この前内田康夫さんの「札幌殺人事件」「小樽殺人事件」と続けて読んだのですが、その流れで手に取りました。
ここ数年、新型コロナ禍で激減しましたが、それでも平均すれば2・3カ月に1度は大阪出張があります。そういう関係でちょっと“御堂筋(大阪)” には縁を感じて読んでみました。
ネタバレになるとまずいので、内容には触れませんが、この作品の導入部でも、馴染みの場所が登場しました。
(p22より引用) 夕方近く、浅見は全日空ホテルに入った。いわゆる北新地と呼ばれる繁華街の、すぐ隣といっていい場所にある。・・・
ペガサスからの転落死亡事故があったのは、御堂筋が中之島を越える辺り、ちょうど市役所の前で、ここからだと、現場は日本銀行大阪支店の建物に隠れて見えない。
この「全日空ホテル」というのは。場所の描写から言って「ANAクラウンプラザホテル大阪」のことだと思いますが、このホテルは出張の折に泊まったことがありますし、市役所前も出張先を訪れるときいつもその前を通っているルートです。舞台は、大阪のど真ん中ですね。
作品について一言だけ言えば、最後の「謎解き」の部分は、(内田さんにしては)かなり雑な印象を受けました。巻末の「自作解説」で内田さん自身、こう語っています。
(p276より引用) 『御堂筋殺人事件』を執筆中、たしかほとんど書き終える間近だったと記憶しているが、当時大阪で開催中だった「花の万博」で事故が発生した。「ウォーターライド」とかいう、空中に水路を設け、ボートを浮かべて走らせていた乗物が転落して負傷者が出たというのだ。 他人の不幸は医者と警察官と僧侶と推理作家のメシの種 とばかりに、早速このニュースを取り入れて作品を完結した。
そういう時宜を得た出来事を作品に盛り込むという発想は、ちょっとした遊び心もあっていいチャレンジだと思いますが、今回のケース、私には、“安易な幕引き” に使ってしまったように見えました。
ちょっと残念です。
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