![2018/08/11](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/64/422e341bafa81568d351f7f3ff1e2df6.jpg)
この本は、8編の短編がおさめられた短編集です。
鉄道員(ぽっぽや)/ラブ・レター/悪魔/角筈にて/伽羅/うらぼんえ/ろくでなしのサンタ/オリヲン座からの招待状
あとがきで、この短編集は作者の原体験に基づいたものであると書いてありました。そう聞くと、このこの短編集の見方が変ります(笑)
「悪魔」は、意味が分かりませんでした。戦後の経済成長期に成功した成金の父親が、没落・離婚、そして子供を親戚に預けてしまうという風景を、不安な子供の目を通して描いているのでしょうか。家庭教師や、屋敷に巣くうネズミが悪魔に見える。
「角筈にて」も「うらぼんえ」も同じ原風景から生まれているのですね。「うらぼんえ」では唐突に”ちえ子には帰る家がなかった。”と始まります。「角筈にて」では、自分を置き去りにした父親が、自分を探している!
幽霊まがいの人が現れてくるのも面白い。「鉄道員」では、生後二カ月で亡くなった娘が大きくなって現れます。幼児、小学生、高校生と。そして定年間際で、永年勤めた路線が廃線になる前に、子供があちらの世界に連れて行ってくれる?
「うらぼんえ」では、死んだおじいちゃんが現れて、ちえ子を助けてくれますね。
あとがきで、浅田さんは信心はないような事を描いていましたが、「椿山課長の七日間」でも中陰と行き来する人の事を描いています。きっと死後の世界を信じているのだ!
作者(1951年生まれ)と同世代の人達が、たぶん経験したであろう経済成長、バブルの崩壊、リストラ。そして好まざるとも迎えたターニングポイントの風景、そんなものを描いているような気がします。
私の好きなのは、「ラブ・レター」と「ろくでなしのサンタ」。どちらも、やくざなろくでなしの物語だが、なぜか愛しい!
私のお気に入り度:★★★★☆