ダイアローグ 対話する組織 中原 淳,長岡 健ダイヤモンド社 このアイテムの詳細を見る |
親子の対話がでてきたところなので、本日のオススメ本は東大の中原先生と本学長岡先生の共著『ダイアローグ対話する組織』です。
さて、本の紹介に入る前に別の本の紹介をします。現在筆者は遅ればせながら村上春樹氏の『1Q84』を読んでおります。村上春樹は好きだけれどもベストセラーは読みたくないというダブルバインドな状況の中、迷った挙げ句に誘惑に負けて買ってしまいました。
本の後半で、主人公が認知症になった父親を療養所に見舞いに行くシーンがあります。主人公は自分の出生の謎について父親に質問するのですが、父親は「説明しなくてそれがわからんというのは、どれだけ説明してもわからんということだ」と言って過去を語ろうとしません。
この辺で話しを『ダイアローグ対話する組織』に戻しましょう。この本の中では他人に物事の意味を伝える事に関して3つの考え方が紹介されています。一つは「情報を伝えれば意味も伝わる」という「客観主義」の考え方。もう一つは「客観主義」と対極にある「意味は根本的には他人と理解しあえない」という「主観主義」の考え方。そして最後は「人と人とのコミュニケーションを通じて物事の意味付けはなされる」とする「社会構成主義」の考え方です。
『1Q84』の主人公のお父さんの立場はまさに「主観主義」、そして主人公はお父さんに様々な質問をしたり、自分の考えをぶつけることで、なんとか物事の意味を見いだそうと努力しています。これは「社会構成主義」な会話に対するスタンスと言えます。と、2つの本を読んでいない人には何が何だかよく分からないかも知れませんが、『ダイアローグ対話する組織』では、、
- 最近企業の中でコミュニケーションがうまくとれなくなってきた。
- それは「客観主義」的な考え方ばかり(本では「導管メタファー」とも表現しています)でコミュニケーションしているからだ。
- だから、これからの組織は「社会構成主義」的なスタンス。つまり対話によるコミュニケーションを促進していく必要がある。
- 実際「問題解決」「知識共有」「組織変革」等の推進がうまくいっている組織には「対話」を促す仕組みが仕組まれている場合が多い。
ところで、私がこの本で一番面白かったところは「雑談」「対話」「議論」の違いについて説明した箇所です。企業だけでなく、学校教育の中でもグループディスカッションの機会は実に頻繁にある訳でして、その際学生の取る態度は「沈黙」「雑談」が多いのが現状です。「議論」しようとしても、すぐに「沈黙」モードに逆戻りしてしまうグループが少なくなく、いかにグループ内で「対話(自由なムードの中で真面目なテーマについて話し合う)」させるか、いつもアタマを悩ませています。この本の中では単に「対話」がいい、「議論」がいいと決めつけるのでなく、それらをディスカッションの進行プロセスに応じて使い分けていくことの重要性が解説されています。
三流の経営コンサルタントが書いたコミュニケーションやチームビルディングのHowTo本に食傷気味の貴方!今までに無かった切り口で組織のコミュニケーションを考えるきっかけになる一冊です。ご一読のほどを。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事が気に入りましたら、
下記ランキングへの投票をお願いいたしますm(__)m
バナーをクリックするだけでとあなたの清き1票が投票されます。
にほんブログ村