Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.315:インタビュー型期末レポートの活用

2009年08月07日 | 授業のおはなし
以前本メルマガ「vol.305:キャリア設計とBeatBOX」でお伝えした「キャリア設計と業界研究1」という科目で、インタビュー型期末レポートという形式を導入してみました。今回はその結果をもとに、主観ではありますがキャリア教育のあるべき姿について考察してみたいと思います。

元祖は大阪市立大学の飯吉先生
内容に入る前に一言お伝えしておきます。実は今回実施した「インタビュー型期末レポート」は大阪市立大学の飯吉先生が開発した方法です。たまたま6月に参加した大学教育学会で飯吉先生が「このようなレポートを実施したところ大変好評だった」という発表を聴き、これは本学でも試してみたいと考え、先生に許可をいただいた上で実施させていただいたものです。なお学会での飯吉先生のご発表は、本メルマガ「vol.309:第31回大学教育学会大会参加記(その2)」で紹介させていただいておりますのでご一読のほどを。

レポート課題
レポートの課題はまず、身近な社会人にインタビューを行い、以下の2点を中心にキャリアデザインについての話を聞くところから始まります。

インタビュー対象は、両親・兄姉・先輩・親戚・知人・バイト先の店長等、親身に話をしてくれる社会人であれば誰でも可としました。それらの社会人に対し、「どのように現在のキャリア(社会人としての人生)を選んだのか」と「人生の先輩としてのアドバイス(=大学時代にどのような力を付けておくと良いか?社会に出る際の心構えなど。)」の2点についてインタビューしまとめさせます。

さらに、インタビューの結果について、授業での学習内容(キャリア・アンカー、ハプンスタンスアプローチ等)を踏まえて考察し、自らのこれからのキャリアデザインおよび、どのように残る大学生活を送っていくかについて考えたことを記述させます。

全体を1500字以上にまとめるという課題だったのですが、多くのレポートは2000字以上書いており、しかも中身を伴った大変素晴らしい内容でした。

キャリアの教育は親子の対話から
半数以上の学生は自分の親(父・母半々ぐらいの割合でした)にインタビューを実施しました。

下記は看護師の母親にインタビューした学生のレポートの要約です。

彼の母親は小学校の頃入院し、優しくしてくれた看護師に接したことから、自分も看護師の道を選び、昨年より訪問看護師になったそうです。インタビュー前、この学生は母の仕事にあまり尊敬をすることができなかったとレポートに書いています。自分の身を削ってまで人の助けになりたいだなんて理解しがたかったからだそうです。しかし、母が自分の仕事について熱心に語る姿を見て、ものすごく誇りを持っていることが分かり、私も母のように、自身を持って人に説明できるような仕事に就きたいと思ったと述べています。

次はSEの父親を持つ学生のレポートです。これは文章をそのまま抜粋します。

私の父がどのような気持ちで就職先を決めたのかがわかったのが一番の収穫でした。私の父の就職先を選ぶ基準は仕事内容でした。自分は今まで職種や立地条件、勤務時間を気にしていましたが・・・自分に合っている仕事ができることが一番なのだと感じた。と述べています。

最後は、大学に進学したかったものの金銭的な理由から高卒で働き始めた父へインタビューした学生の考察です。これも文章をそのまま抜粋します。

キャリアとは学歴のことだと思っていた。しかし父の話を聞き、一人一人のキャリアとはその人が生きてきた中で、経験したこと、学んできたことの結晶だと思いました。

彼らは共通して「今まで親に仕事の事を聞いてみたかったが、親子だと聞きづらく、今回こういった機会で話しをすることが出来て良かった」と語っています。もちろん親だけでなく祖父、バイト先の店長、兄姉、など色々な人にインタビューを実施しているのですが、どのレポートも行間に、学生だけでなくインタビューされた人の「想い」のようなものを感じることができました。

特に親への場合は、親側にも何かの機会に自分の人生や仕事の事を子供に伝たいと思っていたような節があり、そんな想いが、学生の拙いレポートからでさえリアルに感じる事ができました。

キャリア観というのは決して教壇だけで教えられるものでなく、彼ら学生が身近な大人と対話することによって形成されるものだと、今回あらためて学びました。そして、キャリア教育を実践している我々教員の役割とは、彼らが自ら学ぶキッカケを作ってあげることなんだと実感しました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事が気に入りましたら、
下記ランキングへの投票をお願いいたしますm(__)m
バナーをクリックするだけでとあなたの清き1票が投票されます。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
にほんブログ村

最新の画像もっと見る

コメントを投稿