これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

服のあだ名

2010年12月19日 18時04分52秒 | エッセイ
 昨日は、エッセイ教室の忘年会だった。
 一緒に入会している姉が、たまたま正面に座ったので、自然と装いに目が行く。姉は、普段、お堅いスーツばかりなのに、オフのその日はラフなニットを着ていた。
 若草色のそのニットは、ファスナーつきで、前開きのスタイルだ。身頃や袖のゆとりといい、ファスナーを上げるとスタンドカラーになる形といい、カーディガンではないものを連想させる。
 私はつい、率直な意見を口にした。
「それ、ジャージみたいね」
「えっ、ジャージ!? 違うわよ!」
 姉は、少々気を悪くして否定する。しかし、見れば見るほど、ジャージのような気がしてきた。
 姉の隣に座った仲間は、黒い羽に似た飾りのついたカットソーをまとっている。ふわふわしていて、柔らかそうだ。
「それ、すごくオシャレですね。ちょっと触ってもいいですか?」
「いいわよ~! もらいものなんだけど、カラスみたいって言われるの」
「カラス!!」
 私も姉も噴出した。なかなかうまいことを言う。
「ああ、のどが渇いた。今日は整体に行く日だったから、余裕で間に合う時間にしたのに、人身事故で電車が止まっちゃって、散々な目にあったわ! 早くビールが飲みたい」
 メニューを見ながら、姉が何やらつぶやいている。
 ようやく私は納得した。
「ああ、整体に行ったのね。それでジャージなのか」
 間髪入れずに返事がある。
「だから、ジャージじゃないってば!」

 姉が学生の頃、気に入って買った服にもあだ名があった。
「どう? いいでしょ、これ」と自信たっぷりに見せられたコットンシャツは、白地に淡いブルー、イエローの、太めのストライプが入っていた。パステル調のやさしい色づかいだが、どこかで見たようなおぼえがある。



 いきなり、母が核心を突いた。
「なんか、パジャマみたいね~!」
「パジャマ!!」
 私も姉も大笑いだったが、姉だけは「パジャマじゃないわよ、失礼ね」と口を尖らせた。
 この場合、太めの縦縞が災いしたようだ。
 しかし、細ければよいというものでもない。
 同じ職場の30代男性が、紺と赤の細いストライプが入った、白いシャツを着てきたことがあった。



 ひと目見て、シャツのニックネームが浮かんできた。

 金銭出納帳……。



 彼のシャツは、市販の帳簿に印刷されている罫線に、そっくりだったのだ。
 そういえば、しばらくかのシャツを目にしていないが、同僚に漏らしたひと言がめぐりめぐって、本人の耳にまで届いてしまったのかもしれない。
 決して悪気はないのだが、ビッタリの例えがひらめくと、黙っていられない性分なので、大目に見てもらいたい。

 生徒も、私に負けず劣らず正直である。
 緑色のミニのワンピースを着ていけば「ピーターパン」、茶色の床まで届きそうなツーピースには「スカーレット・オハラ」などと名づけてくれる。中身が、かけ離れているところが申し訳ない。
 蛇足だが、今日、スーパーまで買い物に出かけたら、高級外車B○Wを3台見かけた。
 あの車には、いつもギョッとさせられる。

 豚みたい……。

 正面から見たデザインが、豚の鼻を思わせるのだ。
 ユーザーには申し訳ないが、買えない者のひがみだと、寛容に受け流していただきたい。




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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (14)
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