フランスの小説家スタンダールは、その『恋愛論』の中で、我々の恋愛感情を
「結晶作用」と呼んでいます。
ザルツブルグの塩坑で、廃坑の奥深くへ冬枯れで葉の落ちた樹の枝を投げこみ、
二、三ヶ月して引き出してみると、それは輝かしい結晶におおわれている。
ヤマガラの足ほどの太さも無い細い枝も、無数のきらめく輝かしいダイヤをつけて
いて、もう元の枯れ枝を認めることはできない。私が結晶作用というのは、次々に
起るあらゆる現象から、愛するものの新しい美点を発見する精神作用のことである。
言うまでもなく、枯れ枝を、我々の目には現実の宝石に変えるこの魔法の力は、
想像力なのです。恋心が芽を出し蕾となってゆくのは、主に夜、一人で相手を思い
出しているときですよね。そのイメージは少しばかりのかけてくれた言葉、ちょっと
した仕草、表情、横顔だけのこともあります。それが我々の心のなかに甦り、結晶し、
美しくふくらんでゆく。そして次に会うときには、すっかり恋心が花開いていたりする
のです。
スタンダールは、とある貴婦人の話を聞いただけで(さらにその人はすでに
この世にいない!)熱烈な恋に陥った男の例をあげています。まさに枯れ枝が、
取り出して見ると、すっかりダイヤで埋め尽されているのです。これは偉大なる
想像力の魔力に他なりません。
つまり我々の恋心というのは「妄想」なのか…(^益^;w いやいや、無数の美しい
ダイヤで飾られた枝もほんとうだし、ただの枯れ枝にしか見えないのもほんとう
でしょう。そう見えている人には見えてない人に理解できません。
無数のダイヤが見えている人と、ただの枯枝にしか見えない二人が合意できる
ことと言えば、ダイヤにうっとりしている人がひたすら幸せだということでしょうね。
さてさて、ザルツブルクも市内はだいたい見物してしまったので、この日はちと
街の外に出てみようかと^^ 「ザルツブルク」とは「塩の街」という意味です。スタン
ダールを冒頭に引用しましたが、ここに来たら「塩鉱」を見なければ。というわけで
街から出ている半日バスツアーに参加しました。
街から約1時間ぐらいで塩鉱に到着します。ガイドが道中、「ここからドイツなんです
よ~」と言いました。ありま!「ザルツブルクの塩鉱」って、オーストリアじゃなくて
ドイツにあったのかーwww 国境付近の街とはいえ、ちと驚き。
いきなり入り口で全員こんなつなぎと長靴をはかされました。まーそういうもんかぁ。
トロッコ列車はガタゴトと地下へ進みます。中は当然ひんやり涼しく、目指す塩の
鉱脈は数百メートル下にあるのです。
細い通路をしばらく進むと、突然開けた場所に出て、そこにはテーブルと食事の
用意が!私が参加した半日ツアーには入っていなかったのですが、こういうのも
あるんだねェ。ま、先日のディナー&コンサートと同じで、ひとりじゃ寂しいだろうけどw
トロッコと徒歩が続きましたが、途中でこのように木のスライダー。「2人や3人で
つながって滑ってくれ」などと言うので、グループやカポーで来ている人はいいが、
俺みたいにひとり者は当然あぶれる。前のほうに立っていたのに、どんどん
組んでいるやつらに抜かされる。うひーw かなしー!w(゜゜)w
結局中年カポーにくっついて滑ったよ… _| ̄|〇
さてここが地下探検のクライマックスだ。説明を受けた受け売りでちと歴史をたどり
ますと、ヨーロッパ中心部にあるこの地域も、はるか太古の昔には海だったそうです。
それが南のほうから大陸が押し寄せてきて、海水が真ん中に残ってしまった。
その大陸はぐいぐい来たもんだから盛り上がってアルプスになった。それに押し
つぶされて、真ん中に残った大量の海水は、地下深くにたまって固まってしまった
とか。そして硬~い塩の鉱脈ができたわけです。
その塩を掘り出すといっても、塩の鉱脈は地下深くにあるカッチカチの岩石の塊り。
それを削り出すのは大変すぎる。なので、まず地表からドリルで垂直に穴を開ける。
地下にナイスな塩の層があるな~とわかったら、そこに水を注入!長い時間を
かけて、どんどん水を入れる。塩は溶ける。だんだん大きな穴になり、そこに濃い
塩水のプールができる。しばらくほうっておく。 (ほうっておいても水の注入では
恋の結晶作用は起こらない^^;)
そしてその濃厚な塩のスープを、ポンプで汲み上げて、それを精製して商品の
塩にするというわけだー。
んで上の画像は、その塩のプールの上に浮かんでいるのです。わかりにくいですが、
下は水面で、天井が映っているのです。ここで船に乗り、反対側に渡ったのです~。
到着したところで、蛇口からダバダバ塩水が出ており、それをなめることができました。
登りにはケーブルカーも使いました。いろんな移動手段を使い、子供などは大喜び
のツアーですね^^
食事も終り、夕暮れが近づいてきました。まもなくコンサートが始まります。
城塞の最上階。大司教や、偉~い人たちだけが入ることのできたエリアです。
考えてみれば、最近でも高知城の天守閣、シェーンブルン宮殿の王室、北京は
天壇の圜丘と、ひと昔前ならば一般庶民では考えられないようなところに足を踏み
入れております。すごいことですねェ。
先日ウィーンの楽友協会で「お楽しみコンサート」がありましたが、今回は音楽の道を
真剣に歩む人たちの演奏で、緊張感と気品漂う雰囲気。アンコールでは「アイネ・
クライネ」のサービス。同じ曲でも全く違う響きでした。
普段は自宅のスピーカーから、音がほぼダンゴ状態になって聞こえておりますが、
目の前の演奏だとヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのかけ合いが視覚的にも入って
くるので、モーツァルトが跳ねるように楽しんでいるのがよくわかります。やっぱり
ライブはいいですねえ。
狭い空間なせいか、チェロのような低い音は反響し合って音が部屋全体に満ちる
よう。一方ヴァイオリンの高い音は強く冴えわたります。
演奏が終わると夜もすっかりふけておりました。歩いて10分で帰れる距離が嬉しい^^
ディナーまでまだ30分ほどあるので、城塞内を散歩する。この画像だけを見ると、
お城の上だとは思えませんよね。普通の街のよう。
どこにでもある住宅地のようです。。。 住んでみたひ(^益^;
住むならこういう建物の最上階か。しかし下界から登ってくるのも大変なら、建物内
でも階段が大変そう。
このお城の最上階には大司教の居室があり、そこがコンサート会場になっている
のです。
さてディナー・タイム。ひとりだとやっぱりちと居心地がw
ほとんどが中年以上の二人連れ。
スープのあとにメインで、チキンとサーモンが選択できました。サーモンってこちら
ではちょっと贅沢品ですが、日本人の私から見ればただの「シャケ」と紙一重^^;
デザートはオサレになってました。こんなんが出てくると、「恋人と一緒じゃなきゃ」
という気持ちになりますなあ(^益^;;;
さてホテルでお昼寝もしたし、いよいよ夜はホーエンザルツブルク城塞でディナー
付きのコンサートです。今回のコンサートの予約では、ディナーをつけるか選べました。
ひとりだし、いらないかな、とも思いましたが、城塞の最上階の一室で、夜8時からの
コンサートだから、食事をどうするか考えるのが億劫なので、つけることにしたのです。
さて、画像は城塞のふもとにある、「祝祭劇場」。有名なザルツブルク音楽祭が
行われるところです。ここの大ホールは、舞台の背後が岩壁を削った岩肌がそのまま
見えるのです。一度夏に来てウィーン・フィルを聴いてみたいけれど、ものすごく
混むのがなあ…。
目の前にはぞっとするような像が(^益^;
広場には馬車が止まっています。恋人とふたりならね^^;
ガイコツのマリオネットが、アバの曲に合わせて踊っていましたw
さて、この街のシンボルであるホーエンザルツブルク城塞へ。
城塞に昇るには歩いても行けますが、画像の右に見えるケーブルカーがあります。
それに乗るのは有料ですが、コンサートのチケットに往復の乗車券も含まれて
いました。なので入り口でそのチケットを見せたら、切符切りのおばちゃん、
あら、ディナーをひとりなの? おっほっほ! One people!
Not "one people", but "one person"!
英語を直してやりました。クソッ! (=゜益゜):;*.’:;
ひとりでメシ食って何が悪いってかっ!!!
ちくしょー、やっぱり城塞の豪華な一室でクラシック・コンサート、その前に素晴らしい
夕暮れのザルツブルクの景色を見ながらのディナーは、ふつーカポーなのかー。
ううむ、たしかに周りを見ると、ひとりはいないような…w
先ほど歩いてきた広場が下に見えます。。。
右下に、あの歩行者専用の橋、鍵がいっぱいぶらさがっていたところが見えます~^^
おお、ウィーンと違ってザルツブルクは高い山がすぐそこだw
ホテルの煙草が吸えるバルコニーです。さっき向こうの岩壁の上にある白い建物、
近代美術館からこちらを見ていたわけです^^
午後は旧市街の市場に立ち寄りました。観光客も入り混じってなかなか賑やか。
いろんな食材が売られています。ホテルに買って帰ってもひとりだからなぁ。。。
日本で季節が終わりかかっているスイカを見て、ちょっとほしくなりましたが、これまた
ひとりじゃ消費が大変www 旅行中はレストランで食事をすることが多く、たまに
果物を買って帰ったりするんですよね。
やけに賑わって人が行列を作っているところがありました。見てみると、それは
ソーセージを焼いている屋台。うまいと人気なんだろうけれど、私はちと肉は…w
んでこんなパンを買って帰りました。固くて香ばしい。白いポツポツがまぶしてある
でしょ?これが塩の粒なんです。適度な塩味が抜群においしかった~(^益^)b