪が困った顔をした。横から妹のフォローが入る。
「好きなものを取って食べなさいって言ったんだけどね。餃子だったわ」
 姪にはほとんど好き嫌いがない。甥には親が世話を焼き、「あれがイヤなら、これを食べれば」と勧めているが、手のかからない姪は放置され、少々雑に扱われている気がする。
「じゃあ、また取ってくる」
 姪が席を立つ。一応、マグロのにぎりと造りは義弟が取ってきてくれたが、次は何を選ぶのか。
「オムレツにした」
 ガクッ。
 一方、夫の食欲は群を抜いている。彼の周りには皿が10枚近く並び、マグロとろろそば、マグロのステーキ、ローストビーフやビーフシチューなども持ってきたようだ。
「はー」
 見ているこちらは、ただただ驚いてため息をつくばかり。本当によく食べる。しかも残さない。
 バイキングの掟その1「残さないのがマナー」。残念なことに、これを守らない人が多いと聞く。ちょっとは、この男を見習ってほしい。
 姪がまた席を立つ。今度は何を取ってくるのだろうか。
「カレーにした」
「……」
 バイキングの掟その2「子どもは好きなものを食べる」。大人の好みを押し付けたらいかん。
 食事がひと段落すると、タヒチアンダンスが始まる。



 タヒチアンダンスは歴史が古く、そこから分化してハワイで独自の進化を遂げたものをフラダンスと呼ぶらしい。結構な運動量があるようで、ダンサーたちの鍛えられた腹筋があらわにされていた。
 鑑賞しながらデザートタイムに移る。



 ちょっと、取りすぎたかも……。
 マグロやビーフよりも、デザートの満足感が大きい。姪のことをとやかく言えないと笑った。
 バイキングの掟その3「別腹を空けておく」。
「しまった、食べるのに一生懸命で、2杯しか飲めなかった……」
 せっかく車を置いてきたのに、義弟は料理だけで満腹になってしまい、不完全燃焼だったらしい。
 タヒチアンダンスのあとに、フルーツカービングの実演があった。大勢の子どもたちが取り巻く中で、プロがフルーツをカットしていく。切れ味の鋭い刃物が、スパスパッと迷わず果肉を切り裂く様は、とても真似できない。



 舌でも目でも楽しめたイベントであった。
 帰りの電車で、夫に話しかける。
「いやあ、お腹いっぱい。2日分くらい食べたよ」
「オレは3日分くらい食った気がする」
 前の日から絶食すればよかったかしら。


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コメント (14)
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