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ワニと読むミステリ(要塞島の死)

要塞島の死 (創元推理文庫)
レーナ・レヘトライネン
東京創元社
1,200円+税
読むと、つもりはなくても犯罪になります。

(レーナ・レヘトライネン著)
 マリア・カッリオはもうじき出産休暇が終わり、エスポー警察の暴力課警部として戻ってくるところです。その最後の週末を要塞島とも呼ばれるレードシャール島で過ごそうとマリアは夫アンティ、そして赤ちゃんのイーダとともに島にやってきました。マリアは気がかりだったのです。一年前に元ボーイフレンドの鳥類学者ハッリが島の急峻な崖から転落して亡くなったのが。本当に事故だったのか。
 ハッリの死後一年、今度は島の所有者でエコな塗料製品製造会社のCEOであるユハ・メリヴァーラがハッリと同じところで亡くなっているのが発見されます。偶然のはずがない。容疑者は、妻? 動物の権利を守る活動家の息子? 父親と同じくらいの年齢のオペラ歌手とつきあっている娘? または世界を航海して回っている異母弟?
 
 エスポー警察警部マリア・カッリオのシリーズ3作目。原シリーズでは6作目にあたるそうです。要塞島で起こった事件で、容疑者は島の所有者一家の誰かではないかと疑われるのですが、この一家の事情が実に複雑で誰が犯人であってもおかしくないと思われる半面、明確な動機が掴めません。そこでだんだんと家族の様子が語られて、それぞれの悩みや疑い、悲しみがあらわになっていくのですが、一緒に住んでいてもバラバラの家族の心情がちょっと悲しいですね。
 要塞島ってどういうこと?っと思ったのですが、訳者あとがきによると、バルト海に浮かぶ島々が軍事的に重要な意味を持ちうる場所だったという事実があるそうです。かつては帝政ロシアとスウェーデン王国が覇権を争う場であり、第2次大戦後の冷戦期にはバルト海を挟んで東西陣営が対峙していたということです。さらに海の汚染にも苦しんできたようです。この本を読むとそういうことも少し理解できるようになります。あまりこのあたりのことは日本では知られていませんから謎解きとは別に地域の理解にも役立ちそうです。 
 いつもマリアと対立して課長の座を争ったり、なにかとイヤなやつの役回りだったペルツァ(警部)ですが、境遇に同情できるところもあり、時折見せる細やかさや人間の弱さになんだか憎めない人物でしたがこの作品の最後にペルツァの悲惨さが露わになり、少し悲しくなります。
 さて次の翻訳本は何になるのでしょうか。とても待たれますね。

■既刊
これまでに2作が翻訳されています。

雪の女 ← 有名なセラピストが殺されます
氷の娘 ← フィギュアスケート界で起こった事件です

主人公: マリア・カッリオ(エスポー警察の警部)
場所:   フィンランド、エスポー
グルメ: なし
動物:  ネコ:アインシュタイン
ユーモア: 小


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