娘が所属する吹奏楽部では、月に何度か、外部指導員として、プロの演奏家がやってくる。
半日練習のときはともかく、一日練習の日は、この先生のために、保護者が輪番でお弁当を作ることになっている。部員は80名いるから、一向に順番が回ってこなかったが、先週、ついに顧問の先生から電話がかかってきた。
「次の日曜日は、笹木さんの番になります。斉藤先生は、好き嫌いがないので、おかずは何でも結構です。特別なものはいりません。ただ、20代の男性ですから、量はお子さんより多めにしてください」
「はい、わかりました」
快諾して電話を切ったものの、何でもいいと言われると、かえって何にしたらいいか迷うものだ。
私は娘から情報収集を試みた。
「ねえねえ、斉藤先生って、どんな人?」
「超イケメン! 演奏も上手いし、カッコいいし、話も面白いよ」
「へー」
「すごくモテるみたいだけど、もう結婚してるんだよ。でも、子供はいない」
「ほー」
「楽団の演奏と、中学生の指導で忙しくて、まだいらないんだって」
「ふーん」
察するに、仕事にのめり込み、家庭を犠牲にするタイプのようだ。家にいる時間はほとんどなく、奥さんに淋しい思いをさせているのかもしれない。
私は勝手に、子供を欲しがる妻と、耳を貸さない夫の図式を思い描いた。
よしっ、奥さんのために、私が一肌脱ごう!
方向性が決まると、メニューも決まる。
まずは、里芋の煮物である。里芋には亜鉛が多く含まれており、精子の数を増やすといわれているそうだ。精子が増えれば生殖能力も高まる。煮物は得意なので、これは上手くできた。
同じく、亜鉛が豊富に含まれている山芋も、すりおろしてハンバーグに入れる。山芋は、性ホルモンの活性化を促すそうで、男性におススメの食品らしい。
だが、山芋の存在感が予想以上に大きくて、ハンバーグというより、肉入りお好み焼きのようになってしまった。奇妙な味だけど、決して不味くはない。「まあいいや」と妥協し、お弁当箱に詰める。
さらに、滋養強壮の代名詞、ウナギを玉子焼きの芯にして、ウナ巻き玉子を作る。ウナギは私の大好物だ。残ったものは、私のお昼ご飯となり、一石二鳥である。
あとは、ワカメの酢の物、キャベツのおひたし、イチゴを詰めて出来上がりだ。
名づけて、「おせっかい弁当」といったところだろうか。
これに、大きめのおにぎり2個を加え、バンダナに包み、娘に持たせた。
夕方、娘が持ち帰ったお弁当箱は、きちんと洗ってピカピカになっていた。
これでは、完食したのかどうかわからない。
怪しげなおかずの数々を、しっかり食べてもらえたのだろうか。
捨てられていたりして……。
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
半日練習のときはともかく、一日練習の日は、この先生のために、保護者が輪番でお弁当を作ることになっている。部員は80名いるから、一向に順番が回ってこなかったが、先週、ついに顧問の先生から電話がかかってきた。
「次の日曜日は、笹木さんの番になります。斉藤先生は、好き嫌いがないので、おかずは何でも結構です。特別なものはいりません。ただ、20代の男性ですから、量はお子さんより多めにしてください」
「はい、わかりました」
快諾して電話を切ったものの、何でもいいと言われると、かえって何にしたらいいか迷うものだ。
私は娘から情報収集を試みた。
「ねえねえ、斉藤先生って、どんな人?」
「超イケメン! 演奏も上手いし、カッコいいし、話も面白いよ」
「へー」
「すごくモテるみたいだけど、もう結婚してるんだよ。でも、子供はいない」
「ほー」
「楽団の演奏と、中学生の指導で忙しくて、まだいらないんだって」
「ふーん」
察するに、仕事にのめり込み、家庭を犠牲にするタイプのようだ。家にいる時間はほとんどなく、奥さんに淋しい思いをさせているのかもしれない。
私は勝手に、子供を欲しがる妻と、耳を貸さない夫の図式を思い描いた。
よしっ、奥さんのために、私が一肌脱ごう!
方向性が決まると、メニューも決まる。
まずは、里芋の煮物である。里芋には亜鉛が多く含まれており、精子の数を増やすといわれているそうだ。精子が増えれば生殖能力も高まる。煮物は得意なので、これは上手くできた。
同じく、亜鉛が豊富に含まれている山芋も、すりおろしてハンバーグに入れる。山芋は、性ホルモンの活性化を促すそうで、男性におススメの食品らしい。
だが、山芋の存在感が予想以上に大きくて、ハンバーグというより、肉入りお好み焼きのようになってしまった。奇妙な味だけど、決して不味くはない。「まあいいや」と妥協し、お弁当箱に詰める。
さらに、滋養強壮の代名詞、ウナギを玉子焼きの芯にして、ウナ巻き玉子を作る。ウナギは私の大好物だ。残ったものは、私のお昼ご飯となり、一石二鳥である。
あとは、ワカメの酢の物、キャベツのおひたし、イチゴを詰めて出来上がりだ。
名づけて、「おせっかい弁当」といったところだろうか。
これに、大きめのおにぎり2個を加え、バンダナに包み、娘に持たせた。
夕方、娘が持ち帰ったお弁当箱は、きちんと洗ってピカピカになっていた。
これでは、完食したのかどうかわからない。
怪しげなおかずの数々を、しっかり食べてもらえたのだろうか。
捨てられていたりして……。
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