福沢諭吉の本は、先に「福翁自伝」を読んだのですが、今回ようやく「学問のすゝめ」に辿りつきました。
「学問のすゝめ」は1872年(明治5)2月の初編から、1876年11月まで断続的に17編が刊行されました。発行部数は、初編は20万部、当時盛んにおこなわれていた海賊版を合わせると22万部だったと言います。これは「合本学問之勧序」で「日本の人口三千五百万に比例して、国民百六十名のうち一名は必ずこの書を読みたる者なり」と述べているように、当時としては大ベストセラーだったようです。
さて、内容ですが、これは皆さんの方がよくご存知かも知れません。何しろ私は、今頃になってやっと全編読んだのですから。
まずは、「天は人の上に人を造らず・・・」です。
(p11より引用) 天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり。・・・されども今広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるものあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるは何ぞや。その次第甚だ明らかなり。実語教に、人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なりとあり。されば賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとに由って出来るものなり。
福沢氏はこう切り出します。
「人は、そもそも上下なく同等である。しかしながら、現実社会ではさまざまな格差が生じている。何故か。それは、『学んだ』か否かの差である」と。
では、何を学べばいいのか。福沢氏は「実学」を勧めます。
(p12より引用) 学問とは、ただむつかしき字を知り、解し難き古文を読み、和歌を楽しみ、詩を作るなど、世上に実のなき文学を言うにあらず。・・・されば今かかる実なき学問は先ず次にし、専ら勤むべきは人間普通日用に近き実学なり。
具体的には、読み書き算盤はもちろんですが、広く自然科学・社会科学をイメージしているようです。
(p12より引用) 譬えば、いろは四十七文字を習い、手紙の文言、帳合の仕方、算盤の稽古、天秤の取扱い等を心得、なおまた進んで学ぶべき箇条は甚だ多し。地理学とは日本国中は勿論世界万国の風土道案内なり。究理学とは天地万物の性質を見てその働きを知る学問なり。歴史とは年代記のくわしきものにて万国古今の有様を詮索する書物なり。経済学とは一身一家の世帯より天下の世帯を説きたるものなり。修身学とは身の行いを修め人に交わりこの世を渡るべき天然の道理を述べたるものなり。