「厚労大臣への答申書」
私が、厚生労働大臣に審査請求を申し立てていた、諮問番号:令和2年(行情)諮問第507号、事件名:「北朝鮮墓地資料綴」一部開示決定に関する件について、本年12月2日付けで情報公開・個人情報保護審査会から厚生労働大臣に対して答申書(情個審第2948号)が交付され、その写しが審査会から私に送付されてきた。
本審査請求の対象文書は、文書1「(1)北朝鮮墓地資料綴(A道の部)」、文書2「(2)北朝鮮墓地資料綴(B道の部)」、文書3「(3)北朝鮮墓地資料綴(C道の部)」の3種類で、審査会の結論は、「別紙に掲げる文書1ないし文書3につき、その一部を不開示とした決定については、別表の3欄に掲げる部分を開示すべきである。」として、私の主張が一部認められた形となった。答申書の一部をご紹介したい。
第5 審査会判断の理由
2 不開示情報該当性について
(2)その余の部分について
ア (前段省略)
当該部分(※前段部分)は、戦後北朝鮮地域から帰還した者から提供された資料及び関係者の証言等に基づいて厚生省が作成した資料であると認められる。当該部分には、北朝鮮地域にあるとされる複数の日本人墓地について、その所在地に関する情報など具体的で詳細な情報が記載されている。
平成30年答申によると、日本は北朝鮮に対して、平成26年のストックホルム合意において、「1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地」について調査を要請している。そうすると、当該部分は、これを公にすると、北朝鮮が我が国の交渉方針を把握・推測したり、北朝鮮側が当該部分の情報を交渉材料として利用するなどとして、日本側が北朝鮮との交渉上不利益を被るおそれがあるとする諮問庁の説明は否定できない。したがって、当該部分は、法第5条3号に該当し、不開示とすることが妥当である。
【この部分に関する私の意見】
ア 審査会答申書にあるように、日本は北朝鮮に対して、平成26年のストックホルム合意において、「1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地」について調査を要請している。調査を要請するには、日本は北朝鮮に対して「1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地」がどういうものか内容を説明しなければならず、具体的資料を提示するのが交渉の前提となる。審査会は、日本が遺骨及び墓地に関して北朝鮮に対して隠し持っている情報があることを前提としているが、果たしてそうなのか?
イ この件に関して、私は、当審査請求における意見書の中で指摘したが、平成28年1男月に外務省北東アジア課が作成した「北朝鮮における日本人遺骨問題」(概要)と題する文書によると、墓参のための訪朝として合計12回もの墓参団が北朝鮮に渡っている。これからすると、北朝鮮側が墓参団から多種多様の情報を聞き出していること、また各種資料の提供を受けていることは確実であり、こうした情報及び資料は、日本政府が隠匿している情報及び資料と重複している部分は必ず存在すると思う。
一方、日本国内には朝鮮総連をはじめ数々の団体・個人が北朝鮮とのパイプを有していることから、北朝鮮が彼らを通じて「北朝鮮における日本人遺骨問題」に関する情報及び資料を入手することは容易であり、審査会はそうした現実を加味して判断すべきだと思う。第一、日本側から日本人の遺骨・墓地問題の調査を要請しておきながら、北朝鮮に秘密にしている情報が複数存在するなどと公言すること自体、厚労省の姿勢に問題はないのか?
ウ 本答申書には、「第3:諮問庁の説明の要旨」の中に、「また、本件開示決定において不開示とした情報は、それを開示することにより、将来の北朝鮮との日朝国交正常化交渉において、北朝鮮が当該情報を交渉材料として利用するなどして、北朝鮮との交渉上不利益を被るおそれがあるため、法5条3号に該当する。」として、原処分を維持して不開示とすることが妥当との見解を厚労省は示している。
外務省は、ホームページ「北朝鮮による日本人拉致問題」において、「拉致問題は、我が国の国家主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であり、この問題の解決なくして日朝の国交正常化はあり得ません。」と断言している。しかるに、日朝平壌宣言からおよそ20年になろうとしている今日においても拉致問題には何の進展もなく、北朝鮮は、拉致問題はすでに解決済みとの姿勢を崩していない。
こんな状況下で、将来の北朝鮮との日朝国交正常化交渉において不利益を被るおそれがあると公言するのはどんな根拠に基づいているのか。政府の単なる願望に過ぎないものを、あたかも確定した国家施策であるかのように喧伝して国民の知る権利を拒絶する。今や、日朝国交正常化交渉との文言は、国民の知る権利を拒絶するためだけに存在している標語にまで堕ちている。審査会答申は、こんな在りそうにもない日朝国交正常化交渉を必ず在るものとの建前論に立脚して判断している。この答申は、20年後の日本において正当性を有しているのか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/88/9a49e52d779dce41caf23a52918ab27e.jpg)
私が、厚生労働大臣に審査請求を申し立てていた、諮問番号:令和2年(行情)諮問第507号、事件名:「北朝鮮墓地資料綴」一部開示決定に関する件について、本年12月2日付けで情報公開・個人情報保護審査会から厚生労働大臣に対して答申書(情個審第2948号)が交付され、その写しが審査会から私に送付されてきた。
本審査請求の対象文書は、文書1「(1)北朝鮮墓地資料綴(A道の部)」、文書2「(2)北朝鮮墓地資料綴(B道の部)」、文書3「(3)北朝鮮墓地資料綴(C道の部)」の3種類で、審査会の結論は、「別紙に掲げる文書1ないし文書3につき、その一部を不開示とした決定については、別表の3欄に掲げる部分を開示すべきである。」として、私の主張が一部認められた形となった。答申書の一部をご紹介したい。
第5 審査会判断の理由
2 不開示情報該当性について
(2)その余の部分について
ア (前段省略)
当該部分(※前段部分)は、戦後北朝鮮地域から帰還した者から提供された資料及び関係者の証言等に基づいて厚生省が作成した資料であると認められる。当該部分には、北朝鮮地域にあるとされる複数の日本人墓地について、その所在地に関する情報など具体的で詳細な情報が記載されている。
平成30年答申によると、日本は北朝鮮に対して、平成26年のストックホルム合意において、「1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地」について調査を要請している。そうすると、当該部分は、これを公にすると、北朝鮮が我が国の交渉方針を把握・推測したり、北朝鮮側が当該部分の情報を交渉材料として利用するなどとして、日本側が北朝鮮との交渉上不利益を被るおそれがあるとする諮問庁の説明は否定できない。したがって、当該部分は、法第5条3号に該当し、不開示とすることが妥当である。
【この部分に関する私の意見】
ア 審査会答申書にあるように、日本は北朝鮮に対して、平成26年のストックホルム合意において、「1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地」について調査を要請している。調査を要請するには、日本は北朝鮮に対して「1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地」がどういうものか内容を説明しなければならず、具体的資料を提示するのが交渉の前提となる。審査会は、日本が遺骨及び墓地に関して北朝鮮に対して隠し持っている情報があることを前提としているが、果たしてそうなのか?
イ この件に関して、私は、当審査請求における意見書の中で指摘したが、平成28年1男月に外務省北東アジア課が作成した「北朝鮮における日本人遺骨問題」(概要)と題する文書によると、墓参のための訪朝として合計12回もの墓参団が北朝鮮に渡っている。これからすると、北朝鮮側が墓参団から多種多様の情報を聞き出していること、また各種資料の提供を受けていることは確実であり、こうした情報及び資料は、日本政府が隠匿している情報及び資料と重複している部分は必ず存在すると思う。
一方、日本国内には朝鮮総連をはじめ数々の団体・個人が北朝鮮とのパイプを有していることから、北朝鮮が彼らを通じて「北朝鮮における日本人遺骨問題」に関する情報及び資料を入手することは容易であり、審査会はそうした現実を加味して判断すべきだと思う。第一、日本側から日本人の遺骨・墓地問題の調査を要請しておきながら、北朝鮮に秘密にしている情報が複数存在するなどと公言すること自体、厚労省の姿勢に問題はないのか?
ウ 本答申書には、「第3:諮問庁の説明の要旨」の中に、「また、本件開示決定において不開示とした情報は、それを開示することにより、将来の北朝鮮との日朝国交正常化交渉において、北朝鮮が当該情報を交渉材料として利用するなどして、北朝鮮との交渉上不利益を被るおそれがあるため、法5条3号に該当する。」として、原処分を維持して不開示とすることが妥当との見解を厚労省は示している。
外務省は、ホームページ「北朝鮮による日本人拉致問題」において、「拉致問題は、我が国の国家主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であり、この問題の解決なくして日朝の国交正常化はあり得ません。」と断言している。しかるに、日朝平壌宣言からおよそ20年になろうとしている今日においても拉致問題には何の進展もなく、北朝鮮は、拉致問題はすでに解決済みとの姿勢を崩していない。
こんな状況下で、将来の北朝鮮との日朝国交正常化交渉において不利益を被るおそれがあると公言するのはどんな根拠に基づいているのか。政府の単なる願望に過ぎないものを、あたかも確定した国家施策であるかのように喧伝して国民の知る権利を拒絶する。今や、日朝国交正常化交渉との文言は、国民の知る権利を拒絶するためだけに存在している標語にまで堕ちている。審査会答申は、こんな在りそうにもない日朝国交正常化交渉を必ず在るものとの建前論に立脚して判断している。この答申は、20年後の日本において正当性を有しているのか。
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