OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

2006年 大晦日

2006-12-31 23:00:50 | 日記・エッセイ・コラム

Marcus_aurelius_kiba_2   年末にあたって、今年読んだ本を振り返ってみました。

 例のごとく乱読で節操のない読書でしたが、その中で「これはいい本だった」と思ったものを覚えとして書き記しておこうと思います。
 どれが一番ということでもありません。

 まずは、m-funさんに紹介されたマルクス・アウレーリウスの「自省録」。この本はいつかもう一度読みたくなる気がします。
 吉野源三郎氏の「君たちはどう生きるか」は、中学校ころに読んでおきたいと思った本でした。

 有名なわりに今まで読んだことのなかった作家の本としては、塩野七生さんの「マキアヴェッリ語録」。これは、以前「君主論」を読んだ流れで手にとってみたものです。
 また、いつも参考にさせていただいているふとっちょパパさんのお薦めで、内田百閒氏米原万理氏日垣隆氏の本も初めて読みました。
 どれも面白かったのですが、ふとっちょパパさんからの紹介で、特にこれはヒットだと思った本がありました。権八成樹氏の「花を売らない花売り娘の物語」です。実践的マーケティングの本としての意味に止まらない、著者の人柄そのものが魅力として迸る深みのあるものでした。

 旬の本としては、梅田望夫氏の「ウェブ進化論」。Web2.0企業を分かりやすく解き明かしてくれました。ベストセラーも頷ける読みやすさでした。
 まったく違ったジャンルでの旬の本は、木村元彦氏の「オシムの言葉」でしょう。折りしもサッカー日本代表監督に就任したタイミングで話題性も十分でした。が、それ以上に、本の内容は、旧ユーゴスラビアの内戦を背景にしたドキュメンタリーとしても耐えうるものだと思いました。

 日本の伝統文化の関係では、宮本常一氏の「忘れられた日本人」西岡常一氏の「木のいのち木のこころ」が記憶に残ります。いずれも著者の気骨がそのままに写された名著です。
 日本文化といえば、結構インパクトがあったのが坂口安吾氏のエッセイ集「日本文化私観」。有名な「堕落論」をはじめ坂口イズムは強烈でした。

 ほとんど読まない小説系では、辻邦生氏の「安土往還記」が、独特の描写で非常に新鮮でした。

 また、科学関係は、アインシュタインがらみの本を何冊か読みましたが、やはり理解できずでした。村上陽一郎氏の「新しい科学論」で科学史のさわりに触れたくらいでしょうか。

 最後に、私の読書の一つのきっかけなのですが、「社会の教科書に出てくるくらいの本は、少しでも読んでおきたい」との動機から、記憶に残る3冊。
 プラトンの「ソクラテスの弁明」デカルトの「方法序説」福沢諭吉の「学問のすゝめ」
 どれもお勧めです。

 さて、大晦日。

 本の話題を離れて、私にとって今年最も鮮烈だった出来事。
(政治・経済・社会問題といろいろな出来事がありましたが、そういったジャンルは一旦横に置くとして・・・)何かひとつ選ぶとすると「ドイツワールドカップ決勝でのジダンの退場」でした。
 金色のワールドカップ(優勝杯)の脇を通りすぎてピッチを去るジダンの後ろ姿は、何とも言葉になりませんでした。(私は、昔、サッカー小僧だったのです)

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「吉野屋の牛丼」の決定 (決定学の法則(畑村 洋太郎))

2006-12-31 15:52:29 | 本と雑誌

Gyudon  本書の第2章では、「吉野家の価格決定」をケースに畑村氏の「決定学」を実践に適用しています。
 併せて、吉野家安部修仁社長の興味深い話がいくつも紹介されています。

 まずは、「自負」についての安部社長の示唆です。

(p140より引用) 自負を持つというのは大切なことですが、反面で持ち過ぎると悪い面もあります。
 自分が相手より勝っていることを確認するために、現状と向き合おうとはせず、自分の長所と相手の短所を引き比べて優位な部分を探そうとします。本当の意味での競争力を鍛えずにそんなことばかりしていると、優位性はどんどん失われて、最後には何もなくなってしまうんです。

 この点は、次のような、「観念的論評」を嫌い「事実への立脚」を基本とする安部社長の姿勢に通じるものがあります。

(p141より引用) 私は「観念的に論評されることは間違っている」という前提に立ったほうが逆に間違いは少ない、と思っています。・・・特にマーケットの予測なんてほとんど外れてますよ。大体、五分先の株価や為替動向が読めないのに、何で一年後の予測ができるんだと言いたい。
 だから私は現象の把握はあくまで事実に基づいて行おうと心掛けています。

 また、安部社長のいう「スピーディー」の定義も興味深いものです。

(p144より引用) 私が考える本当のスピーディーというのは、仮説の検証を正しいステップで迅速にやって早く結論を見つけることです。でも、多くの人は世の中が要求するスピーディーは、そんなステップはすっ飛ばして思い立ったらすぐにやることだ、と勘違いしている。だからいっぱい間違えるんですね。

 安部社長の思考は非常に論理的・実証的であり、その論理プロセスの高速化が、安部社長の決断の大きな要素になっているようです。

 吉野家の新価格決定に至るプロセスにおいて、安部社長は「250円セールの失敗」を経験しています。

 失敗について、畑村氏は「反省」と「省察」という2つの言葉を用いて以下のように論じています。

(p256より引用) 必要なのは反省ではなく、「省察」です。・・・決定学における省察の中身は何かといえば、決断し、行動して、起こった結果を省みることです。結果の要素を摘出し、構造化して考える。それを文章や絵でまとめて知識化する。こうした行程を踏んだ省察だけが他者に正しく伝わり、次の機会に生かせるのです。そこに自己批判は必要ない。結果を受け止めて正しく分析するだけのことです。省察は次に動くためのエネルギーを生み出すものなのです。

決定学の法則 決定学の法則
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